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秋篠寺・伎芸天の美の秘密に迫る その2-怨霊編-
”この祟りを鎮めるために天皇が勅命したのが、秋篠寺建立なのでした……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。先日配信した銀座蔦屋さんでのトーク。
テーマは「伎芸天」と秋篠寺で、今回はその後半のおはなしです。
本物の伎芸天像を3Dスキャンして造った、寸分違わぬ精巧な木造
仏像制作のイスムと蔦屋さんのコラボで、秋篠寺の伎芸天をそのままの形で複製した木造像ができあがり、その発表を兼ねたイベントでした。
ご一緒したのは、イラストレーターの田中ひろみさん、仏像大好き芸人のみほとけさん。
伎芸天のほほえみは、怨霊への慰撫か
伎芸天の魅力を語ったあと、ぼくのひとりトークの時間では、秋篠寺の創建について触れたんですけど、そのテーマは、
「秋篠寺 平城京怨霊封じ計画」
エヴァンゲリオンのテーマ曲を思いながら、物騒な話のほうへ急カーブを切ったのでした。
怨霊と言えば菅原道真が有名ですが、時代はそれより200年以上前のこと。
ときは奈良時代末期。
このころは、次の天皇を誰にするかの争いが絶えなかったそうです。
登場人物は、時の光仁天皇と、皇后であった井上(いのえ)内親王と皇太子である他戸(おさべ)親王。
そして第二夫人といいますか、皇后に次ぐ立場の奥さまである、高野新笠(たかののにいがさ)と息子の山部親王。
トーク資料より登場人物相関図
あるとき、井上内親王に悪いうわさが広がりました。
夫である光仁天皇を呪詛して命を狙ったといううわさが立てられ、さらに翌年は、光仁天皇のお姉様を呪詛したとのうわさが出ました。
反論のしようもなかったのでしょうか、井上内親王と他戸親王は流罪先で急死します。
井上さん、さぞかし悔しい思いだったことでしょう。
この後、うわさの首謀者とみられる藤原氏一派の人物が亡くなりました。周囲の人は、井上内親王の祟りと思ったようです。つまり井上さんは、日本の歴史にたくさん登場する「怨霊」のひとりとして認定されたのです。
そして、この祟りを鎮めるために天皇が勅命したのが、秋篠寺建立なのでした。
トーク動画より。銀座蔦屋書店の一室で濃ゆいトーク
この事件を経て、山部親王が即位し、桓武天皇になるんですけど、この方はもう平城京の腐敗に辟易したのか、長岡京から平安京へ遷都をした天皇として有名です。
最初は長岡京へ遷都したんだけど、そこで天皇の弟にあたる早良親王が天皇に反逆の罪を着せられ流罪先で死亡します。
その後、早良親王を推した藤原氏一派が急死しまして、これにより早良親王が怨霊とされます。
この、奈良朝二大怨霊である井上内親王と早良親王の魂鎮めを行ったのが、秋篠寺開山である善殊というお坊さんなのでした。
なんといいますか、二大怨霊よりも、藤原氏一派の暗躍をどうにかしろよと思いますけど(笑)、どうにもできない時代だったんでしょうか。
秋篠寺山門前には「八所御霊神社」という神社があります。
井上内親王、早良親王のほか、藤原弘嗣など奈良ゆかりの怨霊スーパースターたちの魂が祀られていて、
つまり、秋篠寺は、呪われた平城京長岡京の「後始末」の機能を任されたお寺だったのです。
これこそ、「平城京怨霊封じ計画」!(私が勝手に命名しました)
都を恐怖させた怨霊たちが、静かに鎮まる
そんなわたくしの秋篠寺怨霊トーク、貼り付けておきます。ぜひご覧ください。
途中から田中ひろみさんが加わって、世にいう「仏像ブーム」の実際と変遷を語ります。
今回の話は、拙著『仏像の光と闇』(水王舎・刊)にも詳しく書いています。興味あればどうぞ。
それでは最後に、聴いてください。
鬼束ちひろで「月光」
(参考)
銀座蔦屋書店 日本文化インスタグラム
https://www.instagram.com/ginza_tsutayabooks_jpculture/
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演
1.
【ひとりワロス Vol.1】
新型コロナで出番を失った宮澤やすみの、気ままなソロライブを配信。
仏像ソングとお江戸の小唄。
https://youtu.be/STd_bL6car8
2.
