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「芸術」が最も幸せだった時代 ルドン-ロートレック展

”テクノロジーに飲み込まれる直前、「芸術」が、「芸術」として成立していた19世紀末がうらやましい……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。先日は自分の一門の演奏会をつつがなく終えて、ヘトヘトのクタクタになっている宮澤やすみです。
燃え尽き症候群にならないように気を付けながら気楽に冬を迎えたいと思います。


さて、コロナ禍で美術館も大打撃を被った今年ですが、秋から美術館界隈は再開をしています。

先日は、三菱一号館美術館「1894 Visions ルドン、ロートレック展」プレス内覧会に行ってきました。

写真は内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。

テーマは1894年。三菱一号館美術館が建てられた年にあたりますが、まさにこの時代の美術を振り返る展示になっています。

印象派が世に出た第一回印象派展が1874年のこと。そこから20年後の1894年は、パリの文化が爛熟していた頃でした。


賑やかさと猥雑さが入り混じるロートレックのポスター

ロートレックの描いた、盛り場ムーラン・ルージュのポスターが話題をさらいます。

今回の展示では、イヤホンガイドで同時代の音楽を聴きながら鑑賞できるのがよかったです。

オッフェンバック作曲「天国と地獄」のドンチャカしたリズムを聴きながら、ロートレックのポスターを見ると、ムーラン・ルージュの喧騒が目の前に繰り広げられるようでした。

こちらは当時の人気歌手、アリスティド・ブリュアン。なんとブリュアン本人の歌がレコードに残っていて、それも聴けました。


本人の歌声を聴きながら、人気歌手アリスティド・ブリュアンに向き合う

次の展示では、がらりと雰囲気が変わり、ルドンの幻想的な絵画が並びます。
黒と白で描かれた悪夢のような絵が、のちのシュル・レアリスムの源流になっていきます。


”黒と白の画家”と呼ばれるルドンの作品

大きな目が暗闇に浮かぶ絵がよく知られますが、今回のルドンは少し違う。
ルドンのカラー作品(というか色のある絵画)が圧倒的存在感を放ちます。しかも、驚くほど大きなものでした。
「グランブーケ(大きな花束)」と題された絵は、当時の貴族による発注で、ダイニングルームを飾るものだったそうです。


ルドンの”色彩の開花”実際の美しさと大きさを現場で感じてほしい

ブルーを基調とした鮮やかな花々がきれいです。そして何と言っても大きさが、写真では伝わらない。これはぜひ展示室でじっくり鑑賞していただきたいです。


この時代は、民衆はポスター、お金持ちは絵画を欲した時代。
そこには、キャバレーの賑やかな演奏や、サロンでのピアノ曲などの音楽も合わせて楽しまれました。ドビュッシーが活躍したのもこの時代です。

芸術が、市民の娯楽としてちゃんと需要があり、受け入れられていたのです。いい時代ですね。
現代は、アートは社会的メッセージを込めた啓発的なものばかりになり、音楽はYoutubeとSpotifyで垂れ流し。

芸術にとって、テクノロジーは諸刃の刃。印刷、写真という最新テクノロジーが、絵画を変えていきます。絵画の進化の端緒が見えて、近代美術史の点でも興味深い時代です。
この後、写真が動く「映画」が出てきて、現代につながっていくわけです。

ちなみに音楽も、レコードで便利になったと思ったら、現代はネットストリーミングで、音楽業界が根底から変わってしまっています。

「芸術」が、「芸術」として成立していた19世紀末がうらやましい。テクノロジーに飲み込まれる直前の、最後の輝き、ともいえるでしょうか。


仏像ファンならピンとくる?ゴーギャンの彫刻作品《真珠のついた偶像》1892-93年 ブロンズ 公益財団法人ひろしま美術館蔵

今回の展示は、解説に「芸術」という言葉が使われ、「アート」とか「美術」という言葉が一切なかったところにも好感が持てました。ぜひ音楽とともに「芸術」の楽しさに触れてほしいです。


それでは聴いてください。
タイス作曲、マスネの瞑想曲(1928年録音)。



【1894 Visions ルドン、ロートレック展】
2020年10月24日(土)~2021年1月17日(日)
https://mimt.jp/visions/


●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演

1.
【ひとりワロス Vol.2】
新型コロナで出番を失った宮澤やすみの、気ままなソロライブを配信。
三味線で洋楽カバーに懐かしポっプ。お江戸の小唄も。
11月11日(水)19:15~生配信。
※開演後いつでも見られます
https://youtu.be/ZZvZfcNx1Kk



2.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中

「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
  ↓↓↓
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アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m