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第270回 下関「壇ノ浦レポート」-平家の魂鎮まる赤間神宮は仏教式だった-
”遣唐使船もここを通ったと思うと、神仏古代史ファンも胸が熱くなります--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仕事が減ったのをいいことに、新曲作りにいそしんでいる宮澤やすみです(とはいえ誰か出番をください)。
さて、年末より九州ネタが続いています。熊本、小倉での出演があったためです。
しかし今回は海峡をちょっと渡って本州へ。山口県は下関・壇ノ浦へ。
小倉(福岡県)から下関(山口県)は電車で二駅という近さ
壇ノ浦といえば、水曜どうでしょうファンの聖地であり、「壇ノ浦レポート」の現場です。
「ディレクターが、うなされたんだよ~」
の名言は、今も語り継がれていますが、それはおいといて、
マジメに壇ノ浦といえば、源平合戦の決戦地であり、幕末動乱の現場であり、さまざまな歴史の舞台です。
そこにある赤間神宮は、壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇を祀る神社です。
「浪ノ下ニモ都ノ候ソ」(海の底にも都はありますぞ)と幼い安徳天皇をなぐさめつつ、共に入水したのは平清盛の妻・二位尼。海中の都として竜宮城を模して造られたのがこの水天門
もとは阿弥陀寺といい、安徳天皇を埋葬した安徳天皇御影堂が原型。つまり仏教形式の廟(お墓)でした。
この連載で何度も出てくる、明治期の神仏分離によって、神社になったものです。
そんな経緯があり、境内のあちこちに仏教的なニオイがします。具体的には線香のニオイです。
本殿でお参りを済ませると、すぐ脇には十三重の大きな石塔。
水難に遭われた人の魂を安徳天皇とともに鎮める供養塔です。これは十三仏の信仰からくる仏教形式のもの。
水天供養塔
さらにその奥に、平家一門の墓(供養塚)が並び、線香が供えられています。
供養塔といい塚といい、まさしく仏教施設の体をなしている場所です。
安徳天皇の陵墓も境内に隣接し、安徳天皇阿弥陀寺陵(あみだじのみささぎ)として管理されています。
平家塚。「盛」の字が付く武将が祀られていることから「七盛塚」とも言う。江戸時代に近隣の平家供養塔をここに集めて祀ったもの
また、有名な耳なし芳一の話はここが舞台とのこと。つまりここで芳一は、亡霊を相手に平家物語を語って聞かせたというのです。
塚の横には平家物語を語る耳なし芳一の像がある(芳一堂)。近づくと平家物語の演奏が流れる
「ディレクターがうなされたんだよ~」
という、水曜どうでしょうでの発言もむべなるかな、であります。
多くの人の命が消えた古戦場に、これだけ立派な鎮魂の場があるわけですが、現在は先帝祭の祭礼や源平ナイトなどのイベントで大変賑わう観光スポットにもなっています。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では源頼朝を演じる大泉洋が平家打倒を企てていますから、ドラマの進行とともにこの地も盛り上がることでしょう。
個人的には、その先を少し歩いたところにある壇ノ浦漁港がすばらしかったです。
漁港と言ってもこぢんまりした舟溜まりで、伝承では平家の落人が漁民に姿を変えて暮らしたといいます。
ひっそりとした壇ノ浦漁港。徒歩でないと気付かない場所にある
中心に蛭子神社や神石が祀られている以外はひっそりとした空間で、関門海峡を挟んで対岸の門司がすぐ近くに見えます。
1階部分に舟を収納する「舟屋」の形式を保つ家並み
源平の舟ももちろんですが、古くは遣唐使船もここを通ったと思うと、神仏古代史ファンも胸が熱くなります。
バス停の名前もまさに「壇ノ浦」。
というわけで、これがホントの「壇ノ浦レポート」でございました。
赤間神宮から対岸の門司を望む
この滞在は、活動写真弁士・片岡一郎さん(前々回連載を参照)の九州公演ツアーに、三味線奏者として同行したものでした。熊本に続いて、小倉市内の伝統ある映画館・小倉昭和館さんにて、サイレント映画を片岡氏の活弁と私の生演奏で上演しました。
小倉昭和館、活弁公演のポスター画像
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ feat. サトウトモミ で「むかえにきたよ」。
参考
赤間神宮公式サイト
http://www.tiki.ne.jp/~akama-jingu/
壇ノ浦レポートとは-ニコニコ大百科
https://dic.nicovideo.jp/a/%E5%A3%87%E3%83%8E%E6%B5%A6%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー
観賞用仏像「イスム仏像」のプロデューサーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘
