- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 33年に一度の開帳!城崎温泉の秘仏に逢う -その2-
33年に一度の開帳!城崎温泉の秘仏に逢う -その2-
”学者の先生も、以前は「平安前期」説が優勢だったけど、最近になって「いや天平かも?」という声があるそうで--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは、新作映画『カツベン!』にちょっとだけ出演している宮澤やすみです。冒頭10分の明治時代のシーンで三味線弾きの役をしています。エンドロールでわかりやすく名前を上げていただき感激です。ぜひ全国の映画館へどうぞ。
そんな中、この連載はいよいよ秘仏がおでましです。
兵庫県・城崎温泉で、カニと温泉を横目にまず向かった温泉寺。
ご住職が内陣まで案内してくれ、内陣の本尊すぐそばまで近づき、お話を伺いました。
その後、一般の参拝者がいなくなった時点で、撮影の特別許可をいただきました。
まさか撮影できると思ってなかったので、軽装備を悔やみましたね。暗い中で手持ちカメラでの撮影ですが、まあご覧ください。
温泉寺本尊・十一面観音菩薩立像 (伝)天平時代
高さ約2.1m。小さな厨子から外に出て、全身が見えるようになっています。
全体の印象は、骨太のがっしりした体躯の観音像。
腕と脚部が太く、とくに足(かかとからつま先)がずいぶんデカい。
お顔も頬が張って、厚い唇、重いまぶたが特徴的です。
体つきは筋肉質というわけではなく、栄養の行き届いたゆるふわボディという感じ。
そこはやはり観音さまですから、金剛力士や不動明王のような肉体派とは立場が異なるわけです。
筋肉の力ではなく、その存在感だけでもうありがたいというわけです。
どっしりとした下半身に、深く衣文が刻まれる
こうした量感豊かな仏像のスタイルは、平安時代の前期に流行したものでした。
あと、衣の衣文線にも時代の特徴が見られます。
下半身を見ると、ザクザクと深く彫り込まれた力強い衣文線が見られます。いっぽう、腕から垂れる天衣(てんね)には、渦文と呼ばれる、渦を巻くような衣文が刻まれています。
豪快で男性的な印象の表現に、この渦文が貴族的な優雅さを加味しています。
腰部に見える衣文は、太いシワと細いシワが交互に表れる。平安前期に流行した「翻派式衣文」というスタイル
こうした衣文線の表現をみると、制作時代はいかにも平安前期まちがいなし!と思うのですが、しかし、顔立ちの、まぶたが重そうな感じは平安前期よりも古い、天平様式っぽくも見えるんですよね。
「天平の仏像は手足が大きいんだそうですよ」
とご住職はおっしゃいます。たしかに足がひときわ大きくがっしりと造られていて、子供のころに見た「大鉄人17」を思い出します(ごめん誰も知らないね)。
ご住職のお話だと、学者の先生も、以前は「平安前期」説が優勢だったけど、最近になって「いやじつは天平かも?」という声があるそうです。
天平時代の木彫作例は少ないです。しかし、ちょうどこないだ奈良の大安寺で拝観して、この連載にも書いていました。
ちょっと試みに、天平ブツと、平安前期ブツの例をあげてみましょう。
奈良・大安寺十一面観音菩薩。天平期の木像は稀少
大阪・道明寺十一面観音菩薩。壇像風の仕上がりで比較にならないかも
なんだか、どれも個性があって、比較にならないですね(笑)
都の仏像は仕上がりがキレイだし。
地方の仏像の例は、この連載で2年前に書いた島根の仏像。
島根・仏谷寺虚空蔵菩薩。ウネウネした衣文
いやもう、どれも特徴がありすぎて、やっぱりあんまり比較になりませんでした(笑)
城崎の像は、ずんぐりした重量級のフォルムを見ると平安前期ぽいし、顔立ちや衣文のざっくり感は天平か?とも思えるし、果たしていつ造られたのか・・・?
記録が無いから明確な答えは出ませんが、仏像ファンはこうした話が大好きなので、専門の先生方の意見を聞いてみたいです。
いずれにしても、ものすごく古い仏像であることは間違いなく、全国的にも貴重な像です。
僕自身、天平から平安前期の古仏は大好ブツであり、大興奮したのでありました。
さらに、この像にある大きな特徴があります。
それは表面の「鉈彫り仕上げ」です。これと長谷寺信仰との関連は?
その話は、また次回としましょう。何度も引っ張って申し訳ない!
