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第261回 「印象派-光の系譜」展へ-浮き出る立体感。モネの超絶画力に酔いしれる
”ここまでモネの凄さを感じる機会はなかったかもしれません……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。赤坂でのライブは盛況のうちに終演しました。ご関係のみなさまどうもありがとうございました。
三味線とギターを弾きました。
さて、前回ご紹介した「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展のつづきです。
この連載は仏教美術のみならず仏国美術(フランス)ひいてはヨーロッパ美術にも触れてまして。
仏つながりという強引な結び付けですけど、かつて東西文化はシルクロードでつながっていたので、その両端を見るのはいろいろ発見もあって有意義なんじゃないかなと思っている次第です。

報道内覧会にて。写真は特別に許可を得て撮影
前回は、日本ではあまり知られていなかったレッサー・ユリィの作品に注目しました。
今回は、印象派の代表格であるクロード・モネ御大が登場。彼の作品は、撮影OKになっています。

展覧会のメインヴィジュアルになっているモネの作品は一般撮影OK
この絵、よく見るとちょっとゾクゾクするくらい凄まじい作品でした。
最初、なんの予備知識もなく、チラシやWEBの画像をみると、滝を描いたのかなと思うくらいの、白い流れがざざーっと描いてあるふうに見えます。
ところが、すぐにぜんぜん見当違いであることがわかるんですね。
白い部分は「空」でして、その両脇にもわもわしてるのが、「大きな柳の木が水面に映っている様子」なのです。
それに気づくと、突然、画面が立体的に見えて、奥行きを感じるのです。
作品のタイトルは「睡蓮の池」。

クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 油彩/カンヴァス イスラエル博物館蔵
睡蓮が浮かぶ池を、その水面の反射も含めて描き切っているのでした。
最初はなんだかもわもわした絵に見えていたのが、ものすごくリアルに感じられて、水の音や枝が風になびく音が聞こえてくるような気がしてきます。
水面の睡蓮は花も葉もくっきり描き、前面に浮き上がって見える。
黒々と映る柳の木と、その向こうの空まで見えて、同時に池の底も描かれているという、四層のレイヤー構造。今だったらフォトショでレイヤーごとに描けばよいものを、一枚のカンヴァスに油絵具で描き切りました。
ためしに、絵をさかさまにしてみると・・・

上の写真をさかさまにしてみました。黒々とした木がおおいかぶさるように見える
平面作品であるはずなのに、3D映像を見るかのような感覚。これはネットの画像や写真では体感できないかもしれません。
本展のキャッチコピーに
あなたの知らない、モネが来る
とあるのですが、確かに、ここまでモネの凄さを感じる機会はなかったかもしれません(あったのかもしれないけど自分がしばらく印象派嫌いだったので、スミマセン)。
モネは、1883年にジヴェルニーに移り住み、自宅裏庭の睡蓮の池を描き続けました。
おなじ構図の絵でも、写生する時間を変えて光の具合が異なるのを描きとり、多くの連作を残しています。
そのへんの様子は、図録で安井裕雄氏(三井一号館美術館 上席学芸員)が解説されていて、当時の仕事のようすや手紙のやりとりなど興味深い記録が読めます。
おなじく、対象が浮き上がって見えるような作品に、この林檎の木がありました。

シャルル=フランソワ・ドービニー《花咲くリンゴの木》1860-1862年 油彩/板 イスラエル博物館蔵
ほかの作品に比べて小ぶりの絵ですが、リンゴの木が前面に浮き上がって見えて、不思議な感覚を覚えました。
これを見るには、あんまり近づいちゃだめです。
2~3歩さがって、ちょっと離れたところから見るとありありとリンゴの木々が浮かび上がります。
よくある、ふたつ並べた写真を両目で交差して見ると3Dに見える”ステレオグラム”みたいな感じ、わかるでしょうか。
印象派の絵は、近づきすぎるとわかりづらいので、離れたり近づいたりしながら見るのがおすすめです(他の人にぶつからないように配慮してください)。
印象派の時代の画家の「凄み」が伝わる展覧会でした。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「見つめていたい」。(The Policeの三味線カバーです)
イスラエル博物館所蔵
印象派・光の系譜
--モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
2021年10月15日(金)~2022年1月16日(日)
月曜、年末年始休館
三菱一号館美術館
詳細は公式サイトへ:
https://mimt.jp/israel/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html
2.
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。赤坂でのライブは盛況のうちに終演しました。ご関係のみなさまどうもありがとうございました。
三味線とギターを弾きました。
さて、前回ご紹介した「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展のつづきです。
この連載は仏教美術のみならず仏国美術(フランス)ひいてはヨーロッパ美術にも触れてまして。
仏つながりという強引な結び付けですけど、かつて東西文化はシルクロードでつながっていたので、その両端を見るのはいろいろ発見もあって有意義なんじゃないかなと思っている次第です。