【小唄 in 神楽坂 2020】
今年で17周年を迎える、東京・神楽坂の秋の好例演奏会。
小唄師範である宮澤やすみと弟子一門の小唄演奏会です。
江戸文化の粋を集めた三味線音楽・小唄の入り口として、お楽しみください。
今年はYoutubeによる配信で、おうちで楽しんでいただけます。
詳細、チケット購入はこちら
↓↓↓
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/018uwy116d7wj.html
神仏研究家・宮澤やすみのもう一つの側面が小唄師範。一門勢ぞろい
3.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は石山寺の石を使った川原寺の復元
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。先日配信した銀座蔦屋さんでのトーク。
テーマは「伎芸天」と秋篠寺で、今回はその後半のおはなしです。
本物の伎芸天像を3Dスキャンして造った、寸分違わぬ精巧な木造
仏像制作のイスムと蔦屋さんのコラボで、秋篠寺の伎芸天をそのままの形で複製した木造像ができあがり、その発表を兼ねたイベントでした。
ご一緒したのは、イラストレーターの田中ひろみさん、仏像大好き芸人のみほとけさん。
伎芸天のほほえみは、怨霊への慰撫か
伎芸天の魅力を語ったあと、ぼくのひとりトークの時間では、秋篠寺の創建について触れたんですけど、そのテーマは、
「秋篠寺 平城京怨霊封じ計画」
エヴァンゲリオンのテーマ曲を思いながら、物騒な話のほうへ急カーブを切ったのでした。
怨霊と言えば菅原道真が有名ですが、時代はそれより200年以上前のこと。
ときは奈良時代末期。
このころは、次の天皇を誰にするかの争いが絶えなかったそうです。
登場人物は、時の光仁天皇と、皇后であった井上(いのえ)内親王と皇太子である他戸(おさべ)親王。
そして第二夫人といいますか、皇后に次ぐ立場の奥さまである、高野新笠(たかののにいがさ)と息子の山部親王。
トーク資料より登場人物相関図
あるとき、井上内親王に悪いうわさが広がりました。
夫である光仁天皇を呪詛して命を狙ったといううわさが立てられ、さらに翌年は、光仁天皇のお姉様を呪詛したとのうわさが出ました。
反論のしようもなかったのでしょうか、井上内親王と他戸親王は流罪先で急死します。
井上さん、さぞかし悔しい思いだったことでしょう。
この後、うわさの首謀者とみられる藤原氏一派の人物が亡くなりました。周囲の人は、井上内親王の祟りと思ったようです。つまり井上さんは、日本の歴史にたくさん登場する「怨霊」のひとりとして認定されたのです。
そして、この祟りを鎮めるために天皇が勅命したのが、秋篠寺建立なのでした。
トーク動画より。銀座蔦屋書店の一室で濃ゆいトーク
この事件を経て、山部親王が即位し、桓武天皇になるんですけど、この方はもう平城京の腐敗に辟易したのか、長岡京から平安京へ遷都をした天皇として有名です。
最初は長岡京へ遷都したんだけど、そこで天皇の弟にあたる早良親王が天皇に反逆の罪を着せられ流罪先で死亡します。
その後、早良親王を推した藤原氏一派が急死しまして、これにより早良親王が怨霊とされます。
この、奈良朝二大怨霊である井上内親王と早良親王の魂鎮めを行ったのが、秋篠寺開山である善殊というお坊さんなのでした。
なんといいますか、二大怨霊よりも、藤原氏一派の暗躍をどうにかしろよと思いますけど(笑)、どうにもできない時代だったんでしょうか。
秋篠寺山門前には「八所御霊神社」という神社があります。
井上内親王、早良親王のほか、藤原弘嗣など奈良ゆかりの怨霊スーパースターたちの魂が祀られていて、
つまり、秋篠寺は、呪われた平城京長岡京の「後始末」の機能を任されたお寺だったのです。
これこそ、「平城京怨霊封じ計画」!(私が勝手に命名しました)
都を恐怖させた怨霊たちが、静かに鎮まる
そんなわたくしの秋篠寺怨霊トーク、貼り付けておきます。ぜひご覧ください。
途中から田中ひろみさんが加わって、世にいう「仏像ブーム」の実際と変遷を語ります。
今回の話は、拙著『仏像の光と闇』(水王舎・刊)にも詳しく書いています。興味あればどうぞ。
それでは最後に、聴いてください。
鬼束ちひろで「月光」
(参考)
銀座蔦屋書店 日本文化インスタグラム
https://www.instagram.com/ginza_tsutayabooks_jpculture/
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演
1.
【ひとりワロス Vol.1】
新型コロナで出番を失った宮澤やすみの、気ままなソロライブを配信。
仏像ソングとお江戸の小唄。
https://youtu.be/STd_bL6car8
2.
【小唄 in 神楽坂 2020】
今年で17周年を迎える、東京・神楽坂の秋の好例演奏会。
小唄師範である宮澤やすみと弟子一門の小唄演奏会です。
江戸文化の粋を集めた三味線音楽・小唄の入り口として、お楽しみください。
今年はYoutubeによる配信で、おうちで楽しんでいただけます。
詳細、チケット購入はこちら
↓↓↓
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/018uwy116d7wj.html
神仏研究家・宮澤やすみのもう一つの側面が小唄師範。一門勢ぞろい
3.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景。手前の礎石は石山寺の石を使った川原寺の復元
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m