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第322回 諏訪・神仏の旅⑧ ”ターミネーター”と戦った神

”ジェームズ・キャメロン監督『古事記』読んだんかってくらい--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。春に向けてのいろんな案件まだまだ調整中の宮澤やすみです。どれだけ実現するかまだわかりませんが、なんとか。

そんな中、ここでは長野・諏訪の旅を続けて書いております。

いよいよ諏訪大社を参詣したいと思います(やっとだよ。もう8話目なのに)。


諏訪大社上社本宮の北参道から大鳥居をみる。表参道もあるが観光客はだいたいここから入る

訪れたのは、諏訪大社上社本宮。
上諏訪駅からローカルバス(本数が少ないので要注意)でたどり着きました。


手水舎の横にある「明神湯」は温泉が湧き出る。これで手を清めることもできる

参拝所から見える立派な建物は「幣拝殿」で、その左右に「片拝殿」が伸びます。
そこに向かって柏手を打って参拝します。


画面左手前が参拝所で一般参拝客はここまで。右奥が幣拝殿

前回にも書きましたが、ふつうご神体を祀る「本殿」が存在しないのが、諏訪大社の形式なんですね。「諏訪造り」というそうです。


参拝所からみた幣拝殿

じゃあ何を拝んでいるのかということになるんですが、神仏習合時代にはご神体として仏塔がありました(本シリーズ⑥参照)。
現在は杉の大木が依代になっているとか、もっと前は大祝(おおほうり)という神職が現人神として拝まれたとか(詳しくはこんどまた)、どうも時代によっていろいろあるみたいです。

大事な部分があいまいになっているんですけど、でもまあ、神さまの姿は目に見えないというのが基本ですからね。

姿かたちはともかく、基本的にご祭神は建御名方神(タケミナカタの神)と妃神の八坂刀売神(ヤサカトメの神)とされます。

諏訪大社公式サイトによると、
「延長5年(927年)にまとめられた神名帳には南方刀美神社(みなかたとみのかみのやしろ)と記され」
とあるので、ミナカタとかトミとかそう呼ばれる神を祀っていたものと思われます。

このタケミナカタは、古代の日本神話のハイライト「国譲り」のエピソードでよく知られる神です。

『古事記』での話を要約すると・・・、


建御名方神は大国主命の御子神(みこがみ:神の子息)。諏訪の古社・手長神社にあった神系図より

日本の国土を造り上げた大国主命(オオクニヌシ:出雲の神)に、この国を譲り渡せと迫る武御雷神(タケミカヅチ)。
これに対抗して、大国主命の息子・タケミナカタが、タケミカヅチに戦いを挑みます。試合会場は出雲。
でもこの戦い、肉弾戦のタケミナカタ(おそらく原始的な相撲のイメージか)に対して、腕を剣に変形させて戦ったりするタケミカヅチがまさにターミネーターT-1000みたいな戦い方で歯が立ちません。

あえなく惨敗してタケミナカタは諏訪の地に逃げ込みます。
そしたら、タケミカヅチが諏訪まで追いかけてくるんですよ。
もうジェームズ・キャメロン監督『古事記』読んだんかってくらい、ターミネーターばりの執念深さ。

そこでタケミナカタ「もうこの地を出ません」と降参します。
タケミナカタ側にしてみればちょっと残念なエピソードですけど、あくまで神話ですのでね。
その後の歴史では、タケミナカタもタケミカヅチとならぶ最強の武神として武田信玄など地域の戦国武将に崇敬されます。

ちなみに、このタケミナカタという神は、日本の正史とされる『日本書紀』にはまったく登場しないんですよね。
その理由はわかりませんが、オフィシャルな文書にあまりマイナスイメージの話はちょっと…とか、地域に配慮したんでしょうかね。

実際、諏訪の現地取材とか、神社の公式サイトでも、タケミナカタのエピソードがあまり表に出ないように感じました。
でもこれ、神話はしょせん奈良の都で作られた話でありまして、中央の神話だけでは語られない諏訪ならではの深いナゾがあるようなんですよね。

むしろ地元からみればタケミナカタが突然諏訪にやってきたことで、地元古来の祭祀勢力(手長神社など?)と摩擦があったみたいですし。
祭政一致の時代、どうも支配勢力の入れ替わりが見え隠れします。


立派過ぎてカメラに収まりきらない、本宮一の御柱

そんなタケミナカタをご祭神とする諏訪大社、上社本宮。しかし本殿はナシ。
ご祭神はどこにいるのか・・・?

しかし、境内を歩くと発見がありました。次週また。


本来の参詣入口だった「入口御門」。ここから奥にナゾを解くカギが…? 画面右には二の御柱が立つ

それでは聴いてください。
ピチカート・ファイヴで「陽の当たる大通り」(RIP 信藤三雄さん)。



参考 諏訪大社公式サイト
http://suwataisha.or.jp/



(過去記事)
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/

諏訪・神仏の旅① 「万治の石仏」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221129-2/

諏訪・神仏の旅② 諏訪大社の本地仏-普賢と千手観音
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221206-2/
諏訪・神仏の旅③ 諏訪大社ゆかりの仏像たち
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230110-2/

諏訪・神仏の旅④ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その2-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230117-2/

諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その3-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/

諏訪・神仏の旅⑥ 諏訪大社のご神体がお寺にあった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230131-2/

諏訪・神仏の旅⑦ 諏訪の地酒めぐりと八剱神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230207-2/


---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m