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サイレント映画に登場していた仏像に注目

”ここに登場する仏像は、どうやら日本の仏像らしい風貌をしています。印相をよくみると親指と人差し指を付けているように見えます。そうであれば間違いなく--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。この原稿が掲載されるころにはイタリアに滞在しているはずの、宮澤やすみです。
三味線演奏の仕事で、イタリアのポルデノーネという街に来ています(飛行機ちゃんと飛んでいれば)。

秋は各地でさまざまな文化イベントがありまして、美術館の取材に、音楽イベント、もうイベント大渋滞。体がふたつ欲しい季節でございます。

そんな中、先日は新宿のちいさな老舗バーで、活動写真(*1)の上演をしました。
簡単に言うと映画上映のイベントなんですけど、そこに仏像が出てきたもので、ちょっとご紹介しましょう。


"The Cheat"の1シーン。奥に仏像が見える

古い映画は音が付いてない”サイレント映画”というもの。そこに弁士が生で語りを付け、楽士が生で音楽を演奏して、映画をライブ感覚で上演します。

今回上演したのは「The Cheat(ザ・チート:騙し)」というタイトルのアメリカ映画で、1915年の作品。日本は大正4年という、かなり古い時代のものです。
そんな古いアメリカ映画なのに、主演が早川雪洲という日本人なんですね。
この早川演じる”Tori”(鳥居が家紋)という男が、もう悪いのなんの。友人の奥さまに手を出して、ひどい目に・・・。

この奥様がTori氏の自宅を訪問すると、数々の日本の骨董が置いてあって、その真ん中に仏像があるんですね。

ここで、「アメリカ映画で日本の描写」というと、だいたい中国と混同されてしまうのが、あるあるパターンです(笑)

しかし、ここに登場する仏像は、画像がボケてはいますが、どうやら日本の仏像らしい風貌をしています。
印相をよくみると親指と人差し指を付けているように見えます。そうであれば間違いなく阿弥陀如来でしょう。

台座の蓮弁や衣文の線から推測すると、室町以降の様式のようで、実際は江戸時代くらいになるのでしょうか。いや推測なので、実際はわかりませんが。


"The Cheat"の1シーン。動画はWikipediaで見られます。検索を

そんなわけで、こういう映像を見ながら、ぼくは三味線を弾いて映画のストーリーを盛り立てていくわけですが、
いや、どうしても、仏像が気になっちゃうんですよねえ~(笑)
(上演中は、ちゃんと演奏に集中しましたよ!)

という、音楽の仕事をしながら仏像に目を止める、ワタクシでございました。

そして、イタリアでも活動写真上演の仕事で来ています。
ここに仏像は無いにしても、古い教会のマリア像とか、どうしても見たくなっちゃう。
音楽仕事の合間に行けたら、次回レポートいたします。

(*1)活動写真とは:
日本に映画が入ってきたのは明治のころ。静止画であるはずの「写真」が動く!ということで、「活動写真」と呼ばれました。
最初のころは箱の中を覗くような見世物だったので、その横で見世物についての説明をする「弁士」という職業が生まれました。
そのうち、現在と同じくスクリーンに映像を投影するようになっても、弁士は映像の横で、まるで講談のようにナレーションとセリフを付けました。これが「活動写真弁士」。略して「活動弁士」というものです。
そこに音楽も付いて、活動写真が大流行り。浅草などの歓楽街で「”活動”見に行こう」というのがモボ、モガのトレンドだったそうです。
ぼくのように、音楽を付ける人は「楽士(がくし)」といいます。
弁士付きの活動写真上演形態をひっくるめて「活弁(カツベン)」と言ったりもします。

明治から昭和初期までが大流行の時代だったんですけど、音が付く映画が浸透すると一気に下火になりましたが、現在でも「活弁」の芸能は生き残り。令和の時代にベテラン、中堅、若手の活動弁士が各地で上演し、ぼくのような楽士も同行しています。

今回の記事に書いたイベントは、若手の女性活動弁士・山内菜々子さんの「活動写真サロン」。
ぼくは三味線で映画を盛り立てました。

イタリアでは、活動弁士・片岡一郎をリーダーに、ぼくが三味線、ほかにピアノ、太鼓の4人で上演します。
ポルデノーネ市で開催される、国際的な無声映画祭というビッグイベントでの出演です。


2015年出演時の写真。オーケストラピットの奥に筆者・宮澤やすみ


年末には、周防正行監督の新作「カツベン!」も公開。宮澤(写真右)もちょい役で出演!

---おしらせ---

本稿の筆者・宮澤やすみ出演

【50年に一度の”ご開帳”
宮澤やすみ 69生誕祭】
11/9(土) 18:00開演(17:30開場)
目黒・SLOPEにて
出演:
宮澤やすみ and The Buttz(仏像バンド)
The 69 JAZZ CLUB(宮澤やすみジャズバンド)
ザ・ショウワーズ(1969=昭和44年を歌う)

神仏研究家・音楽家の宮澤やすみ生誕50周年
また、ロック全盛期1969年から50周年を記念して
仏像+音楽のイベントを開催。
江戸の裏鬼門・目黒の貴重な秘仏など特別拝観も(要予約)

詳細はHP
http://yasumimiyazawa.com/buttz/69.html