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浜松・ナゾの巨石群へ 天白磐座遺跡
”巨石をあおぎみながら、古代の人が一生懸命祈っている姿を想像すると……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。東京は緊急事態宣言下にあり、僕のソロライブは客入れを断念し配信で実施することになりました。なので遠方の方もご覧ください。
そんな中、先日訪れた静岡県・浜松。美術館の特別展「みほとけのキセキ」と並んで楽しみだったのが天白磐座遺跡でした。
わたくし、こういう巨石祭祀とかそういうのもけっこう好きなもので、朝早く起きて行って参りました。
ここは浜名湖の北側。引佐(いなさ)町。井伊家の氏神である渭伊神社の、本殿裏の「薬師山」にあるのが天白磐座遺跡です。
薬師山といっても、ちょっとした小山で、すぐ上ることができます。なぜ「薬師」なのかわかりませんでしたが、薬師さんの仏像はありませんでした。

渭伊神社本殿脇の道を上ります
見上げるような巨石がふたつ、どーんと屹立していて、そこに注連縄が結ばれています。
写真手前の石が高さ約7メートルとのこと。

ふたつの巨石を中心に大小の石が絶妙に配置されている
周辺もごつごつとした石が点在しています。

二つの大岩の前にある石が祭壇のよう
この巨大な石がなぜここにあるのか、まったくわかりません。静岡の観光情報や巨石マニアさんのサイトなどを見ると、みなさん共通して「自然の造形とは思えない、見事なバランスの巨石配置」と言ってます。実際に見た僕もそう思います。しかし運び入れるには巨大すぎるし、でも自然のまんまとも思えない、まったく謎であります。
今では大木が巨石の前に生えていますが、この祭祀場が造られた当初は生えてなかったはずで、それだけ長い長い年月が経ったことを示しています。

筆者との大きさの比較。この画面手前側の地面から古墳時代の遺物が出土した
昭和の頃1980年代には遺跡として認識され、平成元年の発掘調査で発見がありました。
古くは4世紀後半つまり古墳時代の前半にあたる時代の鉄矛や勾玉が出土したそうです。
さらに12世紀平安時代に埋められた経筒や、13世紀鎌倉時代までに至る遺物が出土しており、じつに長い間、ここが祭祀の場所だったことがわかっています。
さらに、ここが「おがみ所」と呼ばれていたという記録があり、そのことから、今でこそ神が降りる「磐座」と呼ばれるが、本来は遠くの山を遥拝する場所だったのでは、という説もあるそうです。
巨石そのものを拝むんじゃなくて、遠くに見える山を拝むという信仰。仏像ファンも三輪山信仰は聞いたことあるかと思いますが(下記リンク参照)、その信仰形態がここにもあったという話です。

両巨石の間に小さな祠。この背後のあたりで平安時代の経塚が出土
いずれにしても、こういう昔の祭祀場って、ちょっとワクワクしちゃいますよね。
起源も不明、それぞれの石の詳細も不明。すべてが謎に包まれたまま、というのもいいじゃないですか。
巨石をあおぎみながら、古代の人が一生懸命祈っている姿を想像すると楽しいです。

注連縄がかけられたのは、祭祀場と判明して以降か
この薬師山と渭伊神社は鬱蒼とした森に囲まれていて、すぐ脇を清流が流れていて、とても気持ちのいい場所です。
ぼく自身は、あまり「波動」だとか「浄化」だとかそういうことは言わないタイプの人間ですが、たしかに心地よい空間ではありました。
境内で佇んでいると、突然、
「こんにちは」
と男性に声を掛けられて、
「ここいいところでしょ。最近はコロナでさっぱり人が減ったけどね」。
大河ドラマ「おんな城主直虎」のときは遠方からの参拝が絶えなかったそうです。
神社すぐ脇に住んでいるとのことでしたが、ひょっとして、本当はここの神様が地元民の恰好をして現れたんじゃないか? なんて妄想を広げてしまうような、ちょっと神秘的な空間でありました。
Facebookもやってるとおっしゃっていましたが、もしここを読まれたら連絡ください。
毎回の記事末動画も、天白磐座遺跡にします。
大きすぎて写真に収まりきらなかったので、動画でご覧ください。

