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第275回 仏像ファンの目線で見る「メトロポリタン美術館展」

”僕はよく運慶の仕事と比較してみたりします--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ソロライブ「ひとりワロス」を控えて演奏曲を何やろうかなと検討している宮澤やすみです。昭和の歌なかなか面白いです。

さて、春は美術展ラッシュの季節。先日は東京・六本木の国立新美術館「メトロポリタン美術館展 西洋美術の500年」の報道内覧会へ伺いました。

膨大なコレクションを誇る作品群から、西洋絵画の歴史を概観できる作品を集めたもの。
仏像ファンの目線からみても、なかなか興味深いものがあります。


写真はすべて報道内覧会で許可を得て撮影したものです

せっかく「仏像ワールド」での連載ですから、仏像ファン向けの西洋美術鑑賞というものを紹介したいと思ってきました。
とくに宗教美術は、洋の東西を問わず、比較文化論的な視点で見ていくと理解が深まったりするように思うのです。

作品には、それが造られた時代の思想が色濃く表れるもの。
「こういう思想は、日本だと平安末期にありそうだな…」とか、当てはめてみると当時のヨーロッパ社会が理解しやすいように思います(曲解や拡大解釈の怖れもあるので、注意が必要ですが)。

今回の展示は、中世から500年の西洋美術史を俯瞰しているのですが、私は今回これを「宗教との距離感」を軸にして鑑賞してみました。

描かれた題材に着目すると、キリスト教一辺倒だったのものから、神話への揺り戻し、さらに市井の人間、風景へと移っていく様が見て取れます。

まずは、展示最初にある初期ルネサンスの祭壇画に注目しましょう。板に金地を施し、キリストの処刑を描いた作品。


作品画像と解説は公式WEBサイトに出ています(記事末リンク)。フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ)《キリストの磔刑》 1420-23年頃

西ローマ帝国が滅びた476年以降おおよそ1000年間、中世のヨーロッパは、キリスト教(カトリック)がもっとも幅を利かせた時代です。
作者のアンジェリコはフィレンツェの修道院に所属する宗教者でしたが、画家としては「革新的な画家であった(図録より)」とのこと。中世から脱却する「初期ルネサンス」の作品とされます。

この作品が「革新的」なのは、遠近法など科学的な手法が見られる点だそうです。十字架の周囲にいる人々が、奥の人は小さく手前の人は大きく描かれている。
科学といっても単純なものですが、それまで何でもかんでも「主のみ心のままに」で、「神が造った大地の周りを星が動く」としていた社会から、自然科学への眼が開かれてきたわけです。


宗教画だけど背後に当時のリアルな街の風景を入れてみたりする。ヘラルト・ダーフィット《エジプトへの逃避途上の休息》1512-15年頃

下の作品はヴェネツィア・ルネサンス期の作品。女神ヴィーナスなど神話の神々を描いたとはいうものの、姿は人間そのもの。結局は美しいヌードを描くための建前にすぎなかったんじゃないかと推察します。


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》 1550年代

観音菩薩は時代を追うごとに女性的な姿で表現されますが、こうした東西の官能美の表現を比較して考えると面白そうですね。

ルネサンスは宗教の呪縛から人間性を取り戻した時代、なんていう説明がよくされますが、僕はよく運慶の仕事と比較してみたりします。
運慶は興福寺の僧であり、社会は念仏に禅など新宗派による”宗教改革”の時代。そんな運慶の作風は宗教性だけでなく人間らしさを感じさせ、さらに造形においては古典の写実を復興させ、まさに「仏像ルネサンス」といえる仕事をしました。これがその後の規範になっていきます。

今回の展示では、こうした古代ギリシャ神話を題材にした大仰な作品がいくつもあります。
日本で神仏習合や分離があったように、ヨーロッパでも、古来の神話の神々と外来宗教(仏教、キリスト教など)のせめぎ合いや融和が見られます。

考えてみれば、仏像の天部だってもともと古代インドの神々なのだし、中国の星信仰も混ざるし、東西どの国でも神仏習合的な感覚はあるわけで、「ごった煮寄せ鍋」的な信仰文化が美術作品を生み出し私たちを魅了します。

メトロポリタン美術館から神仏習合の話になってしまいました。
長くなったので、後半は次週にいたします。

 
それでは聴いてください。
クラフトワークで「メトロポリス」。




メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
2022年2月9日(水)~5月30日(月)火曜休館
国立新美術館 企画展示室1E
詳細は公式サイトへ
https://met.exhn.jp/




---おしらせ---

(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
2022/3/2(水)19:00開演
上野広小路/御徒町 ワロスロード・カフェ

活動弁士・山内菜々子さんをお呼びして珍しいサイレント映画の短編を生演奏付きで上演。
後半はこれまた珍しい昭和初期の流行歌を弾き歌い。
感染防止対策準拠。落ち着いたくつろぎ空間で疲れを癒してください

シックなバーでのミニライブ。オンライン配信も予定してます。Youtube宮澤やすみチャンネルにて


2.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー

観賞用仏像「イスム仏像」のブランドマネージャーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘


3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m