- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 仏像好きならハマる「高麗茶碗」展-その1-
仏像好きならハマる「高麗茶碗」展-その1-
「中世の騎士のような、仏像で言えば東大寺戒壇院の広目天のような、幾多の戦闘をかいくぐって自信と覚悟に満ち溢れた武骨な偉丈夫の姿を感じました・・・」
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ--
こんにちは。先日は旅行会社の仏像ツアー案内仕事をしましたが、自分のCDとライブチケットがよく売れて大変感謝している宮澤やすみです。仏像系のお客様が仏像以外にもちゃんと興味をもっていただけました。
そんな中、先日は三井記念美術館「高麗茶碗」展の取材に伺いました。
渋めの企画ですが、説明会場に入った時点から、取材陣の顔ぶれがもう渋かったです。いや、仏像展だっていつも渋い路線で、西洋美術系の取材で見るような派手な服の編集者は見られませんが、それに比べても実に渋い事この上ない。女性も男性も服装はベージュかグレー主体。男性は白髪の似合う超ベテランばかり。
自分の服装はというと、黒地の全面に赤い小さなハートマークをびっしり散りばめた、H&Mで買ったシャツとジーンズ。髪の毛は大泉洋ばりのくせっ毛爆発状態。ちょっと浮いてしまいました。
やはり茶の湯系の企画は大人が集まります。
ただ、渋いのは茶碗を取り巻く人たちであって、展示の主役たる茶碗は、どうなんでしょうか。
じつは茶碗の美は、見ていくとけっこうポップで明るく楽しい面もあって、僕などはわりとウキウキ楽しい気分になるのです。
この感覚を、あまねく世界の人に知らせたいとかねがね思っておりました。
いやワタクシもね、茶の湯自体そんなに詳しいわけじゃないので、竹を削った茶筅とか、有名人の手紙を掛け軸にしたとか、炭の置き方がどうこうとかになると、とたんに「あ、いいです」と、コンビニでお箸を断るときのような感じになってしまいます。
名碗がこれだけ並ぶと圧巻!
しかし、今回は100%茶碗!
この潔さがいいじゃないですか。
どこを見ても、茶碗、茶碗!
部屋によっては360度茶碗。
あなたはもう、茶碗から逃げられない…
そんなキャッチコピーを頭に浮かべながら、観ていくのです。
茶碗は、我々日本人なら、毎日ごはんを食べるときに接する道具です。
だから、なんとなく馴染みがあって、自分なりの好き嫌い「使いたいかどうか」を直感で感じることができる。
茶碗の展示の第一歩は、たくさんの茶碗のなかで、
「自分がひとつだけ買って帰るとしたら、どれがいいか?」
と自分にテーマを課して見ていくのをお勧めします。
そうすると、「これ、ちょっといいかも」「これは、無いな」と判別できるんですね。
その感覚が湧いてきたら、じゃあどのへんが「いい」と思ったのかと説明書きを頼りに見てみると、
全体のフォルム、色合い、表面の質感、模様などに特徴が表れていることがわかると思います。
とくに、フォルムについては、真横から見たかたちと、上から覗き込んだ器の内側のようす(見込み)を見るのがキホンです。
(器の底部の台”高台”もあるけどマニアな世界なので、とりあえず気にしない)
あとは、仏像を見るときと同じように、妄想で擬人化していくと楽しい。
仏像だったら、いたずらっ子の天部とか、オラオラ系の不動明王とか妄想しやすいんですけど、茶碗もけっこうキャラが立ってます。
今回の展示では、あらゆる種類の高麗茶碗が次々に登場します。ですから、
きっとあなたも、展示室を歩いているうちに「この子は威圧的」「この子はちょっとインテリ系」「かわいい系」など、いつのまにか茶碗をさして「この子」と言ってしまう自分に気づくことでしょう。
いろんなキャラをもつ茶碗は擬人化ゲームにできそうです。
僕の場合、どんぶり鉢みたいな大振りで、しかし横から見るとフォルムがきりりと引き締まって、腰高で、覗き込むと赤と青の入り混じる不思議な色合いの「見込み」の深みに引き込まれそうな感覚を覚えたのが、国宝の高麗茶碗「喜左衛門」を観た時のファースト・インプレッションでした。
中世の騎士のような、仏像で言えば東大寺戒壇院の広目天のような、幾多の戦闘をかいくぐって自信と覚悟に満ち溢れた武骨な偉丈夫の姿を感じました。
今回は喜左衛門は出品されていませんが、それに並ぶ大ぶりな高麗茶碗(大井戸茶碗といいます)銘「蓬莱」が、展示最初に我々を出迎えてくれます。
その先もいろいろ面白いんですけど、いやすっかり長くなってしまいました。次回に続きます!
