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第316回 仏像ファンにも見てほしい ベルギー・聖ペテロ教会の至宝

”ちょうど運慶や快慶が傑作を造り出していた時と重なり--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ベルギー、ドイツの活弁ツアーから帰国しました宮澤やすみです。活動写真(活弁)の上演で、活動弁士・片岡一郎とともに三味線奏者として行ってきました。

3都市5公演のうち、最初に演奏をしたのはベルギー・ルーヴェンという町。


グロート・マルクト(大広場)に向かうとめくるめくゴシック建築がお出迎え。画面右が聖ペテロ教会。中央奥が市庁舎

先週ここで紹介しましたが、ルーヴェンは古い歴史がある街で、以前から行きたかったのが街の中心にある聖ペテロ教会(英:Saint Peter's church 蘭:Sint-Pieterskerk)です。
西暦986年創建のローマカトリック教会で、現在の聖堂は15世紀のゴシック様式です。


聖ペテロ教会の内部。無料で開放されている

ルーヴェンは活弁の出演で何度か来ているけれど、今回やっと教会に入る時間が取れました。

だいたいこういう古い教会は、さまざまな祭壇画や彫刻が大聖堂側面の小空間(これも聖堂とかChapelと称する)に展示してあるもので、それを見るのが楽しみなのです。


説明はなかったけど磔刑後のキリスト像がぽつんと

教会によっては、ゆかりの人の墓所として立入をゆるさない場合もあるけど、ここ聖ペテロ教会は観光客に開かれたところなので大丈夫。


制作当初からここに残っているディーリック・バウツ『最後の晩餐』

みどころは、地元の画家・ディーリック・バウツ(Dieric Bouts)による「最後の晩餐」(1464-68ごろ作)が有名。画面に13使徒以上の人間が描かれていて、どれかがバウツ本人らしいです。

個人的には、その隣にあった「聖エラスムスの殉教」が目を引きました。作者は同じ。
聖人の殉教図って、たいていひどい目に合っている絵なんですよね。


閲覧注意?のエグい所業がじわじわくる『聖エラスムスの殉教』

ひどい拷問にあっても信仰を曲げずに昇天したという話なんだけど、エラスムスの場合、生きたまま腸を引っ張り出されるという、エクストリームな拷問を受けています。どうやったらこんな仕打ちを思いつくのでしょうか。


可憐な顔立ちの聖リタ(カトリック教会の聖人)。堂内には修道女の聖人像もいくつかある。先週紹介したこの地の修道院ベギンホフとの関連もあるだろうか

そして、この教会のもっとも古いお宝は、1200年ごろの作とされるキリストの頭部彫刻。
木彫でこれだけ古いものが残っていること自体大変なことで、深い憂いをたたえた表情がリアル。
仏像ファンが仏頭を見てほれぼれするように、この「キリ頭」も素晴らしいです。


ちょうど運慶の時代に造られた木彫(パブリック・ドメイン画像を引用)

時代でいうと、ちょうど運慶や快慶が傑作を造り出していた時と重なり、そうした点でもこれは仏像ファンに見てほしい。


古い時代の遺構も少しだけ残っている

ただ、残念ながら私、この目では見られなかったんですよね、くやしい。
たまたま展示を控えていたのか、たんに見落としたのか…。

きっと、「また来い」という神の啓示(笑)だろうと解釈して、再訪にむけてがんばります。


(30秒動画)怒涛の彫刻に圧倒される市庁舎から聖ペテロ教会、その向こうのOude Markt(旧広場)を眺める

この日は、ルーヴェン大学にて「1920年代の小唄と流行歌」と題したワークショップをして、演奏と講義させてもらいました。
夜には町の映画館Cinema ZEDにて活動写真『十字路』を、活動弁士の片岡一郎、ピアニストの江村玲子、そして私の三味線で上演。爆発的な好評を得てなぜかザ・ブッツのアルバム『時の水辺』が売れるという現象が起きたのでした。

それでは聴いてください。
ピーター・ガブリエルで「スレッジハンマー」。



(前回記事)
ベルギーの世界遺産修道院、ベギンホフにて
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221220-2/


---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
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雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです

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 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m