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第329回 大安寺のオシャレ仏像が語る「木彫復活」のナゾ①
”「なんで奈良の仏像は木彫りじゃないの?」--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。いよいよ今週の渋谷・円山町芸者さんとの共演を控え、今からもう緊張している宮澤やすみです。なかなか無い機会ですのでね。
そんな中、先日訪れた東京国立博物館。お目当ては特別展「東福寺」(前々回記事)と、常設展の「大安寺の仏像」も見てきました。仏像好きアナウンサーの久保沙里菜さんも同行。
「ザ・ブッツ第5のメンバー」とも言われる(?)逸材、久保沙里菜さん
大安寺の仏像、天部の像なんかはずんぐりしてちょっとかわいらしい造形ではあるんだけど、近づいてみると鎧とか沓(くつ)とか、後の木彫像にはないような細かいデザインがあしらってあるんですよ。
持国天。動きの表現はあまりないものの、胸の甲に細かい文様が精緻に彫られている
今から約1250年前、こんなに精緻に彫刻された仏像が、今に残っていること自体がおどろきです。
奈良の都の華やかな天平文化の時代のもので、このあと木彫の仏像がどんどん出来ていく、そのさきがけです。
「奈良時代のものとは思えないほど精巧な細やかな彫りが印象的でした」(久保沙里菜)
沓の甲に宝蔵華文が彫られていて非常におしゃれ。裾にたまる布のタプタプ感も見事表現されている
先ほど見た細かいデザインは、当時主流だった銅像などに見られるものに似ています。木彫りで細かく再現したんですねきっと(記事末の「過去記事」もご参照)。
大安寺の歴史は古く、飛鳥(藤原京)の時代に日本最初の官寺(国が作った寺)だった大官大寺が、奈良に移転。平城京の都でも広大な伽藍を誇った大寺です。
薬師寺や興福寺と同じ「飛鳥からの移転組」であり、奈良生まれの東大寺より先輩格となりますね。
有名な楊柳(ようりゅう)観音菩薩も東京へお出まし。尊名は後の時代につけられたもので、当初は何だったか不明
今回見た大安寺の仏像が造られた時代は、ちょうど東大寺で大仏造りが始まったり、イケメン仏像で有名な興福寺の阿修羅など、有名仏像がぞくぞく造られた頃です。
ただ、それらは木彫りではなく、銅像とか乾漆(ペースト状にした漆を表面に塗って作る技法)でできています。
一介の仏像ファンだった若いころのわたくし、
「なんで奈良の仏像は木彫りじゃないの?」
と素朴な疑問を抱いていました。
聖観音菩薩。「俳優の鹿賀丈史さんに似ている!」と久保沙里菜さん
そして、大安寺の仏像を知った時、なんだ奈良時代も木彫仏あるじゃんと思いましたが、それにしても少ない。
奈良時代の木彫仏でもうひとつ有名なのが、唐招提寺の仏像ですが、いずれにしても奈良時代後半になります。
銅像や漆で作るのが主流だった奈良の都で突然あらわれた木彫りブーム、何があったんでしょうか?
まず前置きとして、なぜ奈良で木彫りの仏像が造られなかったかというと、おおまかに言うと、
「使える木材が無かったから」
ということです。
もちろん日本の山に木はたくさんあるんだけど、仏像造りには、ある特別な木が必要とされていた。
「特別な木」とは、何でしょうか?
そして、唐招提寺と大安寺には日本の木材で作った仏像があります。
これは、なぜでしょうか?
じつはこの二つのお寺、どちらも鑑真和上に関連したお寺なんですよね。
唐招提寺はご存知のとおり唐から来日した鑑真和上が開いたお寺ですよね。いっぽう大安寺は、その鑑真和上を日本に招聘した僧・普照と栄叡が在籍していたお寺なのです。
さらに、ある論文によると、これらの仏像に鑑真和上が関係しているらしいとの指摘を見つけました。
「鑑真以前」と「鑑真以後」で何があったのか?
