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第一部 連載6回目  仏法遥かにあらず



「仏」と「私」、「世界」と「私」の間にあったはずの境界が溶けてなくなり、すべてが「ひとつ」として、ただ、存在している……!

 

 

 

そのビジョンは、ほんの一瞬間だけあらわれて……

 

そして、すぐに消えていってしまいました。

 

 

 

気がついたときには、私は、元の分離だらけの世界に戻ってきていました。

 

しかし、その瞬間の鮮烈なビジョンは、いつまでも私の中に残り続けました。

 

 

 

「夢でも見ていたんじゃないの?」

 

そう言って笑われるようなお話かもしれません。

 

 

 

しかし、私は、理屈じゃなく思ったのです。

 

私たちが「現実」だと思っているこの分離の世界の方が、よっぽど夢まぼろしのようなものなのだ、と。

 

 

 

まさしく、夢から覚めた気分でした。

 

 

 

と、同時に、少し前に知った、弘法大師・空海のことばが、うわっとよみがえってきたのでした。

 

 

 

夫(そ)れ仏法遥かにあらず、心中にしてすなわち近し

 

(空海著『般若心経秘鍵』より)

 

 

 

「仏」の世界は遠いところに存在するわけじゃない。

 

そう、「仏」はいつだって、「いま・ここ・自分」とともにあるのでした。

 

 

 

仏教が伝えてくれているものは「ほんとう」のことだと確信しました。

 

わけもわからず、涙があふれて止まりませんでした。

 

 

 

……しかしながら、ここで「ゴール」というわけにはいかなかったのです!

 

私は、「ほんとう」の世界を垣間見ると同時に、とんでもない罠にひっかかっていくことになったのです……。

 

 

 

次回へ続きます!