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モンドリアンが描いた”曼荼羅”-「モンドリアン展」と神智学
”この絵こそ、彼にとって究極の「宗教画」だったのかもしれません……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仏像を歌う僕のバンド”The Buttz(ザ・ブッツ)”が活動再開しまして、スタジオ入りしました。また仲間たちと音を鳴らす日が来てうれしい限りです。
4月10日夜に、配信でライブをお届けする予定です。ご注目ください。
さて、先日は、東京新宿・SOMPO美術館で開幕した「モンドリアン展」内覧会に伺いました。
モンドリアンは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、独自のスタイルでの絵画を模索した人です。
ポスターやチラシにあるように、赤、黄、青などの四角形を黒い線でくっきりと囲んだ作品が知られます。
これ、当時見た人も「なんじゃこりゃ?」「これが絵?」って思ったでしょうね。
モンドリアン展エントランス(SOMPO美術館)
モンドリアンの哲学が到達した、”純粋芸術”といわれます。
こういう美術は、仏像ファンはどのような印象をもつでしょうか。もしかしたら、あんまり興味ないでしょうか。
でも、
「モンドリアンが描いたのは曼荼羅だった」
と言ったら、どうでしょう? 少しは興味でてきましたか?
モンドリアンといえばコレ。有名な作風が並ぶ
モンドリアン作品=曼荼羅というのは、あながちデタラメな事ではなくて、彼の思想をさぐってみると、うっすらとですが関連が見えてきます。
キーワードは「神智学」。
神智学は、検索するだけでもいろいろ出てきますが、ものすごくざっくり言うと、モンドリアンの時代に起きた新興宗教みたいなものです。いや、宗教とはうたってないのですが、宇宙の根源を科学的に霊的にさぐる「秘教哲学の体系」(図録解説より)だそうです。その考え方のベースにインド哲学や仏教があり、世紀末西洋文化に疑問をもつ当時のヨーロッパ知識層には受けたんじゃないでしょうか。
モンドリアンは、若いころは印象派の模倣から始まって、でも「こういうのじゃない」という思いで自分のスタイルを磨いていきます。
そんなころに地元オランダの神智学協会に入会。その後、キュビズムにのめり込むも、自身の絵画探求は続きます。
有名な作風に到達するまでの試行錯誤が見られる
その神智学の思想から生まれたのが、あの四角と線の絵画だったのです。
あの絵は、美術の専門家によって深い解釈がなされます。
四角と線のせめぎあう関係性。はじっこにつつましく配置された黄色も、その存在のおかげで画面全体のバランスを保つ要素になっています。
お互いの関係性によって要素が存在しているという、仏教的には「縁起」と言い換えてもいいような思想を、モンドリアンの絵から読み取ることができます。
同時代のデザインも同時に鑑賞できる
一枚の絵は単純に見えますが、たとえば、よく見ると黒い線が画面のフチまで伸びず、寸前で止まっています。これによって、画面の外にもイメージが膨らむ効果を生み出しているそう。
つまり、広大な世界の一部分を切り取って、さまざまな要素の「縁」を描いたのが、モンドリアンの作品、と言えなくもないですね。
また、色に注目すると、モンドリアンは青、赤、黄を三原色として、グレーと黒を交えて描きました。
「色の三原色」といえば、一般的にはCMY。つまりシアン(青緑)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄)なんですが、モンドリアンの青、赤、黄はどこからきたのか。
これもじつは「神智学」がベースでして、モンドリアンが師と仰いだM.H.J. スフーンマーケルスという学者の言葉からきているそうです(図録解説:五十嵐卓「モンドリアンと日本」より)。ほかにも、水平や垂直に対する概念など、スフーンマーケルスの影響が色濃く作品に表れています。
モンドリアンは、今風な言い方をすると、かなり東洋スピリチュアルにハマっていた人だったようです。
厳格なカルヴィニストだったという父への反発もあり、インド哲学や神智学に深く関わったモンドリアン。
あの絵は、一見すると感情や情緒的なものを排除した冷たい作風に見えますが、じつはその内面に東洋精神世界のどろどろした熱情が流れいています。
この絵こそ、彼にとって究極の「宗教画」だったのかもしれません。
それでは聴いてください。
映画「ムトゥ踊るマハラジャ」より「クルヴァーリ村で」
【生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて】
2021年3月23日〜6月6日
月曜休館(5月3日は開館)
SOMPO美術館
詳細は
https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/mondrian/
※2021年7月10日から豊田市美術館に巡回します
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演(配信)
仏像バンド”The Buttz(ザ・ブッツ)”復活記念配信ライブ
春のお寺をめぐり、新生メンバーでの仏像ソングをお届けします。
4月10日(土)19:30から(いつでも視聴可)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa
2.
