宮澤やすみの仏像ブツブツ

シシは獅子?猪?神? 奥が深い獅子舞の世界

先日は、音楽家で神楽研究家である三上敏視さんのトークイベント「神楽ナイト」に行ってきました。
テーマは獅子舞でした。

獅子舞というと、お囃子に合わせて舞って、観衆の頭を噛むしぐさで厄払いとか福を授かるとか、おめでたい行事に出てきますよね。
「太神楽(だいかぐら)」という曲芸と合わせて楽しませてくれます。
ちょっと前なら海老一染之助、染太郎のお二人が「おめでとうございまぁ~す!」とやっていたアレですね。

ぼくは小唄と三味線の界隈にいる人間でもあって、こうした寄席の芸能と合わせて獅子舞をみていました。

ところが、もともと獅子舞というのは、神事の一環で奉納される神楽の一種でもあるのでした。今回のイベントは、そんな「獅子神楽」がいくつも紹介されました。


宮崎県木城町の「中之又神楽獅子舞」、その姿は……?

(今回記事の写真と動画は、すべて三上敏視さんのご提供です)

面白かったのは、地域によって獅子舞のスタイルがぜんぜん違っているということ。

三上さんのイベントで印象に残ったのは、宮崎県のもので、獅子舞と言いつつ、その姿はイノシシというものでした。
宮崎県ではイノシシがふつうなのだそうです。知らなかった。

言われてみれば、昔は猪も鹿もみんな「シシ」だったそうですね。
山のケモノは「シシ」であり、山の神(シシ神様)であります。小唄の歌詞でも猪のことを「シシ」と歌いますし。

先ほどの「中之又神楽」の獅子舞も、雌雄のイノシシが出て、泥浴びをする仕草なんかをします(下記動画参照)。


イノシシが舞う「銀鏡神楽獅子舞」

この写真の銀鏡(しろみ)神楽では、本物のイノシシの首を奉納し、舞台でイノシシの姿をした獅子舞が奉納されます。

暴れまわるイノシシは荒ぶる神そのもの。それをなだめたりいろいろしながら、鎮めていきます。

最後には神職さんがまたがったりして、荒ぶるものを抑えたという意味なんでしょうね。


ちなみに、獅子神楽の説明は、三上さんの言葉を引用すると、

「獅子神楽は霊獣の獅子が神楽に採用されたもので、獅子頭に神を招き、その呪力で悪罵払いや火伏などの祈祷の獅子舞をする。大きく伊勢大神楽系統と東北地方の山伏神楽、番楽、法印神楽などの系統に分かれている」
『民俗学事典』丸善出版2014年版より

ちょうど先日は、岩手の黒森神楽を取材した『廻り神楽』というドキュメンタリー映画を観ましたが、そこでは神楽師の集団が巡業に出る前に、神社へ赴き、獅子頭に神を降ろす儀式もありました。
獅子頭は神が降りる依代(よりしろ)で、神が降りた獅子は「権現様」と呼ばれます。

仏像ワールドやイスムの仏像では「蔵王権現」という像がありますが、あれは釈迦、観音、弥勒の三仏が特殊な姿に変身した姿。
神でも仏でも、それが別の姿になって人の前に現れることを「権現」といいます。

そんな意味を踏まえると、獅子舞がなんだか特別なものに見えてきました。


というわけで、次回もこの話になります。


(参考動画:中之又神楽獅子舞)



(参考リンク)
三上敏視さんのサイト。神楽の解説もありますよ:
http://www2.comco.ne.jp/~micabox/

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