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第253回 道鏡と孝謙－早稲田大学オープンカレッジにて
”道鏡役は、春風亭一之輔さんあたりでどうでしょう……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今週末のライブに向けて練習を重ねている宮澤やすみです。今回はベース＋三味線の２名という、歴史上類をみない異色の編成で実施。でもベースがあると演奏の芯が固まって、歌と三味線で乗っかる側としては助かってます。なかなか有効な組み合わせだと思います。
さて、先週は、この夏実施した早稲田大学オープンカレッジでの講座について書きました。
講座ではいつも、日本の歴史に則して仏像や仏教の動向をご紹介しているのですが、パワーポイントのスライド画像はこんな感じです……。
道鏡事件の解説スライド。だいぶ前に描いた絵ですがちょっとあしらうのに使い勝手がいい
これは「道鏡事件」のイメージ図です。
ずいぶん前、イラストの仕事をしていた頃に描いたゆるいマンガなんですけど、わりと重宝するのですね。
なんせ、道鏡本人の写真とかありませんのでね。
道鏡は、奈良時代後半に活躍した僧。
この時代の女性天皇、称徳（しょうとく）天皇との関係がよく知られています。
ただし、道鏡が最初に会った時は、天皇を一度退位していて、孝謙（こうけん）上皇という立場でした。
奈良の大仏造立で有名な聖武天皇の娘が孝謙上皇。
この方が病に倒れたとき、道鏡が病を治したところから二人の協調関係が結ばれます。
後の時代に、二人がただならぬ関係だったとかよく言われますが、脚色もあるので真相はわかりません。
なにしろ、仏教が国家運営の根幹におかれた奈良時代に、孝謙上皇がますます仏教に入れ込んで、この後出家し、ますます道鏡を自分のアドバイザーとして重用したというのは確かなようです。
いっぽう、かつてこの女性天皇を補佐していた藤原仲麻呂が、この頃には敵対勢力になっていて、孝謙・道鏡の体制に反乱を起こしますが、鎮圧されてますます孝謙・道鏡の権力が増大。孝謙上皇がもういちど天皇に即位して（重祚：ちょうそ といいます）、称徳天皇となります。２回天皇になるってすごいですね。しかも出家した身分での天皇即位というのもめずらしいことでした。
そんな中、奈良の都の海龍王寺で、仏舎利が出現した！というニュースが都に流れます。
これぞ仏法のミラクル！このタイミングで道鏡を法王という位を授けます。これで道鏡は、政治的にも宗教界でも国のトップに君臨しました。
その頃、九州・大宰府政庁には道鏡の弟、弓削浄人（ゆげのきよひと）が長官に就任しました。そのあとすぐ、有名な道鏡事件が起きるのであります。
時は神護景雲3年（769年）。
大宰府から、奈良にニュースが飛び込んできました。それが、九州の宇佐八幡からの託宣（神のお告げ）があったというのです。その内容は、
「道鏡を天皇の位にすれば天下泰平」
とのこと。
これを喜んだ称徳天皇ですが、すぐには信用しない人もいて事態は紛糾。
もういちど確認のため、あらためて八幡神の託宣を聞こうということで、派遣されたのが和気清麻呂（わけのきよまろ）という人物。現在、東京大手町に銅像が立ってます。
まあ、だいたい「神のお告げ」というのは、人間のさじ加減でどうにでもなると思うんですけどね。天皇側の人たちも、派閥の論理でいろいろ忖度して、道鏡を後押しする都合の良い結果を待っていたかもしれません。
ところが、和気清麻呂が持って帰った託宣は、
「天の日嗣には、必ず皇緒を立つ（天皇の跡継ぎは、必ず皇族の血筋のものを立てること）」
というものありました。
これで道鏡が失脚して、下野（いまの栃木県）で没するという、お話が道鏡事件の顛末でございます。おあとがよろしいようで。
奈良時代のこのころは、天皇の跡継ぎをどうするかで、権謀術数、足の引っ張り合いがひどかった時代で、独身女性で子がいない称徳天皇は、新しい天皇制を作りたかったのかもしれません。
しかし、実際はこのようなことで、血筋を辿って天皇制が続けられ、次の平安時代に移ることになります。跡継ぎのバックにはだいたい藤原氏がからんでいて、どんどん力を付けていきました。
ちょうど道鏡事件の直前には、藤原氏の守護社である春日大社が創建されていて、貴族たちの勢力争いが活発だったころなんですね。もし道鏡が本当に天皇になっていたら、歴史はどうなっていたでしょうね。
道鏡の即位を阻む託宣をもたらした和気清麻呂は、皇族の血統を守った人物として、明治政府に尊ばれ、東京・大手町の皇居に銅像が建てられて、近代天皇制の守護役にもなったのでした。
この連載「仏像ブツブツ」にはめずらしく、歴史の話でございました。
このへんのお話をNHK大河ドラマでやってくれたら絶対見るんですけどね。
道鏡役は、春風亭一之輔さんあたりでどうでしょう。
年明けにまた講座予定です。早稲田大学オープンカレッジで検索を
それでは聴いてください。
小田和正で「ラブストーリーは突然に」
（おしらせ）本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
9/17（金）18:30開演（19:40終了）
上野 御徒町 ワロスロード・カフェ
懐かしポップのカバーと江戸の小唄を、ゆるりと
感染防止対策準拠。飛沫の飛ばないとても静かなライブで疲れを癒してください
（イベント詳細ページ）
https://fb.me/e/1FFHGTYc9
［ネット視聴］
9/18 Youtube配信
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/watch?v=AyOmXD6RLko
２．
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
３．
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
（ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応）
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今週末のライブに向けて練習を重ねている宮澤やすみです。今回はベース＋三味線の２名という、歴史上類をみない異色の編成で実施。でもベースがあると演奏の芯が固まって、歌と三味線で乗っかる側としては助かってます。なかなか有効な組み合わせだと思います。
さて、先週は、この夏実施した早稲田大学オープンカレッジでの講座について書きました。
講座ではいつも、日本の歴史に則して仏像や仏教の動向をご紹介しているのですが、パワーポイントのスライド画像はこんな感じです……。
道鏡事件の解説スライド。だいぶ前に描いた絵ですがちょっとあしらうのに使い勝手がいい
これは「道鏡事件」のイメージ図です。
ずいぶん前、イラストの仕事をしていた頃に描いたゆるいマンガなんですけど、わりと重宝するのですね。
なんせ、道鏡本人の写真とかありませんのでね。
道鏡は、奈良時代後半に活躍した僧。
この時代の女性天皇、称徳（しょうとく）天皇との関係がよく知られています。
ただし、道鏡が最初に会った時は、天皇を一度退位していて、孝謙（こうけん）上皇という立場でした。
奈良の大仏造立で有名な聖武天皇の娘が孝謙上皇。
この方が病に倒れたとき、道鏡が病を治したところから二人の協調関係が結ばれます。
後の時代に、二人がただならぬ関係だったとかよく言われますが、脚色もあるので真相はわかりません。
なにしろ、仏教が国家運営の根幹におかれた奈良時代に、孝謙上皇がますます仏教に入れ込んで、この後出家し、ますます道鏡を自分のアドバイザーとして重用したというのは確かなようです。
いっぽう、かつてこの女性天皇を補佐していた藤原仲麻呂が、この頃には敵対勢力になっていて、孝謙・道鏡の体制に反乱を起こしますが、鎮圧されてますます孝謙・道鏡の権力が増大。孝謙上皇がもういちど天皇に即位して（重祚：ちょうそ といいます）、称徳天皇となります。２回天皇になるってすごいですね。しかも出家した身分での天皇即位というのもめずらしいことでした。
そんな中、奈良の都の海龍王寺で、仏舎利が出現した！というニュースが都に流れます。
これぞ仏法のミラクル！このタイミングで道鏡を法王という位を授けます。これで道鏡は、政治的にも宗教界でも国のトップに君臨しました。
その頃、九州・大宰府政庁には道鏡の弟、弓削浄人（ゆげのきよひと）が長官に就任しました。そのあとすぐ、有名な道鏡事件が起きるのであります。
時は神護景雲3年（769年）。
大宰府から、奈良にニュースが飛び込んできました。それが、九州の宇佐八幡からの託宣（神のお告げ）があったというのです。その内容は、
「道鏡を天皇の位にすれば天下泰平」
とのこと。
これを喜んだ称徳天皇ですが、すぐには信用しない人もいて事態は紛糾。
もういちど確認のため、あらためて八幡神の託宣を聞こうということで、派遣されたのが和気清麻呂（わけのきよまろ）という人物。現在、東京大手町に銅像が立ってます。
まあ、だいたい「神のお告げ」というのは、人間のさじ加減でどうにでもなると思うんですけどね。天皇側の人たちも、派閥の論理でいろいろ忖度して、道鏡を後押しする都合の良い結果を待っていたかもしれません。
ところが、和気清麻呂が持って帰った託宣は、
「天の日嗣には、必ず皇緒を立つ（天皇の跡継ぎは、必ず皇族の血筋のものを立てること）」
というものありました。
これで道鏡が失脚して、下野（いまの栃木県）で没するという、お話が道鏡事件の顛末でございます。おあとがよろしいようで。
奈良時代のこのころは、天皇の跡継ぎをどうするかで、権謀術数、足の引っ張り合いがひどかった時代で、独身女性で子がいない称徳天皇は、新しい天皇制を作りたかったのかもしれません。
しかし、実際はこのようなことで、血筋を辿って天皇制が続けられ、次の平安時代に移ることになります。跡継ぎのバックにはだいたい藤原氏がからんでいて、どんどん力を付けていきました。
ちょうど道鏡事件の直前には、藤原氏の守護社である春日大社が創建されていて、貴族たちの勢力争いが活発だったころなんですね。もし道鏡が本当に天皇になっていたら、歴史はどうなっていたでしょうね。
道鏡の即位を阻む託宣をもたらした和気清麻呂は、皇族の血統を守った人物として、明治政府に尊ばれ、東京・大手町の皇居に銅像が建てられて、近代天皇制の守護役にもなったのでした。
この連載「仏像ブツブツ」にはめずらしく、歴史の話でございました。
このへんのお話をNHK大河ドラマでやってくれたら絶対見るんですけどね。
道鏡役は、春風亭一之輔さんあたりでどうでしょう。
年明けにまた講座予定です。早稲田大学オープンカレッジで検索を
それでは聴いてください。
小田和正で「ラブストーリーは突然に」
（おしらせ）本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
9/17（金）18:30開演（19:40終了）
上野 御徒町 ワロスロード・カフェ
懐かしポップのカバーと江戸の小唄を、ゆるりと
感染防止対策準拠。飛沫の飛ばないとても静かなライブで疲れを癒してください
（イベント詳細ページ）
https://fb.me/e/1FFHGTYc9
［ネット視聴］
9/18 Youtube配信
宮澤やすみYoutubeチャンネルにて
https://www.youtube.com/watch?v=AyOmXD6RLko
２．
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
３．
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
（ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応）
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