2.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仕事が減ったのをいいことに、新曲作りにいそしんでいる宮澤やすみです(とはいえ誰か出番をください)。
さて、年末より九州ネタが続いています。熊本、小倉での出演があったためです。
しかし今回は海峡をちょっと渡って本州へ。山口県は下関・壇ノ浦へ。
小倉(福岡県)から下関(山口県)は電車で二駅という近さ
壇ノ浦といえば、水曜どうでしょうファンの聖地であり、「壇ノ浦レポート」の現場です。
「ディレクターが、うなされたんだよ~」
の名言は、今も語り継がれていますが、それはおいといて、
マジメに壇ノ浦といえば、源平合戦の決戦地であり、幕末動乱の現場であり、さまざまな歴史の舞台です。
そこにある赤間神宮は、壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇を祀る神社です。
「浪ノ下ニモ都ノ候ソ」(海の底にも都はありますぞ)と幼い安徳天皇をなぐさめつつ、共に入水したのは平清盛の妻・二位尼。海中の都として竜宮城を模して造られたのがこの水天門
もとは阿弥陀寺といい、安徳天皇を埋葬した安徳天皇御影堂が原型。つまり仏教形式の廟(お墓)でした。
この連載で何度も出てくる、明治期の神仏分離によって、神社になったものです。
そんな経緯があり、境内のあちこちに仏教的なニオイがします。具体的には線香のニオイです。
本殿でお参りを済ませると、すぐ脇には十三重の大きな石塔。
水難に遭われた人の魂を安徳天皇とともに鎮める供養塔です。これは十三仏の信仰からくる仏教形式のもの。
水天供養塔
さらにその奥に、平家一門の墓(供養塚)が並び、線香が供えられています。
供養塔といい塚といい、まさしく仏教施設の体をなしている場所です。
安徳天皇の陵墓も境内に隣接し、安徳天皇阿弥陀寺陵(あみだじのみささぎ)として管理されています。
平家塚。「盛」の字が付く武将が祀られていることから「七盛塚」とも言う。江戸時代に近隣の平家供養塔をここに集めて祀ったもの
また、有名な耳なし芳一の話はここが舞台とのこと。つまりここで芳一は、亡霊を相手に平家物語を語って聞かせたというのです。
塚の横には平家物語を語る耳なし芳一の像がある(芳一堂)。近づくと平家物語の演奏が流れる
「ディレクターがうなされたんだよ~」
という、水曜どうでしょうでの発言もむべなるかな、であります。
多くの人の命が消えた古戦場に、これだけ立派な鎮魂の場があるわけですが、現在は先帝祭の祭礼や源平ナイトなどのイベントで大変賑わう観光スポットにもなっています。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では源頼朝を演じる大泉洋が平家打倒を企てていますから、ドラマの進行とともにこの地も盛り上がることでしょう。
個人的には、その先を少し歩いたところにある壇ノ浦漁港がすばらしかったです。
漁港と言ってもこぢんまりした舟溜まりで、伝承では平家の落人が漁民に姿を変えて暮らしたといいます。
ひっそりとした壇ノ浦漁港。徒歩でないと気付かない場所にある
中心に蛭子神社や神石が祀られている以外はひっそりとした空間で、関門海峡を挟んで対岸の門司がすぐ近くに見えます。
1階部分に舟を収納する「舟屋」の形式を保つ家並み
源平の舟ももちろんですが、古くは遣唐使船もここを通ったと思うと、神仏古代史ファンも胸が熱くなります。
バス停の名前もまさに「壇ノ浦」。
というわけで、これがホントの「壇ノ浦レポート」でございました。
赤間神宮から対岸の門司を望む
この滞在は、活動写真弁士・片岡一郎さん(前々回連載を参照)の九州公演ツアーに、三味線奏者として同行したものでした。熊本に続いて、小倉市内の伝統ある映画館・小倉昭和館さんにて、サイレント映画を片岡氏の活弁と私の生演奏で上演しました。
小倉昭和館、活弁公演のポスター画像
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ feat. サトウトモミ で「むかえにきたよ」。
参考
赤間神宮公式サイト
http://www.tiki.ne.jp/~akama-jingu/
壇ノ浦レポートとは-ニコニコ大百科
https://dic.nicovideo.jp/a/%E5%A3%87%E3%83%8E%E6%B5%A6%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー
観賞用仏像「イスム仏像」のプロデューサーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘
2.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m