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第276回 フェルメールの信仰、マリー・ドニーズの陰影「メトロポリタン美術館展」

”この人もまた人気画家になるんじゃないでしょうか--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ソロライブ「ひとりワロス」を翌日に控えている宮澤やすみです。配信も同時に行なうのでどうぞご覧ください。

さて、前回は東京・六本木の国立新美術館「メトロポリタン美術館展 西洋美術の500年」から、宗教と美術のせめぎ合いを紹介しました。
今回はそのつづきです。


写真はすべて報道内覧会で許可を得て撮影したものです

宗教をテーマにした絵画は、画家本人よりも注文主の思想を色濃く表現します。仏像にたとえると、発願者の想いを仏師がかたちに表現するのと同じです。

今回の展示で目を引いたのは、フェルメールの《信仰の寓意》という作品。


美しく精緻な筆遣いと”寓意”の詳細は、ぜひ会場でご確認ください。ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》 1670-72年頃

オランダでは宗教改革の結果、国としてプロテスタントを信仰し他教の礼拝を禁止しました。しかし、このフェルメールの作品では、密かにカトリックの信仰を告白するようなテーマが描かれています。

オランダのカトリック信者からの注文と言われていますが、フェルメール自身もカトリックを貫いていたそうです。
じつに勝手な心配ですけど、ご近所さんは知っていたんでしょうかね。
日本人の感覚だと、
「村八分になるんじゃ…」
と心配してしまいます。オランダに村八分というしきたりがあったかどうか知りませんが。


ミュージアムショップで《信仰の寓意》クリアファイルをゲット。足下の地球儀、床に石でつぶされた蛇、テーブル、カーテン、すべてに意味がある

今回の展示では「西洋美術の500年」と銘打って、絵画作品の歴史を俯瞰する企画になっています。
順路に沿って見ていくと、時代が下るにつれて、宗教色が濃かった絵画の題材が幅広くなり、好きなものを好きに描く社会になっていくのがわかります。

展覧会のキーヴィジュアルに使われている、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵《女占い師》は、映画の1シーンのような一瞬を切り取っていて面白いです。インチキ占い師とスリがグルになって、若い男から金品をかすめ取る緊迫の瞬間です。

当時こういう題材が流行っていたとのことですが…、


「詐欺に気を付けて!」という啓蒙ポスターみたいなものでしょうか…

ちなみに、この絵が描かれた1630年頃、ラ・トゥールがいたロレーヌ公国はペストと戦争で悲惨な状況だったそうで、その中でこの絵を描いたラ・トゥールの気持を考えるのも一興です。


後半の展示では、ゴッホ、ゴーギャンなど有名画家の作品もありますが、知られていなかった画家の一枚が注目されています。

この連載で以前に紹介した、レッサー・ユリィが展示以降人気沸騰となったように、この人もまた人気画家になるんじゃないでしょうか。絵のモデルも画家も、どちらの名前も”マリー”でややこしいのですが、
「ドニーズが描いたジョセフィーヌの絵」と覚えればよいでしょう。

窓から射す光がジョセフィーヌのフォルムに陰影を作り、作品のサイズが大きいこともあって、ハッとするような印象的な作品になっています。


各メディア取材陣も多くはこの絵で立ち止まっていました。マリー・ドニーズ・ヴィレール《マリー・ジョセフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ》1801年

展示最終章にあるクロード・モネの睡蓮は、以前この連載で紹介した1907年の睡蓮からさらに進化を遂げ、禅の悟りでも開いたかのような抽象的な筆致に引き込まれました。

500年間の人の移ろいを見られる展示でした。

 
それでは聴いてください。
夏木マリで「マグダラのマリア」。



メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
2022年2月9日(水)~5月30日(月)火曜休館
国立新美術館 企画展示室1E
詳細は公式サイトへ
https://met.exhn.jp/


関連の過去記事
「印象派-光の系譜」人気沸騰レッサー・ユリィ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211102-2/

「印象派-光の系譜」展へ-浮き出る立体感。モネの超絶画力に酔いしれる
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211109-2/




---おしらせ---

(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみソロライブ「ひとりワロス」
2022/3/2(水)19:00開演
上野広小路/御徒町 ワロスロード・カフェ

活動弁士・山内菜々子さんをお呼びして珍しいサイレント映画の短編を生演奏付きで上演。
後半はこれまた珍しい昭和初期の流行歌を弾き歌い。
感染防止対策準拠。落ち着いたくつろぎ空間で疲れを癒してください

シックなバーでのミニライブ。オンライン配信も予定してます。Youtube宮澤やすみチャンネルにて)


2.
(オンライン配信あり)
■魅惑の仏像:造る、見る、拝む トークショー

観賞用仏像「イスム仏像」のブランドマネージャーをお招きして、
仏像の「造る」「見る」「拝む」を語る仏像トーク。遠方の方はオンラインで。
https://www.ync.ne.jp/jiyugaoka/kouza/202201-18010097.htm
よみうりカルチャー自由が丘


3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m