お問い合せ

営業時間:10:00~17:00 定休日:土日祝日

  • twitter
  • facebook
  • instagram
公式オンラインストア
お問合わせ メニュー
公式オンラインストア

33年に一度の開帳!城崎温泉の秘仏に逢う -その1-

”秘仏のご本尊の前へ。なんと、今回は特別に許可を得て、撮影と、ここへの掲載もお許しいただけました--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは、年の瀬は三味線の演奏仕事(活弁上演)であちこち出向いている宮澤やすみです。新作映画『カツベン!』にもちょっとだけ出演します。ぜひ全国の映画館へどうぞ。
そんな中、この連載は奈良の旅のつづきの話が続いています。

旅の行程は、奈良市内の海龍王寺、法華寺から先週は法隆寺。その後はいきなり大阪から日本海へ向かいました。行先は兵庫県・城崎温泉。


川沿いに柳がなびく風情ある街並み。浴衣率90%

もちろん有名な温泉地でありまして、到着すると、若いカップルさんからシニアのご夫婦さんまで、浴衣姿でそぞろ歩いてます。
もはや浴衣姿でないほうがおかしいような、ある種の同調圧力を感じ(あとで私もそれに屈するのですが)、黒いコート姿でひとりで歩く温泉街はなかなか精神力が鍛えられる行程でありました。


カニシーズン真っただ中。街全体カニまみれ

ここに来た目的は、もちろん仏像です。
33年に一度のご開帳。城崎温泉の発祥にも関わる、その名も「温泉寺」の十一面観音菩薩を拝みに来ました。

幸せ満ちる保養地にあまりにも場違いな、くたびれたミュージシャン風情の男性一人。怪しまれやしないかという、余計な心配がありまして、早めに着いた旅館の若主人に
「えっと、ご開帳目当てで来たんですけど」
と聞かれてもいない目的を言ってみると、ロープウェイの乗り場を教えてくれました。温泉寺は山の中腹にあります。


眼下にロープウェイの発着場、左の崖にお寺がある

お寺の創建はなんと1300年前、天平時代。
この地で修行した道智上人が城崎温泉を湧き出させた、当地発展の端緒となるお寺なのです(詳細はこのあと)。
学生イチャイチャカップルさんも、フルムーンシニアご夫婦も、温泉とカニという人間の二大煩悩に飛びつく前に、まず温泉寺をお参りして、土地の恩恵に感謝していただきたいものです。


わたくしも夜はカニをいただきましたけどね

さて、このお寺、「1300年の歴史上、一度も火災に見舞われておりません」(お寺パンフより)とのことで、かなり古くて貴重な仏像がそのまま残っている、仏像ファンには垂涎のお寺です。

拝観料を収めてお堂に上がると、まず千手観音。こちらはあまり宣伝されていませんが、平安時代の作で腕が834本残っているという、かなり貴重で古い形をとどめた仏像でした。
奈良にあったら仏像ファンがこぞって訪れるのではないでしょうか。


温泉寺、本堂。南北朝時代の建築で和様・唐様・天竺様が融和した折衷様式

そして、本堂に入り、道智上人の像にごあいさつして(これがまたかわいらしい)、秘仏のご本尊の前へ。
なんと、今回は特別に許可を得て、撮影と、ここへの掲載もお許しいただけました!

その貴重な写真をお見せする前に、
いま一度、温泉寺の創建伝承をご紹介しましょう。

道智上人(地蔵菩薩の化身とのこと)が、衆生済度のためこの地に入ったのが養老元年(717)。
この地の四所明神の神託を得て修行を積むこと1000日。八曼荼羅の秘法を修めました。
すると、養老四年(720)に温泉が湧出。
このあと本尊の十一面観音が安置され伽藍が整備、天平10年(738)に聖武天皇から「末代山温泉寺」の勅号を賜ります。

まず、この伝承での「神託を得て」というのが気になります。

じつは、旅館の前に、その神様がいたんです。

りっぱなお社が建っており、現在の名称は明神ではなく「四所(ししょ)神社」といいます。


温泉街の要の位置に建つ四所神社

「四所」というのは、4人の神様がいるということなのですが、そのなかの主祭神は湯山主神(ゆやまぬしのかみ)といいます。
まさに温泉を出してくれそうなお名前ですね。

この四所明神の創建が和同元年(708)とのことで、道智上人が来訪するより早い。
このときに、あったかい湧き水でも出ていたのかどうかわかりませんが、何かの理由で大事な場所とされ、そこに道智上人のはたらきがあって城崎温泉が開かれました。

いずれにしても、奈良の大仏ができる少し前、いよいよ仏教で国がまとまろうという時代と、城崎温泉の発祥がリンクして興味深いです。
ちなみに、四所明神の残りの三神は、九州・宗像大社を総本宮とする海の女神たちです。きっと日本海の海上交通でつながっていたんでしょう。

そして、本尊十一面観音は、奈良の長谷寺の伝承ともリンクして、ますます奈良とのつながりが見えてきます。

長くなりました。つづきは次回といたしましょう。写真もいろいろお見せしますね。


秘仏本尊十一面観音菩薩。正面からの写真は次回!

---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演

12月14日(金)18:40開演
【セブンシネマ倶楽部】
--活動写真弁士の歴史と映画の青春時代--
最近の話題作「ジョーカー」に通じる、社会のアウトローの暴走を描いた名作「雄呂血」(大正14年)を上演。
池袋コミュニティカレッジにて。
出演:
片岡一郎(活動写真弁士)
宮澤やすみ(三味線)
https://www.7cn.co.jp/7cn/culture/cc/sevencinema/