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第262回 千葉・佐原の十一面観音① 水郷の里を見守る平安仏

”つまり国家レベルでの非常に重要な仏像であったわけで……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ここ数日は自宅にこもって新曲の制作に集中していました宮澤やすみです。年が明けていつかお披露目できればと思います。

さて、先日は千葉県の佐原(さわら)に音楽のレコーディング仕事で出向いたのですが、ここは仏像的にも大事な場所なんです。
なので、前乗り(前日に現地入り)してお寺に行ってきました。

ここは、「水郷の里」として知られる風光明媚な観光地、佐原。


まるで映画のセットのよう。歴史的な家屋が並ぶ川沿いを歩いたり舟で行くのが佐原観光の定番ルート

その観光エリアから離れて、山のほうに上がっていくと、荘厳寺というお寺があります。

そこにいるのが、十一面観音菩薩。
ご住職にお願いして、収蔵庫を開けていただきました。


荘厳寺所蔵の十一面観音菩薩立像

像高3m25cm。足下に立ってお顔を見上げると、深遠なまなざしが遠くをしっかりと見据えるように見えます。
丸顔で、量感のある腕と脚。
胸と腹の境にシワが刻まれるのは、豊満な体の表現。仏像の場合、ぽっちゃり体系であることが風格というか貫禄というか、ありがたい姿とされるんですよね。

脛のあたりには、衣が垂れてひだを作る様が表現されていますが、よく見ると、太く明瞭な襞と細い襞が交互に表現されています。
これは「翻派式衣文(ほんぱしきえもん)」という平安時代前期によく見られた衣文の表現で、この十一面観音像の制作年代をさぐる手掛かりになります。


太い襞と細い波が交互に表現される「翻派式衣文」

昭和34年に国の重要文化財に指定。その際の調査で、9世紀末~10世紀はじめ頃の作と推定されています(「広報かとり」平成23年3月15号より)。
つまり、今からざっと1000年前。
そんな昔のものが、千葉のはじっこ(すぐそこは茨城県)に残されていたんですね。

調査の際に、胎内の墨書が見つかりました。それによると元禄13年、徳川五代将軍・徳川綱吉の命によって修理されたとのこと。
将軍の指令がかかるほどの、つまり国家レベルでの非常に重要な仏像であったわけですね。

今はこの佐原の地でひっそり収蔵庫に収まっていますが、いったいどんな存在だったんでしょうか。


荘厳寺の境内には、十三仏の石仏も

ただ、十一面観音であるのに、頭上に乗っているはずの小面(小さな頭部)がありません。いろいろあって取れてしまったんだそうです。
それがこの仏像の数奇な運命を物語っています。


頭上の小面がすべて無くなっている

そのお話は次回、またアクセスお願いします。

それでは聴いてください。
ピチカート・ファイヴで「おはよう」。




(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
新作MV公開「欣喜雀躍」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
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2.
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15 
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html


3.
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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m