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背面や足先まで国宝を360度堪能。聖林寺十一面観音の魅力を再発見
”背中のなまめかしさたるや、その官能的な柔肌の表現に身もだえするほど……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。金曜のちいさなライブに向けて鋭意準備中の宮澤やすみです。緊急事態も解除されたし今回は少し軽快さを取り戻していきたいと思います。
さて、聖林寺です。ここ何回か、観音さんの話をしていたのは、今回の話への導入でもありました。
いよいよ東京国立博物館で、「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」が開幕となりました。
昨年、新型コロナの影響で延期され、一年越しでやっとの開幕。待ってましたよ。
報道内覧会では、みなさんもちょっと興奮気味のような雰囲気でした(写真は内覧会で許可を得て撮影したものです)。
報道陣のカメラに囲まれる、聖林寺十一面観音菩薩
本館の特別5室の中央に、聖林寺の十一面観音菩薩が立っています。
今からおよそ1300年前の仏像。「日本彫刻の最高傑作」とチラシに書いてある通り、想像を絶する美しさと神々しさをたたえるお像です。
和辻哲郎、白洲正子、みうらじゅん、各界の著名人が絶賛してやまない国宝で、写真画像でよく見る有名な仏像ですが、やはり実ブツを肉眼で見るのは格別でした。
まず写真と大きく異なるのは、顔の小ささ。
下から見上げるパースなので、頭がとても小さく見えます。
「こうしてみると、やっぱり小顔ですよね」と、聖林寺ご住職の倉本明佳さんもおっしゃってました。
こうして写真に撮ると、実物とのイメージが異なってしまうので、ぜひ会場で肉眼でどうぞ
また、今回の展示では、360度の全方向から見ることができます。そのため、お寺の収蔵庫で正面だけ拝していたのとは異なる発見がありました。
横から見ると、胸の厚みが予想以上にあり、ボリューム感のある体格に見えます。
頭の角度も想像以上に前に出ていて、衆生を見下ろすかっこうになっています。
背面の姿も今回初めて観ることができました。
これまで見られなかった背面が見られる貴重な機会
十一面観音菩薩は、頭上に10や11の小面が付くのが最大の特徴(聖林寺像の場合、菩薩面が10、頂上仏面が1)。
そのうち真後ろの面は「大笑面」といって、ニヒルな笑いをたたえているのが特徴です。
聖林寺の像は、その大笑面はすでに欠失。ただし、想像図が図録に載っています。
そして背中のなまめかしさたるや、その官能的な柔肌の表現に身もだえするほどです。金箔が剥げて黒漆の面がつややかに光るのでそう思うのかもしれません(背中の部分だけきれいに金箔が無く、意図的にはがされたのか、それとも過去の移座の際にはがれたのか?)。
さらに、今回の展示に際して足の姿勢に発見がありました。
この像は、両足をそろえて直立したものと思われていたのですが、今回展示のため搬出の際、ご住職自ら
「左足をわずかに前に出している」
姿勢をしていることに気付かれました。
今回の展示でそれを確認することができました。本当にちょっとだけの微妙なものですが、少しだけ左足が前に出ているように見えます。
全体のバランスのほか、細部もじっくりみてほしい
聖林寺像より後の時代である平安時代以降の十一面観音は、大胆に片足を前に出している姿勢が多いのですが、奈良時代作の聖林寺像はほぼ直立に見えます。
古い作例は両脚をそろえるのかな?と思っていたのが、やはりこの像もわずかながら動きのある姿勢が表現されていたのでした。
じつは、十一面観音の功徳を説いたお経『十一面観世音神呪経』に、十一面観音の像が修行者の前に出現するとき、「自然動揺」つまり”ゆれ動く”という記述があります。十一面観音の動的なポージングは、ここから来ていると思われます。
日本でかなり古い作例になる聖林寺の像は、ちゃんとお経の記述を、完璧なプロポーションとともに形にしていて、チラシに「最高傑作」と書かれるのはおおげさではないと思います。
コロナ禍のご時世、緊急事態でどうなるかと心配しましたが、東京に来られて本当によかったですね(展示詳細は下記)。
次回以降、この観音像の背景にある三輪山信仰などご紹介したいと思います。謎めく神仏習合のヒミツでございます。
鳥居と聖山がこの観音像のヒミツを解くカギなのだ
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「夕焼けの法華堂 La La La 仏像めぐり」
(展示概要)
特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」
東京国立博物館 本館特別5室
2021年6月22日(火)~9月12日(日)
月曜休館 詳細・予約は:
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/shorinji2020/
(当日券もありますが予約を薦めています)
(募集中)
聖林寺の観音堂(収蔵庫)改修のためのクラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/shorinji2021
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
6/25(金)18:00開演(休憩挟みながら20:00終了)
上野 御徒町 ワロスロード・カフェ
懐かしポップのカバーと江戸の小唄を、ゆるりと
飛沫の飛ばない静かなライブで疲れを癒してください
詳細はフライヤー
(配信あり)
6/26 Youtube配信(有料)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