天竜浜名湖鉄道「金指」駅もいい雰囲気。鉄道ファンにもうれしい旅
(参考過去記事)
初の県外公開 特別展「国宝 聖林寺十一面観音-三輪山信仰のみほとけ」展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200303-2/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
●ネット試聴:
5/1(土)20:00 Youtube配信(有料)
ご試聴:https://youtu.be/b1z2MOeThtA
お支払:http://yasumimiyazawa.com/donation.html
※ネット決済のほか振込・振替もご案内しています。
会場となる飲食店の救済もありご協力お願いします。
フライヤーPDF
2.(アルバムCD,ダウンロード)
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
3.(著書)
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。東京は緊急事態宣言下にあり、僕のソロライブは客入れを断念し配信で実施することになりました。なので遠方の方もご覧ください。
そんな中、先日訪れた静岡県・浜松。美術館の特別展「みほとけのキセキ」と並んで楽しみだったのが天白磐座遺跡でした。
わたくし、こういう巨石祭祀とかそういうのもけっこう好きなもので、朝早く起きて行って参りました。
ここは浜名湖の北側。引佐(いなさ)町。井伊家の氏神である渭伊神社の、本殿裏の「薬師山」にあるのが天白磐座遺跡です。
薬師山といっても、ちょっとした小山で、すぐ上ることができます。なぜ「薬師」なのかわかりませんでしたが、薬師さんの仏像はありませんでした。

渭伊神社本殿脇の道を上ります
見上げるような巨石がふたつ、どーんと屹立していて、そこに注連縄が結ばれています。
写真手前の石が高さ約7メートルとのこと。

ふたつの巨石を中心に大小の石が絶妙に配置されている
周辺もごつごつとした石が点在しています。

二つの大岩の前にある石が祭壇のよう
この巨大な石がなぜここにあるのか、まったくわかりません。静岡の観光情報や巨石マニアさんのサイトなどを見ると、みなさん共通して「自然の造形とは思えない、見事なバランスの巨石配置」と言ってます。実際に見た僕もそう思います。しかし運び入れるには巨大すぎるし、でも自然のまんまとも思えない、まったく謎であります。
今では大木が巨石の前に生えていますが、この祭祀場が造られた当初は生えてなかったはずで、それだけ長い長い年月が経ったことを示しています。

筆者との大きさの比較。この画面手前側の地面から古墳時代の遺物が出土した
昭和の頃1980年代には遺跡として認識され、平成元年の発掘調査で発見がありました。
古くは4世紀後半つまり古墳時代の前半にあたる時代の鉄矛や勾玉が出土したそうです。
さらに12世紀平安時代に埋められた経筒や、13世紀鎌倉時代までに至る遺物が出土しており、じつに長い間、ここが祭祀の場所だったことがわかっています。
さらに、ここが「おがみ所」と呼ばれていたという記録があり、そのことから、今でこそ神が降りる「磐座」と呼ばれるが、本来は遠くの山を遥拝する場所だったのでは、という説もあるそうです。
巨石そのものを拝むんじゃなくて、遠くに見える山を拝むという信仰。仏像ファンも三輪山信仰は聞いたことあるかと思いますが(下記リンク参照)、その信仰形態がここにもあったという話です。

両巨石の間に小さな祠。この背後のあたりで平安時代の経塚が出土
いずれにしても、こういう昔の祭祀場って、ちょっとワクワクしちゃいますよね。
起源も不明、それぞれの石の詳細も不明。すべてが謎に包まれたまま、というのもいいじゃないですか。
巨石をあおぎみながら、古代の人が一生懸命祈っている姿を想像すると楽しいです。

注連縄がかけられたのは、祭祀場と判明して以降か
この薬師山と渭伊神社は鬱蒼とした森に囲まれていて、すぐ脇を清流が流れていて、とても気持ちのいい場所です。
ぼく自身は、あまり「波動」だとか「浄化」だとかそういうことは言わないタイプの人間ですが、たしかに心地よい空間ではありました。
境内で佇んでいると、突然、
「こんにちは」
と男性に声を掛けられて、
「ここいいところでしょ。最近はコロナでさっぱり人が減ったけどね」。
大河ドラマ「おんな城主直虎」のときは遠方からの参拝が絶えなかったそうです。
神社すぐ脇に住んでいるとのことでしたが、ひょっとして、本当はここの神様が地元民の恰好をして現れたんじゃないか? なんて妄想を広げてしまうような、ちょっと神秘的な空間でありました。
Facebookもやってるとおっしゃっていましたが、もしここを読まれたら連絡ください。
毎回の記事末動画も、天白磐座遺跡にします。
大きすぎて写真に収まりきらなかったので、動画でご覧ください。

天竜浜名湖鉄道「金指」駅もいい雰囲気。鉄道ファンにもうれしい旅
(参考過去記事)
初の県外公開 特別展「国宝 聖林寺十一面観音-三輪山信仰のみほとけ」展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200303-2/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
●ネット試聴:
5/1(土)20:00 Youtube配信(有料)
ご試聴:https://youtu.be/b1z2MOeThtA
お支払:http://yasumimiyazawa.com/donation.html
※ネット決済のほか振込・振替もご案内しています。
会場となる飲食店の救済もありご協力お願いします。
フライヤーPDF
2.(アルバムCD,ダウンロード)
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
3.(著書)
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m