報道内覧会にて。写真は特別に許可を得て撮影
前回は、日本ではあまり知られていなかったレッサー・ユリィの作品に注目しました。
今回は、印象派の代表格であるクロード・モネ御大が登場。彼の作品は、撮影OKになっています。

展覧会のメインヴィジュアルになっているモネの作品は一般撮影OK
この絵、よく見るとちょっとゾクゾクするくらい凄まじい作品でした。
最初、なんの予備知識もなく、チラシやWEBの画像をみると、滝を描いたのかなと思うくらいの、白い流れがざざーっと描いてあるふうに見えます。
ところが、すぐにぜんぜん見当違いであることがわかるんですね。
白い部分は「空」でして、その両脇にもわもわしてるのが、「大きな柳の木が水面に映っている様子」なのです。
それに気づくと、突然、画面が立体的に見えて、奥行きを感じるのです。
作品のタイトルは「睡蓮の池」。

クロード・モネ《睡蓮の池》1907年 油彩/カンヴァス イスラエル博物館蔵
睡蓮が浮かぶ池を、その水面の反射も含めて描き切っているのでした。
最初はなんだかもわもわした絵に見えていたのが、ものすごくリアルに感じられて、水の音や枝が風になびく音が聞こえてくるような気がしてきます。
水面の睡蓮は花も葉もくっきり描き、前面に浮き上がって見える。
黒々と映る柳の木と、その向こうの空まで見えて、同時に池の底も描かれているという、四層のレイヤー構造。今だったらフォトショでレイヤーごとに描けばよいものを、一枚のカンヴァスに油絵具で描き切りました。
ためしに、絵をさかさまにしてみると・・・

上の写真をさかさまにしてみました。黒々とした木がおおいかぶさるように見える
平面作品であるはずなのに、3D映像を見るかのような感覚。これはネットの画像や写真では体感できないかもしれません。
本展のキャッチコピーに
あなたの知らない、モネが来る
とあるのですが、確かに、ここまでモネの凄さを感じる機会はなかったかもしれません(あったのかもしれないけど自分がしばらく印象派嫌いだったので、スミマセン)。
モネは、1883年にジヴェルニーに移り住み、自宅裏庭の睡蓮の池を描き続けました。
おなじ構図の絵でも、写生する時間を変えて光の具合が異なるのを描きとり、多くの連作を残しています。
そのへんの様子は、図録で安井裕雄氏(三井一号館美術館 上席学芸員)が解説されていて、当時の仕事のようすや手紙のやりとりなど興味深い記録が読めます。
おなじく、対象が浮き上がって見えるような作品に、この林檎の木がありました。

シャルル=フランソワ・ドービニー《花咲くリンゴの木》1860-1862年 油彩/板 イスラエル博物館蔵
ほかの作品に比べて小ぶりの絵ですが、リンゴの木が前面に浮き上がって見えて、不思議な感覚を覚えました。
これを見るには、あんまり近づいちゃだめです。
2~3歩さがって、ちょっと離れたところから見るとありありとリンゴの木々が浮かび上がります。
よくある、ふたつ並べた写真を両目で交差して見ると3Dに見える”ステレオグラム”みたいな感じ、わかるでしょうか。
印象派の絵は、近づきすぎるとわかりづらいので、離れたり近づいたりしながら見るのがおすすめです(他の人にぶつからないように配慮してください)。
印象派の時代の画家の「凄み」が伝わる展覧会でした。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「見つめていたい」。(The Policeの三味線カバーです)
イスラエル博物館所蔵
印象派・光の系譜
--モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン
2021年10月15日(金)~2022年1月16日(日)
月曜、年末年始休館
三菱一号館美術館
詳細は公式サイトへ:
https://mimt.jp/israel/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html
2.
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m