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聖林寺十一面観音と三輪山をむすぶ「悔過」と「聖水」

”三週にわたって書いてきた「聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」関連コラムの最終回……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。

さて、3週にわたって書いてきた「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」の関連コラムの最終回です。

古代から信仰された三輪山をご神体とする大神神社(おおみわじんじゃ)。
そこに置かれた仏像が十一面観音だったという話です。


報道内覧会にて。三輪山、大神神社の鳥居、十一面観音が象徴的に重なる(許可を得て撮影)。そのほかの十一面観音写真は前記事にあります

手掛かりは、三輪山信仰は、疫病対策に関わってきたことがあります。
日本書紀や古事記でまずクローズアップされるのが、第10代崇神天皇の時代(実在した天皇の初代といわれる)の話。疫病で国民の半数が死に絶える事態に。その時、天皇に夢のお告げがあり、三輪山の神の子孫である大直禰子(おおたたねこ:文献により大田田根子、意富多多泥古と表記も)を探し出して、三輪山の神を丁重に祀れとのことでした。
なんとか探し出して大直禰子に神事を任せると、疫病が収まったという話です。


古墳時代の三輪山祭祀遺物も多数展示(報道内覧会で許可を得て撮影)

時は移って奈良時代、聖武天皇の時も疫病が大流行で、この時は奈良の大仏建立など、仏教に頼った時代です。
そのあとの孝謙天皇の時代にはいよいよ仏教が優位になり神と仏がサポートし合う神仏習合時代に入ります。このころから神社にお寺(神宮寺)を置くようになりました。
大神神社でも、境内に大神寺(おおみわでら)が建立され、そこに安置されたのが今回展示の十一面観音菩薩ということです。

大神神社では、大直禰子自身も「若宮」つまり御祭神の一柱とされます。大神寺ではその若宮を十一面観音と一緒に祀っていました。

疫病を退散させた大直禰子ゆかりのお寺に十一面観音。
はっきりと文献に記載されているわけではないのですが、十一面観音自身も、疫病退散の願いが込められているのではないかと思います。
というのは、十一面観音の信仰では、「悔過(けか)」といって、懺悔をして身の穢れを除去する法要が営まれます。
有名なところだと、東大寺二月堂の「お水取り」が代表例。
身の穢れを無くすことで、病の退散を祈るということです。

今回の特別展図録より、聖林寺住職・倉本明佳さんの言葉を引用します-
”疫病が逃れるためには、僧侶が悔過を修するための十一面観音を必要とし(中略)造像する必要があったのではないか”
-倉本明佳「聖林寺 十一面観音の造像と来歴」本展図録より引用)


展示では、観音のかかともよく見える(報道内覧会で許可を得て撮影)

大神神社に行くと、大きな拝殿の脇に「狭井神社(さいじんじゃ)」という神社があります。ここで湧く水が古くはこの水が病を治す「薬水」と信じられ、現在もこの水を汲んだり飲んだりする人が絶えません。私もその場で飲みました。おいしかったです。


狭井神社に涌く「薬水」

病を治す聖なる水は、神道的な意味ではツミケガレを清める水であり、「悔過」によって身を清めてくれる十一面観音は、手に水瓶をもち聖水をもたらします。

キリスト教での「ルルドの泉」などもあるように、信仰世界において、きれいな水は病魔退散のための重要なアイテムというわけですね。


さて、大神寺が、のちの鎌倉時代に大御輪寺(だいごりんじ)と改名され西大寺系の密教寺院になり、さらにのち、明治政府の神仏分離政策によって廃絶。建物はそのまま、大直禰子を祀る大直禰子神社となって現在に至ります。

神話の時代から、奈良時代、鎌倉時代、明治から現代へと、長い長い歴史にずっと三輪山は重要な場所であり、そのうちの1300年間、この十一面観音が関わって、令和の今まで現役で拝まれているという、時間のスケールが大きさ。いろいろあった十一面さんの前に立つと、日ごろの悩み事が本当に小さく見えて気持ちが軽くなります。


もとは大御輪寺にあった、日光・月光菩薩像(正暦寺蔵)と地蔵菩薩像(法隆寺蔵)

展示では、平安時代ごろから十一面観音と並んで安置されていた日光・月光菩薩と地蔵菩薩も一緒に展示。明治期にばらばらになった各像が一堂に再会する現場としても、感動の展示でございます。



それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「夕焼けの法華堂 La La La 仏像めぐり」



(展示概要)
特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」
東京国立博物館 本館特別5室
2021年6月22日(火)~9月12日(日)
月曜休館 詳細・予約は:
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/shorinji2020/
(当日券もありますが予約を薦めています)


(募集中)
聖林寺の観音堂(収蔵庫)改修のためのクラウドファンディング募集中です
https://readyfor.jp/projects/shorinji2021



(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
6/26以降いつでも Youtubeで視聴可能(投げ銭)
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


2.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m