2.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。金曜のちいさなライブに向けて鋭意準備中の宮澤やすみです。緊急事態も解除されたし今回は少し軽快さを取り戻していきたいと思います。
さて、聖林寺です。ここ何回か、観音さんの話をしていたのは、今回の話への導入でもありました。
いよいよ東京国立博物館で、「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」が開幕となりました。
昨年、新型コロナの影響で延期され、一年越しでやっとの開幕。待ってましたよ。
報道内覧会では、みなさんもちょっと興奮気味のような雰囲気でした(写真は内覧会で許可を得て撮影したものです)。
報道陣のカメラに囲まれる、聖林寺十一面観音菩薩
本館の特別5室の中央に、聖林寺の十一面観音菩薩が立っています。
今からおよそ1300年前の仏像。「日本彫刻の最高傑作」とチラシに書いてある通り、想像を絶する美しさと神々しさをたたえるお像です。
和辻哲郎、白洲正子、みうらじゅん、各界の著名人が絶賛してやまない国宝で、写真画像でよく見る有名な仏像ですが、やはり実ブツを肉眼で見るのは格別でした。
まず写真と大きく異なるのは、顔の小ささ。
下から見上げるパースなので、頭がとても小さく見えます。
「こうしてみると、やっぱり小顔ですよね」と、聖林寺ご住職の倉本明佳さんもおっしゃってました。
こうして写真に撮ると、実物とのイメージが異なってしまうので、ぜひ会場で肉眼でどうぞ
また、今回の展示では、360度の全方向から見ることができます。そのため、お寺の収蔵庫で正面だけ拝していたのとは異なる発見がありました。
横から見ると、胸の厚みが予想以上にあり、ボリューム感のある体格に見えます。
頭の角度も想像以上に前に出ていて、衆生を見下ろすかっこうになっています。
背面の姿も今回初めて観ることができました。
これまで見られなかった背面が見られる貴重な機会
十一面観音菩薩は、頭上に10や11の小面が付くのが最大の特徴(聖林寺像の場合、菩薩面が10、頂上仏面が1)。
そのうち真後ろの面は「大笑面」といって、ニヒルな笑いをたたえているのが特徴です。
聖林寺の像は、その大笑面はすでに欠失。ただし、想像図が図録に載っています。
そして背中のなまめかしさたるや、その官能的な柔肌の表現に身もだえするほどです。金箔が剥げて黒漆の面がつややかに光るのでそう思うのかもしれません(背中の部分だけきれいに金箔が無く、意図的にはがされたのか、それとも過去の移座の際にはがれたのか?)。
さらに、今回の展示に際して足の姿勢に発見がありました。
この像は、両足をそろえて直立したものと思われていたのですが、今回展示のため搬出の際、ご住職自ら
「左足をわずかに前に出している」
姿勢をしていることに気付かれました。
今回の展示でそれを確認することができました。本当にちょっとだけの微妙なものですが、少しだけ左足が前に出ているように見えます。
全体のバランスのほか、細部もじっくりみてほしい
聖林寺像より後の時代である平安時代以降の十一面観音は、大胆に片足を前に出している姿勢が多いのですが、奈良時代作の聖林寺像はほぼ直立に見えます。
古い作例は両脚をそろえるのかな?と思っていたのが、やはりこの像もわずかながら動きのある姿勢が表現されていたのでした。
じつは、十一面観音の功徳を説いたお経『十一面観世音神呪経』に、十一面観音の像が修行者の前に出現するとき、「自然動揺」つまり”ゆれ動く”という記述があります。十一面観音の動的なポージングは、ここから来ていると思われます。
日本でかなり古い作例になる聖林寺の像は、ちゃんとお経の記述を、完璧なプロポーションとともに形にしていて、チラシに「最高傑作」と書かれるのはおおげさではないと思います。
コロナ禍のご時世、緊急事態でどうなるかと心配しましたが、東京に来られて本当によかったですね(展示詳細は下記)。
次回以降、この観音像の背景にある三輪山信仰などご紹介したいと思います。謎めく神仏習合のヒミツでございます。
鳥居と聖山がこの観音像のヒミツを解くカギなのだ
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「夕焼けの法華堂 La La La 仏像めぐり」
(展示概要)
特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」
東京国立博物館 本館特別5室
2021年6月22日(火)~9月12日(日)
月曜休館 詳細・予約は:
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/shorinji2020/
(当日券もありますが予約を薦めています)
(募集中)
聖林寺の観音堂(収蔵庫)改修のためのクラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/shorinji2021
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
6/25(金)18:00開演(休憩挟みながら20:00終了)
上野 御徒町 ワロスロード・カフェ
懐かしポップのカバーと江戸の小唄を、ゆるりと
飛沫の飛ばない静かなライブで疲れを癒してください
詳細はフライヤー
(配信あり)
6/26 Youtube配信(有料)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
2.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m