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大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1

”こうした「オシャレ台座」の例は銅像しか残ってないと思ってたんです。それが、木造でもこんなにキレイな作例が、今に残っていたなんて、ちょっとした驚きなのでした。--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。秋の音楽出演がいよいよ佳境に入り、江戸三味線の「小唄」のみならず、ジャズバンドに仏像バンドと、頭の中がぐるんぐるんしています宮澤やすみです。

そんな中、先日は京都で演奏仕事のあと、ひさしぶりに奈良に行ってきました。身体は疲れていたものの、仕事抜き・完全プライベートでの奈良は気楽なものでした。

そのなかで、大安寺がよかったです。今までなかなか行く機会がなかったのですが、バスですぐ行けるし、今までなんで行かなかったんだろうと思うくらい。

ちょうど10月から11月末までが本尊ご開帳の時期ですよ。


大安寺の境内

現在のご本尊・十一面観音菩薩はこういうお姿。


大安寺の本尊・十一面観音菩薩 写真提供:大安寺

頭部や手などが後補ですが、天平時代にさかのぼる古い像。充実したプロポーションが、まさに天平の美、ですね。
本堂の内陣奥まで入れてもらい、間近で拝観できました。厨子をのぞきこむと、台座の見事さに圧倒されましたよ。


細かい彫刻がすごい、十一面さんの台座 写真提供:大安寺

蓮の花をかたどった「蓮台(れんだい)」というものですが、花弁の表面に細かい装飾を彫りこむのは、まさに白鳳~天平期のスタイルと言えます。華やかでオシャレじゃありませんか。
なかなかこの作例に会うことは少なく、ぼくの記憶にあるのは、奈良・薬師寺東院堂の聖観音立像と、出雲・鰐淵寺の観音菩薩立像くらいです。


鰐淵寺の観音菩薩。台座の蓮弁に装飾がある(取材時に許可を得て撮影)

つまりですね、薬師寺も鰐淵寺も銅像なんです。
天平期以前の仏像というとざっと1300年くらい前のものだから、木造は残りにくい。だから、こうした「オシャレ台座」の例は銅像しか残ってないと思ってたんです。
それが、木造でもこんなにキレイな作例が、今に残っていたなんて、ちょっとした驚きなのでした。

10月~11月の期間、この台座に立つご本尊、拝んでみてください。

あとは境内にある収蔵庫に同じ時代の仏像がずらりいます。こちらは通年拝観可。有名な楊柳観音さんもここにいますよ(検索すれば出る)。
3月は馬頭観音のご開帳があります。なんとかこの時期奈良の仕事が入らないかなと思っております。奈良の方、気軽に呼んでください~

大安寺の歴史は非常に古く、紆余曲折のエピソードが興味深いです。
大安寺は、聖徳太子の熊凝道場が原型で、飛鳥の地に移転して日本史上初の官寺・百済大寺となり、さらに大官大寺と名前を変え、薬師寺(元薬師寺)と並んで藤原京域の重要寺院となります。

国を護る「国家鎮護」の役目を担った、いわば国立の大寺院だったんですね。

その後平城京遷都に伴って、現在地に移転し、大安寺となります。
その位置は、都の六条。薬師寺と東西で並んでいます。京都の東寺、西寺みたいなことなんでしょうか。
今でこそ賑わっているのは東大寺や興福寺エリアですが、ここは京域から東にはみ出た「外京」にあたるんですね。大安寺の位置こそ平城京の都心にあたります。


現在の様子から「古代の都心」を想像するのはなかなか大変ですが(笑)

広大な寺域に高い塔が建っていたのですが、何度も火災にあって、江戸時代には廃寺寸前だったそう。更地になった境内にはいつのまにか庶民が住み着き、そこに明治の廃仏毀釈の嵐が来たんですから、たまったもんじゃないですね。

人々の記憶から大安寺が消えようという大正時代に、大安寺の流れを汲むご住職が奮起して、大安寺再興にこぎつけたんだそうです。
その時から「癌封じの寺」というご利益が広まりました。
薬師寺も興福寺も、寺の再興に苦労されてますが、大安寺さんの数百年ぶりの再興を実現させる不屈の精神もすごいですね。
仏像もよく残りました。お寺は焼失しても仏像は近隣の住民が守っていたらしいです。びわ湖長浜、湖北の観音さんのエピソードに通じるものがあります。よくぞ今まで残してくださいました。

大安寺の旅、次回もつづきます。

---おしらせ---

本稿の筆者・宮澤やすみ出演

【50年に一度の”ご開帳”
宮澤やすみ 69生誕祭】
11/9(土) 18:00開演(17:30開場)
目黒・SLOPEにて
出演:
宮澤やすみ and The Buttz(仏像バンド)
The 69 JAZZ CLUB(宮澤やすみジャズバンド)
ザ・ショウワーズ(1969=昭和44年を歌う)

神仏研究家・音楽家の宮澤やすみ生誕50周年
また、ロック全盛期1969年から50周年を記念して
仏像+音楽のイベントを開催。
江戸の裏鬼門・目黒の貴重な秘仏など特別拝観も(要予約)

詳細はHP
http://yasumimiyazawa.com/buttz/69.html