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第317回 諏訪・神仏の旅③ 諏訪大社ゆかりの仏像たち

”神像の雰囲気そのものという佇まいで--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。令和5年の仕事始めはNHKラジオだった宮澤やすみです。「ごごカフェ」という番組で「小唄で楽しむお正月」と特集してくださいました。1/11までですが聞き逃し配信で聴けます

そんな中、この連載の第312回、313回で書いてきた長野・諏訪の旅。
また少しずつ書いていきたいと思います。


「諏訪神仏プロジェクト」を代表して推進した仏法紹隆寺の本堂。さすが長野県、おいしそうなリンゴをご本尊にお供えする

古代から近世まで、諏訪湖を中心にさまざまな信仰が広がっていた諏訪の地。
2022年秋には「諏訪神仏プロジェクト」として、諏訪大社とゆかりの寺が一致団結し、仏像、寺宝、社宝の公開が一斉に行われました。

諏訪大社上社(かみしゃ)本宮の本地仏である普賢菩薩を仏法紹隆寺、
諏訪大社下社(しもしゃ)秋宮の本地仏である千手観音菩薩を照光寺に訪ねました。

ここまでが前回のあらすじ。

近世までは、諏訪大社の境内地にいくつもお寺が建てられいたそうで、
神社の祭神の本体とされる「本地仏」以外にもさまざまな仏像が安置されていました。

明治の神仏分離にともない、それらの仏像は近隣ゆかりのお寺に移されます。
今回の「神仏プロジェクト」では、そうした”諏訪大社にあった仏像”がいくつも公開されました。

たとえば、前回紹介した照光寺にある仁王像(本堂の中の大きな床の間に置かれている)も仏像ファンの人気をさらいました。


照光寺の金剛力士(仁王)。部屋の中にいるから余計に迫力を感じる

これは下社秋宮に存在した千手堂にあった像で、本地仏の移転とともに照光寺に置かれたもの(ただし元々は近隣の安国寺のもので洪水で流出をきっかけに千手堂に置かれたらしい)。


平福寺(岡谷市)というお寺も下社ゆかりのお寺で、下社秋宮に存在した三精寺の阿弥陀堂から移された端正な顔立ちの阿弥陀如来坐像がいます。


平福寺所蔵の阿弥陀如来。慶派仏ファンが放っておかないであろうキリッとした表情と精緻な衣文が特徴

切れ長の目や鋭く細かい衣文線は、運慶や快慶をはじめとする慶派一門の造形にみられる特徴で、諏訪に滞在した慶派仏師による作といわれます。


上社ゆかりの仏像も公開中とのことで、長円寺(茅野市)も訪ねました。
こちらの薬師如来立像は、上社本宮に存在した薬師堂の本尊だったもの。
素地づくりの簡素な彫り具合に見えますが、それがかえって神像によくある「ディテールを簡略化する」表現にも見えます。ただしその衣文線はやわらかい曲線を描いていて、身体に吸い付くような薄い衣の表現が見事。
両腕にだらりと衣の袖が垂れかかるスタイルは、鎌倉後期ごろの作風でしょうか。茅野市教育委員会による説明板によると”宋調様式がみられる”とありますが、このことを指して言っているのでしょうか。


独特の姿をした長円寺薬師三尊。毎年2月8日の縁日とその直近の日曜日に護摩法要がありその時に拝観できる

不思議なのは、両脇に立つ日光菩薩と月光菩薩が、本来の菩薩の姿でなく、坊主頭に袈裟懸けの姿なんですね。残念ながらお顔は風化か削られたかして原形をとどめません。
本来は地蔵なのか吉祥天だったのか(神像の世界では吉祥天と薬師如来は同一視されることもあったりするので)、その他の守護神的なものだったのか、ナゾであります。
この脇侍は衣文線が簡略化されていて、神像の雰囲気そのものという佇まいでした。


謎めく諏訪の話、まだまだ続きます

そんな中、今年2月は「神社の仏像」と題した講演をするので、よかったらどうぞ。参加費たったの500円。
阪急交通社「たびコト塾」
■これだけは知っておきたい~神社の仏像~ 
2023年2月2日 詳細↓
https://www.hankyu-travel.com/tour/detail_d_setsu.php?p_course_no=1808629

さらに2月立春からも講座つづきます。
おなじみの早稲田大学オープンカレッジでは、デジタルを駆使して江戸東京の信仰史をお話します。
特別に三味線と小唄の実演も交えて吉原の神仏の関係などいろいろ。
早稲田大学エクステンションセンター中野校
■空から映像で実感! 地形と寺社で解き明かす東京のナゾ
~古代から近代まで歴史の痕跡を探る、バーチャルさんぽ~
2023年2月4日から全3回 詳細↓
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/57581/


音楽の仕事が減るとブツ系の仕事が増えるという、不思議な波でしてね。
音楽もいろいろやりたいんで、お声かけください。

それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「欣喜雀躍」。



(過去記事)
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/

諏訪・神仏の旅① 「万治の石仏」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221129-2/

諏訪・神仏の旅② 諏訪大社の本地仏-普賢と千手観音
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221206-2/




---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
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 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m