- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 「観世音」が「如意輪」になる-石山寺・如意輪観音の旅 その5
「観世音」が「如意輪」になる-石山寺・如意輪観音の旅 その5
”石山寺と東大寺に、密接な関係があり、それをつなぐのが如意輪観音。いったい、この2つの古刹に何があったんでしょうか?……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ここ数回は、滋賀・石山寺をテーマにブツブツ書いております。
※出かけたのは6月、ちょうど緊急事態が解除され状況が収まりかけていたタイミングでのこと。現地に迷惑を掛けないよう、充分に感染対策しての旅でした。
昨日2020年8月10日で、特別御開扉は終了しました。
6月に拝観してきたわたくしには、なぜ如意輪観音?の素朴なギモンが、手つかずの夏休みの宿題みたいに残っております。
前回は、如意輪観音菩薩の姿をおさらいしました。
※石山寺像のお姿は朝日新聞や産経新聞のWEB記事にわかりやすく出ているのでご覧ください。
現在私たちが拝観できる本尊は、平安後期の火災の後、旧本尊に代わって造られた再建像なんですけど、ちょうどそのころに「日本の如意輪観音といえば石山寺」というイメージができあがって、文献に残されています。
平安時代後期というタイミングに、何があったんでしょうか?
古代から平安期までの石山寺と周辺で、いろんなエピソードがあるのですが、文章でだらだら書くとまとまらないので、ここで一度、石山寺のご本尊について、時代を追って整理しますね。
関連寺院の動向と合わせて一覧にします。
筆者・宮澤やすみのアルバムジャケット。手前の礎石こそ、石山寺のものだったのです(現在は復元)。飛鳥・川原寺。画面奥は橘寺
1.石山寺と東大寺のつながり
天智天皇(660ごろ)石山寺一帯が石切場として活用される(飛鳥・川原寺)
天平19年(747)石山寺創建伝承。東大寺大仏造立に関わるエピソード
天平勝宝4年(752)東大寺大仏開眼
天平宝字5年(761)本堂など整備(石山寺旧本尊造立か)造東大寺所による
2.如意輪観音の信仰が伝わる
延暦13年(794)平安京遷都
大同元年(806)空海、唐より帰朝
弘仁6年(815)空海が観心寺、如意輪観音像を刻む伝承
天長4年(827)観心寺創建
3.石山寺本尊が「如意輪」に
永観2年(984)『三宝絵』石山寺本尊を如意輪観音とする初出
承暦2年(1078)本堂半焼。本尊も損壊(建暦元年1211まで残存)
永長元年(1096)本堂再建。現本尊このとき造立か
保延5年ごろ(1139)『図像抄』如意輪観音の項に石山寺像
石山寺本堂は滋賀県最古の建造物。懸造の礼堂部分は慶長7年(1602)
以上が、古代から平安時代までの流れになります。
このあと、鎌倉時代からまたいろいろありますが、それは後ほど。
結論からいって、年表の小見出しにあるような流れがあったのかなと推測されるんですよね。
つまり、創建当初は歴代の天皇と関連が深く、石山寺本堂整備の記録にはたんに「観世音菩薩」とあるそう。
それが、空海の真言密教が広まって、如意輪観音信仰が浸透したあとには、あるときから石山寺の「観音」が、わざわざ「如意輪観音」と呼ばれるようになる。
そこで、この年表で注目すべきは、3.の永観2年『三宝絵』という仏教説話集です。
ここには、石山寺の創建伝承(この連載1回目)が書かれており、東大寺大仏の鍍金について祈願するのに、如意輪観音を祀ったとあります。
『三宝絵』が書かれるころには、石山寺の本尊が如意輪観音だというコンセンサスができていたようですね。
そして、『図像抄』には、石山寺と同スタイルの如意輪観音像として、東大寺大仏の脇侍を上げています。
石山寺スタイルの、二臂の如意輪観音像は、東大寺大仏殿にもいたのでした。
東大寺大仏殿 如意輪観音P1220982 posted by (C)北迫薫-poco
石山寺と東大寺に、密接な関係があり、それをつなぐのが如意輪観音。
いったい、この2つの古刹に何があったんでしょうか?
このナゾを解くキーパーソンがひとりいました。
名前は「淳祐(しゅんにゅう)」。
石山寺の第3代座主で、菅原道真の孫でもあります。
このお方、じつは石山寺境内の御影堂でお会いできます。行ってみましょう。
次回、いよいよ石山寺の如意輪観音のナゾが解かれる!たぶん!
