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仏像のだいじな持物「羂索」

”じつに原始的な道具ですが、古代インドでは欠かせない道具であり有効な武器だったんだと……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。今週も自宅蟄居の生活、仏像講座の仕事が来年冬まで中止の連絡をくらい、収入のアテがどんどん無くなっている宮澤やすみです。
約20年前、音楽活動を一旦辞めて、なんのアテもなく自称フリーライターになった時の、肩書も仕事も収入もフリーという、あの状況に戻った感じがします。つまり再スタート。またそこからかよ、というところですね。

こうなると、旅の情報は書きづらいので、自宅で何かしようと思うと、目につくのが沢山の書籍です。
買って以来あまり読んでない本を開いてみるには、ちょうどよい機会。


古本市で運よく出会い入手した一冊

そこで手に取ったのが、秋山正美・著『仏像の持ちもの小事典』(燃焼社)という本です。
タイトルのとおり、仏像が手にする持物(じもつ)一つひとつの解説が書かれている事典で、ぼくのような人さまに仏像を教える立場の人間にとっては非常に役立つ本です。

著者の秋山正美氏(故人)は、1960年代後半にセンセーショナルな著作(検索すれば出る)で世に出た文筆家ですが、ここでは非常に真摯な姿勢で仏像に向き合っています。

一度原点に返って、仏像入門的な事項をおさらいするのもいいですね。

本を手に取って、ばっと開くと、出た項目は「羂索」。

けんじゃく、とも、けんさくとも読みます。
本によると、「羂」がワナ、「索」が縄を意味するとし、鳥獣をしばる投げ縄みたいなものが原型だそう。その投げ縄が仏像で用いられる場合の意味合いですが、本書を引用すると:
”縄や網は、生きものをしばりあげ、その自由を奪うための狩猟用具であるが、仏教においては、「羂索とは慈悲の索なり」との教えにあるとおり、俗人たちを残さず救いあげるみ仏の広大無辺な慈悲の心が、便宜的に検索で象徴されているのである”


羂索で衆生を救う不空羂索観音。イスム仏像

迷いのさなかにいる人間を、この縄でキュッと縛り上げて、ヒョイッと引っ張り上げる、現代に例えれば、遭難者をヘリコプター救助隊がロープで救うような感じでしょうか。
じつに原始的な道具ですが、古代インドでは欠かせない道具であり有効な武器だったんだと思います。

本書によると、迷い人を救いあげるだけでなく、悪心を縛り上げたり、人と人の心を結びつける意味もあるとか。
この記事を書いている現在は、新型コロナウイルスのおかげで人の心がささくれだっている時期。なんとか心ひとつになって、ウイルスを封じていただきたいものですね。


長谷寺の特別拝観でいただいた「五色線」も、羂索の一種といえる

この羂索をもつ仏像で、代表的なものは不空羂索観音菩薩と、不動明王ではないでしょうか。
どちらも左手に羂索を垂らしています。
イスムさんのページで持物の詳細な解説が出ています。

不空羂索観音:
http://www.isumu.jp/info-contents/release-fukukensaku/

不動明王:
http://isumu-shop.jp/isumu/7.1/tc3526/


この本、入手してから書庫に眠っていてあまり手に取ることがありませんでした。
この機会に、こういう眠れる宝を掘り起こして、一から勉強し直してみたいと思います。


明王がもつ白いニョロニョロも意味あいは羂索と同じ。蛇の形をした「蛇索」というらしい

この連載でも、またちょくちょく紹介したいと思います。

それでは、みなさま引き続きご無事でお過ごしください。



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宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m