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第260回 「印象派-光の系譜」人気沸騰レッサー・ユリィ

”ベルリンの夜の空気を吸っている気分になります……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。この連載が公開されるときは、またもや関東某所でレコーディングをしている宮澤やすみです。
下記にある赤坂でのライブの準備も着々進行中です。ぜひ遊びにきてください。

さて、この連載は仏教美術のみならず仏国美術(フランス)ひいてはヨーロッパ美術にも触れているのでございます。
仏つながりという強引な結び付けですけど、かつて東西文化はシルクロードでつながっていたので、その両端を見るのはいろいろ発見もあって有意義と思います。
わたくし宮澤が天秤座で、両方ないとバランスが取れない気質だということもあるんですけどね。

先日は、「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展の報道内覧会に伺いました。
会場は、東京・丸の内にある三菱一号館美術館。レンガ造りの洋館に、花が咲く広場があって、ここはいつ行っても気持ちのよいところです。


1894年(明治27年)ジョサイア・コンドル設計による三菱一号館を2010年に復元し美術館として開館

この展覧会の見どころは、イスラエル博物館が所蔵する名品が、今まで日本であまり公開されてなかったものばかりというところ。

ゴッホやモネ、ルノワールといった、もう誰もが知っている画家の作品でも、
「あれ、こういう作風もあったんだ」
と、新鮮な発見ができるのです。

その中で、すでにSNSではかなりの話題になっているのが、レッサー・ユリィという画家の作品。

日本ではほぼ無名でありながら、今回の展示で「数日でポストカード完売」という事象が起こっているというのです。

それがこちらの作品(許可を得て撮影)。


右の作品がレッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》イスラエル博物館蔵(報道内覧会で許可を得て撮影)。ナチスにより没収されるも破却を免れ戦後に発見されるという数奇な運命を辿った作品でもある

まあ、写真ではその魅力は全然伝わらないと思うので、ぜひ実物の前に立って、肉眼で鑑賞してください。
(公式サイトにも画像が出ていますが、可能なら実物を)

夜のポツダム広場を描いた作品。時代は1920年代半ば。日本は大正から昭和へ移る頃。
雨が降って霧にけむる街が美しいです。右奥には、当時の最新スポットだったという「ハウス・ファーターラント」が見えます。
オフィスと映画館、カフェ、レストランが入る複合施設だったそう。

昼間の埃が雨で洗われて、空気が澄んでいる様子がよく伝わります。
画面が大きいので、観ているこちらもその場にいるような気持ちになって、ベルリンの夜のひんやりした空気を吸っている気分になります。

私事で恐縮ですが、この連載で先日紹介した、「祖父が1926年にいた」という話。じつはベルリンにも滞在しています。
まさしく、この絵が描かれたとき(数年のちがいはあるけど)、祖父もこのポツダム広場を歩いたのです。
祖父は戦後まもなく亡くなり、自分は会ったことがない、とても遠い存在。
そう考えると、雨の広場を歩く人々の中に祖父がいるんじゃないかという思いがして、さらにこの絵にのめりこんでしまうのでした。


1928年・祖父が家族に送ったベルリンの絵葉書

今回の展示は「光の系譜」とあるように、印象派の特徴である「光の捉え方」に着目しています。
ただ、19世紀の印象派時代の光は、なんといっても昼間の太陽光。
モネもゴッホも屋外に出て描いたのは、昼の光を求めてのことです。

だから、印象派絵画の展示は、ずっと昼間の絵が並びます。
そこへきて、順路を進むと、突然この夜の風景が、どーんと現れる。しかも他の作品より大きいサイズで。
20世紀の人たちは夜景が大好き。我々も夜景のきれいなお店にテンションが上がるように、当時の人もベルリンの最新スポットで夜遊びしたことでしょう。
そんなインパクトで、レッサー・ユリィの作品は今回の展示の話題をさらっていきました。


こちらもレッサー・ユリィの作品《赤い絨毯》


ミュージアムショップで《夜のポツダム広場》のノートをゲット

「モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」
とサブタイトルに付けるくらい、有名作家の名前は集客に影響を与えるわけですが(仏像だと運慶快慶とか空海とか)、それを差し置いて(日本で)無名の作家がこれだけ人気を集めるのは、なかなか痛快なことであります。

ただ、さすがモネの作品も「あら、きれいねえ」では決して済まない驚くべき超絶絵画が展示されていたので、次回そのへんもご紹介いたします。


展覧会のメインヴィジュアルになっているモネの作品は一般撮影OK。次週あらためて紹介します



それでは聴いてください。
1920年代のサロンミュージック特集です。



■過去記事
「甘美なるフランス」の時代、祖父はパリにいた③ 一次資料でみる100年前の日本人欧州探訪記
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211005-2/

イスラエル博物館所蔵
印象派・光の系譜
--モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
2021年10月15日(金)~2022年1月16日(日)
月曜、年末年始休館
三菱一号館美術館
詳細は公式サイトへ:
https://mimt.jp/israel/



(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
11/5金18:30
於:赤坂ビーフラット
〈山田参助とG.C.R.管絃楽団の夕べ〉
https://news.yahoo.co.jp/articles/b9049f7b870f3e060926b6ec0f7248a5fa964734
昭和初期トラッドジャズの再現演奏です。宮澤は三味線とギターで参加


2.
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m