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法華寺の本堂で見た西洋風?仏頭

”帝釈天と梵天の2天の頭部。これが、まさしく「ザ・天平仏」というべき、天平時代のお手本のようなお顔。ひとくちに言うと、「外人顔」なんです--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは、宮澤やすみです。
今回も奈良の旅のつづきです。

海龍王寺のとなりは法華寺。どちらも、藤原不比等から光明皇后の邸宅敷地であった場所。
天平の仏教文化をリードする、その拠点となったお寺です。
境内にある昔の浴室「からぶろ」もよく紹介されますね。


法華寺本堂

仏像ファンには、本尊の十一面観音菩薩があまりにも有名。
毎年3~4月、10~11月の一定期間公開されます。

その姿は、写真撮影不可ですが、検索したらいっぱい画像が出るでしょう。
でも実ブツの立体感は格別で、写真で見るのとはかなり印象がちがいます。


法華寺十一面観音をイメージした、イスムの観音像

バッと花開くような光背から、水瓶を前方に差し出す左手までの前後方向の奥行きがかなりあります。

身体全体の姿勢も、写真で見るよりかなり斜め姿勢でした。蓮台のほぼ中央に左足をおき、そこに全体重をかけるような姿勢で右足を浮かせようとしています。
だから、両足の位置は台座の中心から右方向に寄っているんだけど、身体がかなり左方向に傾いているせいで、像全体のバランスは見事に均整がとれています。

この絶妙なバランスを、木彫で完成させているのだから、本当に超絶の造りだと思います。
法華寺の十一面さんについては、いろんな人たちが絶賛しいろんな本に書かれていますが、やっぱり実際に目で見るのが一番ですね。

そして、今回ぼくが一番注目したのが、本堂脇にある3つの仏頭でした。

まずは、釈迦如来の頭部。
頭だけでも高さ1メートルを超える、大きな頭を間近で見ました。

はちきれんばかりの真ん丸なフォルムに、とがった鼻筋。

全体的には、興福寺所蔵の銅像仏頭(旧山田寺本尊)にそっくり。おもわずワタクシ、
「山ちゃん・・・」
と、興福寺像のあだ名をそっとつぶやいてしまいました。

興福寺の「山ちゃん」は白鳳時代のもの。今回の法華寺像は鎌倉時代とされますが、どうみても白鳳や天平の流れを汲む古仏のかたちに通じます。鎌倉時代に「修復」ということだそうで、元が造られた時代はもっと古いのかもしれませんね(くわしいことは知りませんが)。
若々しく威厳あるお顔に圧倒されました。

その両脇には、帝釈天と梵天の2天の頭部。
これが、まさしく「ザ・天平仏」というべき、天平時代のお手本のようなお顔。
ひとくちに言うと、「外人顔」なんです。
ギリシャ・ローマの遺跡にありそうな写実的な西洋人の顔。

キリっとしたハンサム顔でした。これも検索すれば出ると思います。

ワタクシ、帝釈天像には「マイケル」、梵天像には「デヴィッド」と、勝手にあだ名をつけました(マイケル・ジャクソンとは関係ありませんが、どちらかというとマイケル・J・フォックス的な)。
思わずそう呼びたくなるほど西洋風の、しかも若々しいお顔なんですよ。

余談ですが、奈良・当麻寺の四天王像も西洋風の顔立ちですが、そちらは少し渋い中年男の色気。私は「ジェームズ」「ロジャー」など呼んでいました。

いや、要するにですね、今から1300年まえの天平時代、仏像は、海外からやってきた輸入文化の色がまだ濃かった時代です。
実際にヨーロッパ人が日本にいたのか、それともインドや西域までに限られるか、よくわかりませんです。
でも、シルクロードを通して東西の文化がつながっていた古代世界のロマンが、洋風顔の仏像に見て取れて、静かな堂内でひとりワクワクするのでありました。

つぎは、日本でもっとも有名なお寺のひとつに伺います。


法華寺境内。鳥居のむこうに薬師堂と稲荷神社。神仏習合ファンにはグッとくる光景

---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演

12月14日(金)18:40開演
【セブンシネマ倶楽部】
--活動写真弁士の歴史と映画の青春時代--
最近の話題作「ジョーカー」に通じる、社会のアウトローの暴走を描いた名作「雄呂血」(大正14年)を上演。
池袋コミュニティカレッジにて。
出演:
片岡一郎(活動写真弁士)
宮澤やすみ(三味線)
https://www.7cn.co.jp/7cn/culture/cc/sevencinema/