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第326回 諏訪・神仏の旅⑪ 何がある?上社の参拝方向のナゾを解け

”いったい何に向かって拝んでいるんだろう--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。春到来、音楽のほうの出番が続く季節になりました。記事末の出演情報ぜひチェックして、お越しください。

そんな中、ここでは長野・諏訪の旅を続けて書いております。

このシリーズの⑨で、諏訪大社のうち上社本宮(かみしゃほんみや)の参拝方向のナゾをご紹介しました(記事末に過去記事リンクあり)。

図のとおり、四脚門から「硯石」と呼ばれる磐座への参拝方向と、
布橋を進んで参拝エリアをUターンして拝殿に向かう方向と、直角に交差しています。


この図で緑と紫の線が拝殿に向かって拝礼する方向ですが、拝殿の背後に何があるのか?

四脚門-硯石のライン(図の赤)は磐座を拝む形でわかりやすいのですが、
拝殿に向かうライン(図の緑と紫)は、その先に本殿もご神体も存在せず、結局何をもってこのラインを設置したのか、ナゾなんですよね。
(中世にはご神体として仏塔(御鉄塔)があったが撤去された。その話も過去記事で)


四脚門から硯石はこんなふうに見える。磐座を礼拝するという構図はわかりやすい

実際ここに立ってお参りしてきましたが、拝殿が立派なのでふつうの神社と同じ感覚で二礼二拍手の拝礼をしますけれども、よくよく考えると、
「いったい何に向かって拝んでいるんだろう」
と素朴なギモンが浮かびます。


幣拝殿の正面。上の図でいう紫と緑の矢印に向いて撮影。この背後に何があるのかというのがギモン

そこで、今回は地元で諏訪信仰を研究されている「スワニミズム事務局長」の石埜三千穂さんにお話を伺いました。
私が昨秋取材した「諏訪神仏プロジェクト」の実行委員会企画局長も務めていらっしゃいます。


各地の神社では、聖なる山を礼拝対象とすることが多いので、この地域の聖山「守屋山」が関係しているのではないかという説がありますが…。

(石埜三千穂さん:以下敬称略)「守屋山の山頂周辺は大社の境内地ではなく、また、そうであったという記録もありません。また、諏訪神社(大社)で祭祀をおこなったという記録もありません」

方角もずれているし、この説は(よく言われているみたいですが)当てはまらないようです。

では、拝殿のある方向軸に何があるのでしょうか?

(石埜)「これには諸説あります」

石埜さんから、4つの説を紹介してもらいました。
Googleマップで線を引いてみたので、それを見ながらご紹介しましょう。
(地図の赤い線の左上が始点(拝殿)で、右下(南東)方向に参拝ラインが伸びます)



第1は、●神宮寺を向いている説
このシリーズで書いてきたように、諏訪大社の境内には神宮寺が建立されていました。上社本宮の場合、たしかに拝殿の背後に寺院施設が並びます。写真ごらんください。
ただ、「本地堂の向きに整合性がない」(石埜)とのこと。


上社本宮の東御門に掲げてある「明治維新前の諏訪大社上社と神宮寺」看板がわかりやすい。右側の黄色い部分が現在の神社施設で、幣拝殿を赤線で囲みました。その東側(写真左側)に神宮寺関連寺院が建ちならんでいた。「本地堂」は画面上の斜めに建っている普賢堂のこと

第2は、●上社前宮を向いている説
これもネットでよくみられる説です。軸線に近いところにありますが、ぴったりではありません。
「大祝(おおほうり)の居館と理解するほうがわかりやすい」と石埜さん。
大祝もこの連載でちょっと出ましたが、諏訪では現人神として拝まれた祭祀者で、その館(前宮神殿(ごうどの)というところ)がたしかに軸線に近いように見えます。

第3は、●上社御射山を向いている説
御射山(みさやま)は、諏訪大社 下社秋宮(しもしゃあきみや)の背後にあり諏訪信仰の大元締めみたいな聖地として知られますが、今回紹介している上社の側にも「御射山社」という神社が諏訪郡富士見町にあります。上社本宮の拝殿からの線から南にずれますが、距離が離れているのでまあなんとなくそっちの方向かなという印象です。

第4は、●鎌倉を向いている説
鎌倉まで線を伸ばすまでもなく、線上にはないことがわかりますけど、なんとなーくそっちの方向にはあるという印象です。諏訪氏が鎌倉幕府の御家人で、鎌倉と深い縁があったことから言われるようになったんでしょうか。石埜さんも「大胆説」とおっしゃるくらいの飛躍した説ですけど、こういう話嫌いじゃないです(笑)。

そんなわけで、どれも決定打はありません。ピンときた説はあるでしょうか?

こういうものは、謎めいているのをいろいろ想像するのが楽しいので(あんまりスピリチュアルに走りすぎるとめんどくさいんですけど)、歴史ミステリーが好きなみなさんのお話をもっと聞いてみたいと思います。


上社本宮を後にして振り向くと、「見ているぞ」と言わんばかりの勢いで山肌から霧が立ち上っていました

御射山信仰、大祝、聞きなれないキーワードがいくつも出てきて、諏訪の謎は深まるばかり。
本当に、諏訪の信仰世界は一筋縄ではいきませんね。
そろそろまとめに入りたいと思います。いやまとめられるのか。
 
それでは聴いてください。
DIOで「Holy Diver」。




(参考)
諏訪神仏プロジェクト 石埜三千穂さんに聞く(長野新聞)
http://www.nagano-np.co.jp/articles/99299


(過去記事)
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/

諏訪・神仏の旅① 「万治の石仏」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221129-2/

諏訪・神仏の旅② 諏訪大社の本地仏-普賢と千手観音
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221206-2/

諏訪・神仏の旅③ 諏訪大社ゆかりの仏像たち
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230110-2/

諏訪・神仏の旅④ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その2-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230117-2/

諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その3-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/

諏訪・神仏の旅⑥ 諏訪大社のご神体がお寺にあった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230131-2/

諏訪・神仏の旅⑦ 諏訪の地酒めぐりと八剱神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230207-2/

諏訪・神仏の旅⑧ ”ターミネーター”と戦った神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230214-2/

諏訪・神仏の旅⑨ 御柱が護る磐座をさがせ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230221-2/

諏訪・神仏の旅⑩ 今も現役の昭和モダン建築・片倉館
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230228-2/



---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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