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女性的な観音、女性としての観音

”女人救済や母性を強調した像が人気を博したことが、現代の我々に「観音=女性」のイメージを色濃くさせる要因に……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。コロナで仕事がすっかり無くなり、それをいいことにYoutube用の動画制作を進めている宮澤やすみです。興味ない人がほとんどでしょうが完成の折にはここでも発表するつもりでございます。

前回は観音が女性か男性かという話を書きましたが、そのつづきで、女性らしい姿をした観音像の作例を、手持ちの写真のなかからいくつか挙げてみます。

■神奈川(鎌倉)・東慶寺「水月観音」


有名な水月観音さんは、中国の美人画がモデルになっていて、観音を女性として表現する走りといえます。しかし、こちらの像のお顔はキリッとしたイケメンにも見えて、今流行りのアンドロジナス(中性)的な魅力があります。

■東京・魚籃寺「魚籃観音」


江戸の漁師たちは魚籃観音を信仰したそうで、高輪の魚籃観音さんがその代表格。
中国の伝説で、魚売りの娘が観音の化身だったというエピソードが元になっているので、これも女性としての観音像です。


■東京・西新井大師「如意輪観音」


境内の「女人堂」という小さなお堂にいる観音さん。女人救済の信仰を集めたお像はベールをかぶった女性的な姿。
一般的な六臂の如意輪観音とはまったくちがう姿で、足元に二童子もいます。これはおそらく慈母観音とか白衣観音とかそういう姿で造られたのが、後にお寺の事情で如意輪観音として信仰されたものと思われます。

■東京・西新井大師「ぼたん観音」


同じく西新井大師、境内入口付近の六角堂には通称「ぼたん観音」と呼ばれる美人の観音さんがいます。昭和後期の作。ぼたんと美人と観音のエピソードが奈良の長谷寺にあります。その話はまた後日。


■奈良・観音寺 十一面観音菩薩


こちらは国宝の奈良時代彫刻の傑作。奈良時代の観音像はすらりと伸びた腕や手指、腰のくびれなどプロポーションが女性的。しかし顔つきはいたって厳粛なお顔をしています。


■埼玉(秩父)・金昌寺「慈母観音」


前回もご紹介したこの像もあらためて。これはもう100%女性としての姿ですね。寛政4年(1792)の作だそうです。
女人救済信仰のなかから生まれたとか、キリシタンのマリア信仰が根底にあるとか言われます。たしかに、ここまでくるとラファエロあたりの聖母子像みたいに見えます。


こう見ると、観音像が女性の姿で表現されるのは、水月観音などの変化像が登場する頃からなんでしょうか。そして江戸時代にはすっかり観音=女性の図式が固まって、現代に通じているのではないかと思われます(はっきりと証拠はありませんが)。
鎌倉後期の水月観音は、設定は女性であるんだけど、まだ菩薩としての超人間的な性格が感じられます。性別については拝する人によって受け止め方がちがうでしょう。
やはり、江戸時代の女人救済や母性を強調した像が人気を博したことが、現代の我々に「観音=女性」のイメージを色濃くさせる要因になったのではないかと私は思っています。

このへん、体系的に調べた論文など見つけたら読んでみたいと思います。

でね、前回にも書いたけど、こういうややこしい話題をですね、仏像めぐりツアーのバスに乗り込む間際に、いたって気軽に「観音って女性なの?男性なの?」と聞いてこられるわけですね。気軽に話しかけてくれるのはうれしいんです。でも一言でスパッと答えられないワタクシは、当時まだまだ未熟なガイドでした。バスの狭い入口で、後ろに行列ができるのを気にしながらどう答えようかと四苦八苦していたのでありました。


それでは聴いてください。
一風堂で「すみれ September Love」




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6/26 Youtube配信(有料)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m