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なぜお寺は南を向く?星信仰と方位のヒミツ
”「なんで、天子は南面するんだろう?」というギモン……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。アルバム『シャミセン・ディストピア』MV(ミュージック・ビデオ)を作ってもらうことになった宮澤やすみです。昭和初期の廓建築(都有形文化財)で撮影をします。
さて、ここしばらくは九星とか十二支とか、暦と方位のシステムに注目してきました。
で、方位と言いますと、昔の都や寺院では、かなり方位を気にして造営されてきたというのは有名な話。
いわゆる風水にもとづいて、その時その場所にベストな配置を計算して作っていたようです。
いちばんよく知られているのは、南を正面にするということではないでしょうか。
平城京や平安京は、都の玄関口が真南にありました。
主要な建築物も、だいたいは南を正面としています。
奈良・薬師寺の航空写真。建物が一直線に真南(画面下)を向いて造営されている
これの理由で、よく見聞きするのは、
「”天子南面す”という中国の故事にもとづいて」
という文言じゃないでしょうか。
かいつまんで言うと、偉い人は南を向くべきというような事なんですけど、これもなんだか、煙に巻かれたような気分になりますよね。
いつも私が持ちがちな”素朴なギモン”が頭から離れなくなります。
「なんで、天子は南面するんだろう?」
というギモンなんです。
古寺や古代史の勉強をしていた学生時代から、腑に落ちないでおりました。
大人になった現在のわたくしは、このギモンは解消しておりまして、
その回答は・・・、
「星を背負っているから~!」
と、NHKのチコちゃん風に言うとこんな感じになります。ちゃんと説明します。
南面(南に向いている)ということは、背後は北になります。
注目すべきは北だったんです。
北の方向にある、大事な星と言えば、北極星です。
この北極星が、古代中国では宇宙を統べる大いなる存在であり、「天帝」という神が棲むとされました。
中国の皇帝(天子)は、天帝の代弁者みたいな存在。だから北極星を背後に、人民を統べるのでありました。
仏教寺院では、衆生に功徳をもたらす大いなる仏がこの立場にあり、やはり北を背負って南を向きます。
だから、お寺の正門は「南大門」で、南にありますね。
東大寺南大門。正門では金剛力士が睨みを効かせる
例外もありますが、古い大寺院ではこのスタイルが踏襲されています。
だから、初めて訪れるお寺で入口がわからない場合、まず南側をめざすという「あるあるエピソード」は仏像ファンの間ではよく知られた話でしょう。
ただ、奈良の薬師寺みたいに駅との位置関係から北側を拝観入口する例もありますけどね。南側には南大門焼失後に移築された南門(重要文化財)があります。ただし、南門は閉じられており人の出入りは別の場所からになります。
2016年撮影の薬師寺南入口。右端に少し写っているのが重要文化財の南門
写真家の三好和義さんが、北極星を背負う東大寺大仏殿の写真をダイナミックに撮影されていて、これを見ると今回の話が一目瞭然だと思います。
しかし、勝手に載せるのは控えたいので、こちら↓をご覧ください。
よみがえった天平の楽園 東大寺で三好和義さん写真展(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180625004366.html
寺社を旅する時は、方角に注意しながら歩くといろいろなことが見えてきて面白いですよ。
それでは聴いてください。
八神純子で「ポーラー・スター」
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
2.
宮澤やすみ・レコ発配信ライブ
【和楽器と舞踊で80sミュージックと小唄の融合ライブ!】
2021年2月23日(火祝)16時からツイキャスにて配信。
https://ja.twitcasting.tv/yasumi_m/shopcart/52727?hl=ja
(3月9日まで視聴できます)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。アルバム『シャミセン・ディストピア』MV(ミュージック・ビデオ)を作ってもらうことになった宮澤やすみです。昭和初期の廓建築(都有形文化財)で撮影をします。
さて、ここしばらくは九星とか十二支とか、暦と方位のシステムに注目してきました。
で、方位と言いますと、昔の都や寺院では、かなり方位を気にして造営されてきたというのは有名な話。
いわゆる風水にもとづいて、その時その場所にベストな配置を計算して作っていたようです。
いちばんよく知られているのは、南を正面にするということではないでしょうか。
平城京や平安京は、都の玄関口が真南にありました。
主要な建築物も、だいたいは南を正面としています。
奈良・薬師寺の航空写真。建物が一直線に真南(画面下)を向いて造営されている
これの理由で、よく見聞きするのは、
「”天子南面す”という中国の故事にもとづいて」
という文言じゃないでしょうか。
かいつまんで言うと、偉い人は南を向くべきというような事なんですけど、これもなんだか、煙に巻かれたような気分になりますよね。
いつも私が持ちがちな”素朴なギモン”が頭から離れなくなります。
「なんで、天子は南面するんだろう?」
というギモンなんです。
古寺や古代史の勉強をしていた学生時代から、腑に落ちないでおりました。
大人になった現在のわたくしは、このギモンは解消しておりまして、
その回答は・・・、
「星を背負っているから~!」
と、NHKのチコちゃん風に言うとこんな感じになります。ちゃんと説明します。
南面(南に向いている)ということは、背後は北になります。
注目すべきは北だったんです。
北の方向にある、大事な星と言えば、北極星です。
この北極星が、古代中国では宇宙を統べる大いなる存在であり、「天帝」という神が棲むとされました。
中国の皇帝(天子)は、天帝の代弁者みたいな存在。だから北極星を背後に、人民を統べるのでありました。
仏教寺院では、衆生に功徳をもたらす大いなる仏がこの立場にあり、やはり北を背負って南を向きます。
だから、お寺の正門は「南大門」で、南にありますね。
東大寺南大門。正門では金剛力士が睨みを効かせる
例外もありますが、古い大寺院ではこのスタイルが踏襲されています。
だから、初めて訪れるお寺で入口がわからない場合、まず南側をめざすという「あるあるエピソード」は仏像ファンの間ではよく知られた話でしょう。
ただ、奈良の薬師寺みたいに駅との位置関係から北側を拝観入口する例もありますけどね。南側には南大門焼失後に移築された南門(重要文化財)があります。ただし、南門は閉じられており人の出入りは別の場所からになります。
2016年撮影の薬師寺南入口。右端に少し写っているのが重要文化財の南門
写真家の三好和義さんが、北極星を背負う東大寺大仏殿の写真をダイナミックに撮影されていて、これを見ると今回の話が一目瞭然だと思います。
しかし、勝手に載せるのは控えたいので、こちら↓をご覧ください。
よみがえった天平の楽園 東大寺で三好和義さん写真展(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180625004366.html
寺社を旅する時は、方角に注意しながら歩くといろいろなことが見えてきて面白いですよ。
それでは聴いてください。
八神純子で「ポーラー・スター」
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
2.
宮澤やすみ・レコ発配信ライブ
【和楽器と舞踊で80sミュージックと小唄の融合ライブ!】
2021年2月23日(火祝)16時からツイキャスにて配信。
https://ja.twitcasting.tv/yasumi_m/shopcart/52727?hl=ja
(3月9日まで視聴できます)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m