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なぜ如意輪観音なのか?-石山寺・如意輪観音の旅 その4
”六本腕でもないのに、法輪もないのに、どうしても如意輪観音と言いたかった事情があったんでしょうか……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ここ数回は、滋賀・石山寺をテーマにブツブツ書いております。
※出かけたのは6月、ちょうど緊急事態が解除され状況が収まりかけていたタイミングでのこと。現地に迷惑を掛けないよう、充分に感染対策しての旅でした。
前回は、石山寺の勅封秘仏ご本尊・如意輪観音菩薩を間近に拝観しました。
ここのご本尊は、如意輪観音菩薩といわれますが、いわゆる基本的な如意輪観音の像とは姿が異なるのですね。
そのへんちょっと整理しましょう。
ふつう仏像の本などでよく紹介される、基本的な如意輪観音の姿は、イスムさんの画像でご覧ください。
如意輪観音菩薩の例:イスム仏像より
まず大きな特徴は、
・6本腕=六臂(ろっぴ)
・輪王坐=片方の脚を立てて座り、両足の裏を合わせる
です。
さらに、六つの手に特徴があります。左右の外側から見ていくと、
(右手)
1.数珠を持って下に下げる
2.頬に指先をあてる思惟のポーズ
3.如意宝珠を胸前に持つ
(左手)
1.地面を抑えるポーズ「降魔印」
2.未開敷蓮華(つぼみの状態の蓮)をもつ菩薩の象徴
3.法輪(輪宝)を指先に載せる
となります。
このうち、右3.如意宝珠と、左3.法輪をフィーチャーして「如意輪」観音と呼ばれます。
この六本の手が、仏教の世界観でいう六道とリンクして、六道輪廻から衆生を救う役割もあるといいます。
くわしくは、仏像ワールドさんの解説ページにあるので参考になさってください。
また、右2が思惟のかたちをしており、弥勒菩薩のポーズと同じなんですよね。
そのことからでしょうか。後の時代には、弥勒菩薩が如意輪観音と呼ばれるようになったりして、混同されていきます(その話は後日)。
以上が一般的な如意輪観音菩薩の姿。
現在知られている、六臂=6本腕の如意輪観音菩薩で一番古いものは、大阪・観心寺の像です。
これは平安時代の前期、9世紀の作(伝説では815年弘法大師作)とされます。
石山寺と如意輪観音の関係は?
それをふまえて、石山寺の像をもう一度見てみましょう。
腕は二臂=2本腕です。
座り方は、片足を下した「踏み下げ」の形。
如意輪観音の基本形とはだいぶ異なります。
持物は、右手に未開敷蓮華を持ち、その先端に如意宝珠がのっかっているようです。
法輪は見あたりません。
写真をお見せしたいんですけどね、なかなかハードルがありましてね……お察しください。
前回記事でも紹介したとおり、朝日新聞や産経新聞のWEB記事にわかりやすく出ているのでご覧ください。
趣味の方々のブログでも上がってます(こういうルールってあいまいですよね)。
ただ、現場で拝する実ブツと写真では印象がかなり異なります。コロナのご時世ですがもしチャンスがあればお寺へ行ってみてください(2020年8月10日まで開扉)。
基本的な六臂像とはかなり異なる、シンプルな姿です。
このシリーズ連載の初回に書いた通り、石山寺は奈良時代、奈良の大仏建立の頃にからんで創建されたお寺です。
その石山寺の本尊が、如意輪観音であるということに、筆者は素朴な疑問をもったのでした。
つまり、如意輪観音の古い作例である大阪・観心寺の像よりさらに古いわけで、奈良時代に、如意輪観音が存在していたとは考えにくい。
おそらく、どこかのタイミングで本尊の名称が「如意輪観音」に替えられたのかな? と思うわけです。
六本腕でもないのに、法輪も持たないのに、どうしても如意輪観音と言いたかった事情があったんでしょうか。
謎めく如意輪観音の世界:イスム仏像より
さらに、現在私たちが拝観できる本尊は、平安後期の火災の後、旧本尊に代わって造られた再建像なんですけど、ちょうどそのころに「日本の如意輪観音といえば石山寺」というイメージができあがって、文献に残されています。
平安時代後期というタイミングに、何があったんでしょうか?
次回以降、少しずつ触れていきたいと思います。
……と、こういう感じでだいじょうぶですかね。
「仏像ブツブツ」は、あくまでもかる~い仏像エッセイなんですが、どれくらいのバランスでいけばよいか。探り探りやってます!