次回以降、その謎を解明していきましょう。
考古学展示にて埴輪「腰かける巫女」のマネをする久保沙里菜さん(大安寺とは関係ありません)
それでは聴いてください。
坂本龍一&デヴィッド・シルヴィアンで「禁じられた色彩(Forbidden Colors)」。
(坂本龍一さんのご冥福をお祈りします)
(過去記事)
大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20191029-2/
(参考)
久保沙里菜オフィシャルサイト
https://sarinakuboofficial.themedia.jp/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
【渋谷花街円山町の面影】
4月8日(土曜)18:30〜
かつて花街だった渋谷・円山町に思いを馳せてBunkamura近く大人の渋谷、松濤の地域交流センター大向で宮澤やすみが円山芸者小糸姐さん(芸歴75年!)と共演します。お囃子も入ります。入場無料、予約不要。
ご町内の底力発揮で貴重なイベントです。
詳細は↓
http://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。いよいよ今週の渋谷・円山町芸者さんとの共演を控え、今からもう緊張している宮澤やすみです。なかなか無い機会ですのでね。
そんな中、先日訪れた東京国立博物館。お目当ては特別展「東福寺」(前々回記事)と、常設展の「大安寺の仏像」も見てきました。仏像好きアナウンサーの久保沙里菜さんも同行。
「ザ・ブッツ第5のメンバー」とも言われる(?)逸材、久保沙里菜さん
大安寺の仏像、天部の像なんかはずんぐりしてちょっとかわいらしい造形ではあるんだけど、近づいてみると鎧とか沓(くつ)とか、後の木彫像にはないような細かいデザインがあしらってあるんですよ。
持国天。動きの表現はあまりないものの、胸の甲に細かい文様が精緻に彫られている
今から約1250年前、こんなに精緻に彫刻された仏像が、今に残っていること自体がおどろきです。
奈良の都の華やかな天平文化の時代のもので、このあと木彫の仏像がどんどん出来ていく、そのさきがけです。
「奈良時代のものとは思えないほど精巧な細やかな彫りが印象的でした」(久保沙里菜)
沓の甲に宝蔵華文が彫られていて非常におしゃれ。裾にたまる布のタプタプ感も見事表現されている
先ほど見た細かいデザインは、当時主流だった銅像などに見られるものに似ています。木彫りで細かく再現したんですねきっと(記事末の「過去記事」もご参照)。
大安寺の歴史は古く、飛鳥(藤原京)の時代に日本最初の官寺(国が作った寺)だった大官大寺が、奈良に移転。平城京の都でも広大な伽藍を誇った大寺です。
薬師寺や興福寺と同じ「飛鳥からの移転組」であり、奈良生まれの東大寺より先輩格となりますね。
有名な楊柳(ようりゅう)観音菩薩も東京へお出まし。尊名は後の時代につけられたもので、当初は何だったか不明
今回見た大安寺の仏像が造られた時代は、ちょうど東大寺で大仏造りが始まったり、イケメン仏像で有名な興福寺の阿修羅など、有名仏像がぞくぞく造られた頃です。
ただ、それらは木彫りではなく、銅像とか乾漆(ペースト状にした漆を表面に塗って作る技法)でできています。
一介の仏像ファンだった若いころのわたくし、
「なんで奈良の仏像は木彫りじゃないの?」
と素朴な疑問を抱いていました。
聖観音菩薩。「俳優の鹿賀丈史さんに似ている!」と久保沙里菜さん
そして、大安寺の仏像を知った時、なんだ奈良時代も木彫仏あるじゃんと思いましたが、それにしても少ない。
奈良時代の木彫仏でもうひとつ有名なのが、唐招提寺の仏像ですが、いずれにしても奈良時代後半になります。
銅像や漆で作るのが主流だった奈良の都で突然あらわれた木彫りブーム、何があったんでしょうか?
まず前置きとして、なぜ奈良で木彫りの仏像が造られなかったかというと、おおまかに言うと、
「使える木材が無かったから」
ということです。
もちろん日本の山に木はたくさんあるんだけど、仏像造りには、ある特別な木が必要とされていた。
「特別な木」とは、何でしょうか?
そして、唐招提寺と大安寺には日本の木材で作った仏像があります。
これは、なぜでしょうか?
じつはこの二つのお寺、どちらも鑑真和上に関連したお寺なんですよね。
唐招提寺はご存知のとおり唐から来日した鑑真和上が開いたお寺ですよね。いっぽう大安寺は、その鑑真和上を日本に招聘した僧・普照と栄叡が在籍していたお寺なのです。
さらに、ある論文によると、これらの仏像に鑑真和上が関係しているらしいとの指摘を見つけました。
「鑑真以前」と「鑑真以後」で何があったのか?
次回以降、その謎を解明していきましょう。
考古学展示にて埴輪「腰かける巫女」のマネをする久保沙里菜さん(大安寺とは関係ありません)
それでは聴いてください。
坂本龍一&デヴィッド・シルヴィアンで「禁じられた色彩(Forbidden Colors)」。
(坂本龍一さんのご冥福をお祈りします)
(過去記事)
大安寺の本尊は台座がすごかった 奈良・大安寺の旅その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20191029-2/
(参考)
久保沙里菜オフィシャルサイト
https://sarinakuboofficial.themedia.jp/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
【渋谷花街円山町の面影】
4月8日(土曜)18:30〜
かつて花街だった渋谷・円山町に思いを馳せてBunkamura近く大人の渋谷、松濤の地域交流センター大向で宮澤やすみが円山芸者小糸姐さん(芸歴75年!)と共演します。お囃子も入ります。入場無料、予約不要。
ご町内の底力発揮で貴重なイベントです。
詳細は↓
http://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m