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第一部 連載7回目  探求の罠(その1)



一切の分離が消え、すべてが「ひとつ」として、ただあるという世界。

 

 

 

そんなビジョンを垣間見て、仏教の伝えていることは「ほんとう」のことだと確信した私は、しばらくの間、ものすごく「ふわふわ」していました(笑)。

 

 

 

「私は、ほんとうの世界を知ってしまったんだ」

 

「ようやくゴールにたどり着いたんだ」

 

「もう、なにも怖いことはない」

 

「すべての苦しみよ、サヨウナラ!」

 

 

 

そんな風に思って、ひたすらにニヤニヤしていました。

 

 

 

……が、「現実」は残酷でした。

 

 

 

日常に戻れば、いままで通り、気の合わない人と顔を合わせなければいけないし

 

クレジットカードの引き落とし日が迫ると毎回ドキドキするし、

 

生理痛は相変わらず毎回ひどいし、冷え性だってちっとも改善されません。

 

 

 

いくら、すべては「ひとつ」だと知ったところで、現実の困り事は相変わらず頻発していました。

 

むしろ、すべては「ひとつ」だと知ってしまったからこそ、余計に目の前の不都合な出来事を受け入れられなくなっていた、というべきかもしれません。

 

 

 

「なにかがおかしい……」

 

 

 

そう思った私は、悩みに悩んだ上で、ひとつの結論を出しました。

 

 

 

「やっぱり、さとりを得るしかない!」

 

 

 

中途半端に「ほんとう」の世界を知ってしまったから、私は、余計に苦しくなってしまったんだ。

 

それならば、もう、完全にさとってしまって、二度と分離の世界に帰ってこられないようにすればいい……!

 

 

 

そう短絡的に考えた私は、まず、禅寺の門を叩きました。

 

坐禅の世界に救いを求めたのです。

 

 

 

こうして、私の本格的な探求生活がはじまってしまったのです……。

 

 

 

次回へ続きます!