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
3.
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仏像を歌う僕のバンド”The Buttz(ザ・ブッツ)”が活動再開しまして、スタジオ入りしました。また仲間たちと音を鳴らす日が来てうれしい限りです。
4月10日夜に、配信でライブをお届けする予定です。ご注目ください。
さて、先日は、東京新宿・SOMPO美術館で開幕した「モンドリアン展」内覧会に伺いました。
モンドリアンは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、独自のスタイルでの絵画を模索した人です。
ポスターやチラシにあるように、赤、黄、青などの四角形を黒い線でくっきりと囲んだ作品が知られます。
これ、当時見た人も「なんじゃこりゃ?」「これが絵?」って思ったでしょうね。
モンドリアン展エントランス(SOMPO美術館)
モンドリアンの哲学が到達した、”純粋芸術”といわれます。
こういう美術は、仏像ファンはどのような印象をもつでしょうか。もしかしたら、あんまり興味ないでしょうか。
でも、
「モンドリアンが描いたのは曼荼羅だった」
と言ったら、どうでしょう? 少しは興味でてきましたか?
モンドリアンといえばコレ。有名な作風が並ぶ
モンドリアン作品=曼荼羅というのは、あながちデタラメな事ではなくて、彼の思想をさぐってみると、うっすらとですが関連が見えてきます。
キーワードは「神智学」。
神智学は、検索するだけでもいろいろ出てきますが、ものすごくざっくり言うと、モンドリアンの時代に起きた新興宗教みたいなものです。いや、宗教とはうたってないのですが、宇宙の根源を科学的に霊的にさぐる「秘教哲学の体系」(図録解説より)だそうです。その考え方のベースにインド哲学や仏教があり、世紀末西洋文化に疑問をもつ当時のヨーロッパ知識層には受けたんじゃないでしょうか。
モンドリアンは、若いころは印象派の模倣から始まって、でも「こういうのじゃない」という思いで自分のスタイルを磨いていきます。
そんなころに地元オランダの神智学協会に入会。その後、キュビズムにのめり込むも、自身の絵画探求は続きます。
有名な作風に到達するまでの試行錯誤が見られる
その神智学の思想から生まれたのが、あの四角と線の絵画だったのです。
あの絵は、美術の専門家によって深い解釈がなされます。
四角と線のせめぎあう関係性。はじっこにつつましく配置された黄色も、その存在のおかげで画面全体のバランスを保つ要素になっています。
お互いの関係性によって要素が存在しているという、仏教的には「縁起」と言い換えてもいいような思想を、モンドリアンの絵から読み取ることができます。
同時代のデザインも同時に鑑賞できる
一枚の絵は単純に見えますが、たとえば、よく見ると黒い線が画面のフチまで伸びず、寸前で止まっています。これによって、画面の外にもイメージが膨らむ効果を生み出しているそう。
つまり、広大な世界の一部分を切り取って、さまざまな要素の「縁」を描いたのが、モンドリアンの作品、と言えなくもないですね。
また、色に注目すると、モンドリアンは青、赤、黄を三原色として、グレーと黒を交えて描きました。
「色の三原色」といえば、一般的にはCMY。つまりシアン(青緑)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄)なんですが、モンドリアンの青、赤、黄はどこからきたのか。
これもじつは「神智学」がベースでして、モンドリアンが師と仰いだM.H.J. スフーンマーケルスという学者の言葉からきているそうです(図録解説:五十嵐卓「モンドリアンと日本」より)。ほかにも、水平や垂直に対する概念など、スフーンマーケルスの影響が色濃く作品に表れています。
モンドリアンは、今風な言い方をすると、かなり東洋スピリチュアルにハマっていた人だったようです。
厳格なカルヴィニストだったという父への反発もあり、インド哲学や神智学に深く関わったモンドリアン。
あの絵は、一見すると感情や情緒的なものを排除した冷たい作風に見えますが、じつはその内面に東洋精神世界のどろどろした熱情が流れいています。
この絵こそ、彼にとって究極の「宗教画」だったのかもしれません。
それでは聴いてください。
映画「ムトゥ踊るマハラジャ」より「クルヴァーリ村で」
【生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて】
2021年3月23日〜6月6日
月曜休館(5月3日は開館)
SOMPO美術館
詳細は
https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/mondrian/
※2021年7月10日から豊田市美術館に巡回します
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演(配信)
仏像バンド”The Buttz(ザ・ブッツ)”復活記念配信ライブ
春のお寺をめぐり、新生メンバーでの仏像ソングをお届けします。
4月10日(土)19:30から(いつでも視聴可)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa
2.
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
3.
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m