(参考)
大本山 石山寺公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は石山寺の石を使った川原寺の復元
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ここ数回は、滋賀・石山寺をテーマにブツブツ書いております。
※出かけたのは6月、ちょうど緊急事態が解除され状況が収まりかけていたタイミングでのこと。現地に迷惑を掛けないよう、充分に感染対策しての旅でした。
昨日2020年8月10日で、特別御開扉は終了しました。
6月に拝観してきたわたくしには、なぜ如意輪観音?の素朴なギモンが、手つかずの夏休みの宿題みたいに残っております。
前回は、如意輪観音菩薩の姿をおさらいしました。
※石山寺像のお姿は朝日新聞や産経新聞のWEB記事にわかりやすく出ているのでご覧ください。
現在私たちが拝観できる本尊は、平安後期の火災の後、旧本尊に代わって造られた再建像なんですけど、ちょうどそのころに「日本の如意輪観音といえば石山寺」というイメージができあがって、文献に残されています。
平安時代後期というタイミングに、何があったんでしょうか?
古代から平安期までの石山寺と周辺で、いろんなエピソードがあるのですが、文章でだらだら書くとまとまらないので、ここで一度、石山寺のご本尊について、時代を追って整理しますね。
関連寺院の動向と合わせて一覧にします。
筆者・宮澤やすみのアルバムジャケット。手前の礎石こそ、石山寺のものだったのです(現在は復元)。飛鳥・川原寺。画面奥は橘寺
1.石山寺と東大寺のつながり
天智天皇(660ごろ)石山寺一帯が石切場として活用される(飛鳥・川原寺)
天平19年(747)石山寺創建伝承。東大寺大仏造立に関わるエピソード
天平勝宝4年(752)東大寺大仏開眼
天平宝字5年(761)本堂など整備(石山寺旧本尊造立か)造東大寺所による
2.如意輪観音の信仰が伝わる
延暦13年(794)平安京遷都
大同元年(806)空海、唐より帰朝
弘仁6年(815)空海が観心寺、如意輪観音像を刻む伝承
天長4年(827)観心寺創建
3.石山寺本尊が「如意輪」に
永観2年(984)『三宝絵』石山寺本尊を如意輪観音とする初出
承暦2年(1078)本堂半焼。本尊も損壊(建暦元年1211まで残存)
永長元年(1096)本堂再建。現本尊このとき造立か
保延5年ごろ(1139)『図像抄』如意輪観音の項に石山寺像
石山寺本堂は滋賀県最古の建造物。懸造の礼堂部分は慶長7年(1602)
以上が、古代から平安時代までの流れになります。
このあと、鎌倉時代からまたいろいろありますが、それは後ほど。
結論からいって、年表の小見出しにあるような流れがあったのかなと推測されるんですよね。
つまり、創建当初は歴代の天皇と関連が深く、石山寺本堂整備の記録にはたんに「観世音菩薩」とあるそう。
それが、空海の真言密教が広まって、如意輪観音信仰が浸透したあとには、あるときから石山寺の「観音」が、わざわざ「如意輪観音」と呼ばれるようになる。
そこで、この年表で注目すべきは、3.の永観2年『三宝絵』という仏教説話集です。
ここには、石山寺の創建伝承(この連載1回目)が書かれており、東大寺大仏の鍍金について祈願するのに、如意輪観音を祀ったとあります。
『三宝絵』が書かれるころには、石山寺の本尊が如意輪観音だというコンセンサスができていたようですね。
そして、『図像抄』には、石山寺と同スタイルの如意輪観音像として、東大寺大仏の脇侍を上げています。
石山寺スタイルの、二臂の如意輪観音像は、東大寺大仏殿にもいたのでした。
東大寺大仏殿 如意輪観音P1220982 posted by (C)北迫薫-poco
石山寺と東大寺に、密接な関係があり、それをつなぐのが如意輪観音。
いったい、この2つの古刹に何があったんでしょうか?
このナゾを解くキーパーソンがひとりいました。
名前は「淳祐(しゅんにゅう)」。
石山寺の第3代座主で、菅原道真の孫でもあります。
このお方、じつは石山寺境内の御影堂でお会いできます。行ってみましょう。
次回、いよいよ石山寺の如意輪観音のナゾが解かれる!たぶん!
(参考)
大本山 石山寺公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は石山寺の石を使った川原寺の復元
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m