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巨像の魂?4体の小金銅仏-石山寺・如意輪観音の旅 その9

”我々が拝観した大きな像は、魂を入れる筐体でありまして、小金銅仏こそが「魂」なのでありました……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ここ数回は、滋賀・石山寺をテーマにブツブツ書いております。

前回は、醍醐寺と石山寺の結びつきで本尊が如意輪観音となり、東大寺も繋ぐ、真言密教トライアングルができたお話でした。

さて、これまで石山寺の本尊が如意輪観音と呼ばれるようになる経緯を紹介しましたが、その本尊は平安時代に再造されたもので、それ以前の旧本尊が存在していたことがわかっています。
それは、記録によると現存の像と同じくらいの丈六サイズで、粘土で作られた塑像であったそうです。

この像が、石山寺創建時のものなのでしょうか?

このシリーズ初回にご紹介した、石山寺創建伝承をもう一度みてみると、

「大きな岩の上に6寸(20cm弱)の金銅如意輪観音像を安置して」

とありまして、サイズが違いすぎますし、塑像と金銅像では材質も異なる。

この文章は鎌倉時代に書かれた伝承であり、正確な史実というわけではないのですが、それにしても、この時代は大きな塑像と木造が存在しているのに、わざわざ小さい金銅仏を安置したことにしています。


巨岩がそびえる石山。仏教流入とともに観音信仰が根付いた

じつは2002年、縁起にあるような小金銅仏が実際に発見されまして、ニュースになりました。
石山寺の現本尊の背面にあった木製厨子から発見されています。
本堂内陣の裏側で公開されていて、私も見てきました。

石山寺のホームページでも写真公開されているので、見てみてください。
https://www.ishiyamadera.or.jp/about/treasure

像高20~30cmくらいの、小金銅仏が4体。一体が如来で、のこり三体は観音菩薩像(お寺では『正倉院文書』の記述に従って「観世菩薩」と表記)です。
お寺の解説によると、天平時代の観音像のほかは、飛鳥時代の後期の古像です(最近はあまり「白鳳時代」と言わないみたいですね)。

まだ奈良の都ができる以前、飛鳥に藤原京ができたころの、約1335年くらい昔の像です。
この時代に特徴的な、ほがらかなお顔、シンプルな衣文、冠のデザインが三面頭飾(額と両耳の上に飾りが付く)がちゃんと揃っていて、一般の仏像ファンでも見分けがつくと思います。

この愛らしい小金銅仏こそ、創建当初の本尊なんじゃないかと思われています。
発見された厨子の銘文にも、縁起に書かれていた「往古の仏像」と思われると書かれているそうです(石山寺ホームページより)。

ここでもういちど、鎌倉時代に書かれた『石山寺縁起絵巻』の冒頭の文章を紹介しますと、

”本尊は二臂の如意輪六寸の金銅の像 聖徳太子二生のご本尊云々丈六の尊像を造て其御身に彼小像をこめたてまつる”

とあります。
注目は後半の文で、丈六の像に小像をこめたとあります(「如意輪」とあるのはこの時代すでに石山寺=如意輪の図式が強固にあったためで、発見された金銅仏は如意輪観音ではない)。

なので、今回紹介した小金銅仏を、大きな本尊の胎内仏として納入したということなのですね。
最初は旧像の塑像のなかへ、次いで現存の木像に納入したのでしょう。

つまり、我々が拝観した大きな像は、魂を入れる筐体でありまして、小金銅仏こそが「魂」なのでありました。

では、4体のうちのどれが本尊なのかというと、はっきりしません。
ただ、1体だけ如来像があるので、やっぱり本尊となるとこの如来像が一番しっくりきそうに思います。
「縁起」では、”聖徳太子二生”つまり聖徳太子の生まれ変わりといった文言があり、そうすると菩薩なのかとも思いますし、この辺は専門の先生方の研究を待ちたいと思います。

以上の事からも、石山寺の本尊は当初は「如意輪観音」と呼ばれるような姿ではなかったことが裏付けられました。

ただ、「縁起」には、本尊が聖徳太子二生とか、胎内に聖徳太子の像を入れたとか書かれてあり、聖徳太子のつながりが協調されています。

「縁起」が書かれた時代は鎌倉幕府の時代。石山寺はすっかり「如意輪観音の寺」として定着、そして聖徳太子信仰が大ブームだった時代です。

そんな中で、聖徳太子ゆかりの地である飛鳥、斑鳩がブーム、その地の古像がこぞって「如意輪観音」と呼ばれるようになっていくのですが、その話はまた近いうちにできればと思います。


それではここで一曲、聴いてください。
マイルス・デイヴィスで「プリンス・オブ・ダークネス」




(参考)
大本山 石山寺公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp





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神仏研究家・宮澤やすみのもう一つの側面が小唄師範。一門勢ぞろい




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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m