特別展 茶の湯の名碗
「高麗茶碗」
三井記念美術館
2019年9月14日(土)〜2019年12月1日(日)
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演
【小唄 in 神楽坂】
11/2(土) 15:00開演(14:30開場)
神楽坂・毘沙門天書院にて
出演:
宮澤やすみ(小唄、三味線)
宮澤やすみ一門(三味線、小唄)
吾妻春瑞(舞踊)
毎秋恒例の小唄演奏会。解説トークを交えて
初めての人向けに気軽に楽しんでもらいます。
宮澤やすみの弟子選抜メンバーも出演。
踊りを交えて華やかに神楽坂の秋を彩ります。
詳細
http://yasumimiyazawa.com/kouta.html
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ--
こんにちは。先日は旅行会社の仏像ツアー案内仕事をしましたが、自分のCDとライブチケットがよく売れて大変感謝している宮澤やすみです。仏像系のお客様が仏像以外にもちゃんと興味をもっていただけました。
そんな中、先日は三井記念美術館「高麗茶碗」展の取材に伺いました。
渋めの企画ですが、説明会場に入った時点から、取材陣の顔ぶれがもう渋かったです。いや、仏像展だっていつも渋い路線で、西洋美術系の取材で見るような派手な服の編集者は見られませんが、それに比べても実に渋い事この上ない。女性も男性も服装はベージュかグレー主体。男性は白髪の似合う超ベテランばかり。
自分の服装はというと、黒地の全面に赤い小さなハートマークをびっしり散りばめた、H&Mで買ったシャツとジーンズ。髪の毛は大泉洋ばりのくせっ毛爆発状態。ちょっと浮いてしまいました。
やはり茶の湯系の企画は大人が集まります。
ただ、渋いのは茶碗を取り巻く人たちであって、展示の主役たる茶碗は、どうなんでしょうか。
じつは茶碗の美は、見ていくとけっこうポップで明るく楽しい面もあって、僕などはわりとウキウキ楽しい気分になるのです。
この感覚を、あまねく世界の人に知らせたいとかねがね思っておりました。
いやワタクシもね、茶の湯自体そんなに詳しいわけじゃないので、竹を削った茶筅とか、有名人の手紙を掛け軸にしたとか、炭の置き方がどうこうとかになると、とたんに「あ、いいです」と、コンビニでお箸を断るときのような感じになってしまいます。
名碗がこれだけ並ぶと圧巻!
しかし、今回は100%茶碗!
この潔さがいいじゃないですか。
どこを見ても、茶碗、茶碗!
部屋によっては360度茶碗。
あなたはもう、茶碗から逃げられない…
そんなキャッチコピーを頭に浮かべながら、観ていくのです。
茶碗は、我々日本人なら、毎日ごはんを食べるときに接する道具です。
だから、なんとなく馴染みがあって、自分なりの好き嫌い「使いたいかどうか」を直感で感じることができる。
茶碗の展示の第一歩は、たくさんの茶碗のなかで、
「自分がひとつだけ買って帰るとしたら、どれがいいか?」
と自分にテーマを課して見ていくのをお勧めします。
そうすると、「これ、ちょっといいかも」「これは、無いな」と判別できるんですね。
その感覚が湧いてきたら、じゃあどのへんが「いい」と思ったのかと説明書きを頼りに見てみると、
全体のフォルム、色合い、表面の質感、模様などに特徴が表れていることがわかると思います。
とくに、フォルムについては、真横から見たかたちと、上から覗き込んだ器の内側のようす(見込み)を見るのがキホンです。
(器の底部の台”高台”もあるけどマニアな世界なので、とりあえず気にしない)
あとは、仏像を見るときと同じように、妄想で擬人化していくと楽しい。
仏像だったら、いたずらっ子の天部とか、オラオラ系の不動明王とか妄想しやすいんですけど、茶碗もけっこうキャラが立ってます。
今回の展示では、あらゆる種類の高麗茶碗が次々に登場します。ですから、
きっとあなたも、展示室を歩いているうちに「この子は威圧的」「この子はちょっとインテリ系」「かわいい系」など、いつのまにか茶碗をさして「この子」と言ってしまう自分に気づくことでしょう。
いろんなキャラをもつ茶碗は擬人化ゲームにできそうです。
僕の場合、どんぶり鉢みたいな大振りで、しかし横から見るとフォルムがきりりと引き締まって、腰高で、覗き込むと赤と青の入り混じる不思議な色合いの「見込み」の深みに引き込まれそうな感覚を覚えたのが、国宝の高麗茶碗「喜左衛門」を観た時のファースト・インプレッションでした。
中世の騎士のような、仏像で言えば東大寺戒壇院の広目天のような、幾多の戦闘をかいくぐって自信と覚悟に満ち溢れた武骨な偉丈夫の姿を感じました。
今回は喜左衛門は出品されていませんが、それに並ぶ大ぶりな高麗茶碗(大井戸茶碗といいます)銘「蓬莱」が、展示最初に我々を出迎えてくれます。
その先もいろいろ面白いんですけど、いやすっかり長くなってしまいました。次回に続きます!
特別展 茶の湯の名碗
「高麗茶碗」
三井記念美術館
2019年9月14日(土)〜2019年12月1日(日)
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演
【小唄 in 神楽坂】
11/2(土) 15:00開演(14:30開場)
神楽坂・毘沙門天書院にて
出演:
宮澤やすみ(小唄、三味線)
宮澤やすみ一門(三味線、小唄)
吾妻春瑞(舞踊)
毎秋恒例の小唄演奏会。解説トークを交えて
初めての人向けに気軽に楽しんでもらいます。
宮澤やすみの弟子選抜メンバーも出演。
踊りを交えて華やかに神楽坂の秋を彩ります。
詳細
http://yasumimiyazawa.com/kouta.html