【参考:過去の記事】
(大安寺)大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1
(仏谷寺)出雲仏像の旅4 -都会派?地方派?美保関の仏像-
---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演
12月19日(木)
「岡田啓佑のピアノ弾き語り投げ銭ライブ!」
ゲスト:宮澤やすみ(三味線&小唄など)
料金:投げ銭(要1ドリンクオーダー)
阿佐ヶ谷・よるのひるね
http://yoruhiru.com/
20:00〜20:30 岡田啓佑
20:30〜21:00 宮澤やすみ
21:00〜22:00 オープンマイク
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは、新作映画『カツベン!』にちょっとだけ出演している宮澤やすみです。冒頭10分の明治時代のシーンで三味線弾きの役をしています。エンドロールでわかりやすく名前を上げていただき感激です。ぜひ全国の映画館へどうぞ。
そんな中、この連載はいよいよ秘仏がおでましです。
兵庫県・城崎温泉で、カニと温泉を横目にまず向かった温泉寺。
ご住職が内陣まで案内してくれ、内陣の本尊すぐそばまで近づき、お話を伺いました。
その後、一般の参拝者がいなくなった時点で、撮影の特別許可をいただきました。
まさか撮影できると思ってなかったので、軽装備を悔やみましたね。暗い中で手持ちカメラでの撮影ですが、まあご覧ください。
温泉寺本尊・十一面観音菩薩立像 (伝)天平時代
高さ約2.1m。小さな厨子から外に出て、全身が見えるようになっています。
全体の印象は、骨太のがっしりした体躯の観音像。
腕と脚部が太く、とくに足(かかとからつま先)がずいぶんデカい。
お顔も頬が張って、厚い唇、重いまぶたが特徴的です。
体つきは筋肉質というわけではなく、栄養の行き届いたゆるふわボディという感じ。
そこはやはり観音さまですから、金剛力士や不動明王のような肉体派とは立場が異なるわけです。
筋肉の力ではなく、その存在感だけでもうありがたいというわけです。
どっしりとした下半身に、深く衣文が刻まれる
こうした量感豊かな仏像のスタイルは、平安時代の前期に流行したものでした。
あと、衣の衣文線にも時代の特徴が見られます。
下半身を見ると、ザクザクと深く彫り込まれた力強い衣文線が見られます。いっぽう、腕から垂れる天衣(てんね)には、渦文と呼ばれる、渦を巻くような衣文が刻まれています。
豪快で男性的な印象の表現に、この渦文が貴族的な優雅さを加味しています。
腰部に見える衣文は、太いシワと細いシワが交互に表れる。平安前期に流行した「翻派式衣文」というスタイル
こうした衣文線の表現をみると、制作時代はいかにも平安前期まちがいなし!と思うのですが、しかし、顔立ちの、まぶたが重そうな感じは平安前期よりも古い、天平様式っぽくも見えるんですよね。
「天平の仏像は手足が大きいんだそうですよ」
とご住職はおっしゃいます。たしかに足がひときわ大きくがっしりと造られていて、子供のころに見た「大鉄人17」を思い出します(ごめん誰も知らないね)。
ご住職のお話だと、学者の先生も、以前は「平安前期」説が優勢だったけど、最近になって「いやじつは天平かも?」という声があるそうです。
天平時代の木彫作例は少ないです。しかし、ちょうどこないだ奈良の大安寺で拝観して、この連載にも書いていました。
ちょっと試みに、天平ブツと、平安前期ブツの例をあげてみましょう。
奈良・大安寺十一面観音菩薩。天平期の木像は稀少
大阪・道明寺十一面観音菩薩。壇像風の仕上がりで比較にならないかも
なんだか、どれも個性があって、比較にならないですね(笑)
都の仏像は仕上がりがキレイだし。
地方の仏像の例は、この連載で2年前に書いた島根の仏像。
島根・仏谷寺虚空蔵菩薩。ウネウネした衣文
いやもう、どれも特徴がありすぎて、やっぱりあんまり比較になりませんでした(笑)
城崎の像は、ずんぐりした重量級のフォルムを見ると平安前期ぽいし、顔立ちや衣文のざっくり感は天平か?とも思えるし、果たしていつ造られたのか・・・?
記録が無いから明確な答えは出ませんが、仏像ファンはこうした話が大好きなので、専門の先生方の意見を聞いてみたいです。
いずれにしても、ものすごく古い仏像であることは間違いなく、全国的にも貴重な像です。
僕自身、天平から平安前期の古仏は大好ブツであり、大興奮したのでありました。
さらに、この像にある大きな特徴があります。
それは表面の「鉈彫り仕上げ」です。これと長谷寺信仰との関連は?
その話は、また次回としましょう。何度も引っ張って申し訳ない!
【参考:過去の記事】
(大安寺)大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1
(仏谷寺)出雲仏像の旅4 -都会派?地方派?美保関の仏像-
---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演
12月19日(木)
「岡田啓佑のピアノ弾き語り投げ銭ライブ!」
ゲスト:宮澤やすみ(三味線&小唄など)
料金:投げ銭(要1ドリンクオーダー)
阿佐ヶ谷・よるのひるね
http://yoruhiru.com/
20:00〜20:30 岡田啓佑
20:30〜21:00 宮澤やすみ
21:00〜22:00 オープンマイク