まあぶっちゃけ読んでる人そんなにいないでしょうから(笑)、好きに書かせてもらいますね。
(参考)
大本山 石山寺公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp
●おしらせ
本コラム筆者の”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は、石山寺の石を用いた川原寺のものを復元
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ここ数回は、滋賀・石山寺をテーマにブツブツ書いております。
※出かけたのは6月、ちょうど緊急事態が解除され状況が収まりかけていたタイミングでのこと。現地に迷惑を掛けないよう、充分に感染対策しての旅でした。
前回は、石山寺の勅封秘仏ご本尊・如意輪観音菩薩を間近に拝観しました。
ここのご本尊は、如意輪観音菩薩といわれますが、いわゆる基本的な如意輪観音の像とは姿が異なるのですね。
そのへんちょっと整理しましょう。
ふつう仏像の本などでよく紹介される、基本的な如意輪観音の姿は、イスムさんの画像でご覧ください。
如意輪観音菩薩の例:イスム仏像より
まず大きな特徴は、
・6本腕=六臂(ろっぴ)
・輪王坐=片方の脚を立てて座り、両足の裏を合わせる
です。
さらに、六つの手に特徴があります。左右の外側から見ていくと、
(右手)
1.数珠を持って下に下げる
2.頬に指先をあてる思惟のポーズ
3.如意宝珠を胸前に持つ
(左手)
1.地面を抑えるポーズ「降魔印」
2.未開敷蓮華(つぼみの状態の蓮)をもつ菩薩の象徴
3.法輪(輪宝)を指先に載せる
となります。
このうち、右3.如意宝珠と、左3.法輪をフィーチャーして「如意輪」観音と呼ばれます。
この六本の手が、仏教の世界観でいう六道とリンクして、六道輪廻から衆生を救う役割もあるといいます。
くわしくは、仏像ワールドさんの解説ページにあるので参考になさってください。
また、右2が思惟のかたちをしており、弥勒菩薩のポーズと同じなんですよね。
そのことからでしょうか。後の時代には、弥勒菩薩が如意輪観音と呼ばれるようになったりして、混同されていきます(その話は後日)。
以上が一般的な如意輪観音菩薩の姿。
現在知られている、六臂=6本腕の如意輪観音菩薩で一番古いものは、大阪・観心寺の像です。
これは平安時代の前期、9世紀の作(伝説では815年弘法大師作)とされます。
石山寺と如意輪観音の関係は?
それをふまえて、石山寺の像をもう一度見てみましょう。
腕は二臂=2本腕です。
座り方は、片足を下した「踏み下げ」の形。
如意輪観音の基本形とはだいぶ異なります。
持物は、右手に未開敷蓮華を持ち、その先端に如意宝珠がのっかっているようです。
法輪は見あたりません。
写真をお見せしたいんですけどね、なかなかハードルがありましてね……お察しください。
前回記事でも紹介したとおり、朝日新聞や産経新聞のWEB記事にわかりやすく出ているのでご覧ください。
趣味の方々のブログでも上がってます(こういうルールってあいまいですよね)。
ただ、現場で拝する実ブツと写真では印象がかなり異なります。コロナのご時世ですがもしチャンスがあればお寺へ行ってみてください(2020年8月10日まで開扉)。
基本的な六臂像とはかなり異なる、シンプルな姿です。
このシリーズ連載の初回に書いた通り、石山寺は奈良時代、奈良の大仏建立の頃にからんで創建されたお寺です。
その石山寺の本尊が、如意輪観音であるということに、筆者は素朴な疑問をもったのでした。
つまり、如意輪観音の古い作例である大阪・観心寺の像よりさらに古いわけで、奈良時代に、如意輪観音が存在していたとは考えにくい。
おそらく、どこかのタイミングで本尊の名称が「如意輪観音」に替えられたのかな? と思うわけです。
六本腕でもないのに、法輪も持たないのに、どうしても如意輪観音と言いたかった事情があったんでしょうか。
謎めく如意輪観音の世界:イスム仏像より
さらに、現在私たちが拝観できる本尊は、平安後期の火災の後、旧本尊に代わって造られた再建像なんですけど、ちょうどそのころに「日本の如意輪観音といえば石山寺」というイメージができあがって、文献に残されています。
平安時代後期というタイミングに、何があったんでしょうか?
次回以降、少しずつ触れていきたいと思います。
……と、こういう感じでだいじょうぶですかね。
「仏像ブツブツ」は、あくまでもかる~い仏像エッセイなんですが、どれくらいのバランスでいけばよいか。探り探りやってます!
まあぶっちゃけ読んでる人そんなにいないでしょうから(笑)、好きに書かせてもらいますね。
(参考)
大本山 石山寺公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp
●おしらせ
本コラム筆者の”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
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アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は、石山寺の石を用いた川原寺のものを復元
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宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m