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仏像による国際化? 特別展「出雲と大和」展

”ヤマト王権の祭祀文化がすっかり浸透しきった時期の遺物とはいえ、都の流行りと異なる作風が見え--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは、この連載も4年目でおよそ164回を数えますが、先週初めて病欠で一回休みしました宮澤やすみです。毎年、年末から1月が何事も具合悪いのですが今年は諸々きつかった。しかし節分、立春を迎えてここから気持新たにスタートです。

そんなわけで、東博で開催中の「出雲と大和」展。
仏像もかなり充実していました。

まず目を引くのは大安寺と唐招提寺の木彫像ではないでしょうか。
(写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影)


画面右端が大安寺多聞天。編み込みの靴に注目

仏教文化が花開いた天平期の、貴重な木彫仏です。
現在もはっきり残るの精緻な彫刻が驚きです。
天部の靴にも注目。大安寺の多聞天の靴が、アミアミなんですよ。なにかを編んで作った靴(を表現した木彫)。解説によると「天平後期における新たな唐代彫刻の影響」とのこと。
要するに当時最新のデザインをいち早く取り入れた、令和風に言うとナイキの厚底シューズみたいなものでしょうか。

隣の楊柳観音も、ベルトの非常に細かいドットがおしゃれ。現在まで約1300年よく残っています。
大安寺は、ちょうど昨秋に訪れたばかりで、この二像も現地で拝観しましたが、足元は気づきませんでした。

ちなみに楊柳観音という名称は後世につけられたもの。制作当初は雑密(空海以前の初期密教)系の尊像と思われます。

さらに古い例としては、当麻寺の持国天も見逃せません。法隆寺像に次いで日本で二番目に古いこの持国天像は、派手なポーズをとらず静かに立っていて、髭をたくわえた精悍な顔つきで、口を少し開いて何か話しかけているです。


「ジェームズ」と呼びかけたくなる当麻寺持国天

その顔が、なんともバタ臭いというか西洋風なんです。この連載の法華寺の旅でも書きましたが、天平期やそれ以前の天部像はこうした洋モノ系のお顔をしていることがある。

法華寺の帝釈天には「マイケル」と勝手に名前を付けましたが、当麻寺のこのお方は、だいぶ前に金堂内で始めてお会いして以来「ジェームズ」と勝手に呼んでいました。
仏教文化が、外来のインポートカルチャーであったことがよくわかる例かと思います。

展示の最後は、出雲にある大寺(おおてら)薬師の四天王が勢ぞろい。


四隅をいったりきたりしながらじっくり拝観

これも現地で拝観し、この連載で紹介しました。私にとっては3年ぶり再会。
旅先で出会って仲良くなった友人を東京で迎えるような、非常に晴れがましい気分です。

「出雲と大和」展では、弥生時代の出雲の独自文化から始まって、大和との位置づけ(「幽」と「顕」)を尊重しながら両者が融和していく、ふたつのクニが「日本」という大きなくくりの国になっていく、そんな構成になっています。


東博法隆寺宝物館所蔵の飛鳥仏も展示。明るめの照明でいつもより見やすい

大寺薬師の四天王像は、平安時代9世紀の作。京都・東寺の像と同世代ながら、あんなに派手な感じは無く、どっしりと構えた骨太の風格。ヤマト王権の祭祀文化がすっかり浸透しきった時期の遺物とはいえ、都の流行りと異なる作風が見える、今回の展示を象徴するような仏像でした。


【日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」】
2020年1月15日(水)-3月8日(日)
東京国立博物館・平成館にて
https://izumo-yamato2020.jp


(過去記事)
出雲仏像の旅2 -大寺の四天王-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170701-2/

大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20191029-2/




---おしらせ---

■本コラム筆者・宮澤やすみ出演

2020年2月21日(日)20:00開演(19:00開場)
【宮澤やすみの小唄かふぇ Vol.28】

シックなバーで楽しむ江戸の小唄とおもしろゲスト。
今回はジャズピアノと弾き語りの名手がコラボ。
詳細、予約は↓
http://yasumimiyazawa.com/koutacafe

(出演)
宮澤やすみ(小唄、三味線)
岡田啓佑(a.k.a. センチメンタル岡田:ピアノ、ラップ、歌)