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第386回 ガンダーラ仏 菩薩の見分け方を知る -平山郁夫シルクロード美術館-
”半跏思惟で観音?弥勒じゃないの? と思ってしまい--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。6月のソロライブ、少しずつご予約が入っています。初めての人もこの機会にぜひご検討ください(詳細記事末ご参照)。
そんな中、先日は、山梨県北杜市まで、平山郁夫シルクロード美術館の取材に赴きました。
写真は内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。
仏像の原点・ガンダーラ仏が並ぶ
平山郁夫の作品と、平山氏が集めたシルクロードの美術品が展示されています。
なかでも、ガンダーラやアフガニスタンの仏像などがとても見ごたえありました
こちらの仏像、左が”菩薩像”、右が”弥勒菩薩像”だそうです。
これ、いったいどこに違いがあるのでしょうか?
菩薩像と弥勒菩薩のちがいは?
学芸室長の大塚裕一さんに聞いてみると、しっかりと見分け方のルールがあることがわかりました。
その特徴は、頭部にあります。
冠(またはターバン)があるのが「菩薩」、長髪をまとめているのが「弥勒」だそうです。あと弥勒は水瓶をもつ例もあるそう。
小さいけど手に水瓶をぶらさげているので弥勒。《弥勒菩薩坐像》ガンダーラ、クシャン朝 2-4世紀
もう少し話を掘り下げてみましょう。
仏教発祥からインドでは長い間偶像崇拝が許されなかったのですが、パゴダ(仏塔)への信仰が高まるとパゴダの周囲に彫刻を施します。そこに刻まれたのがブッダの姿で、これが仏像造りのはじまりだそうです。
さらに、大乗仏教の考え方が高まると、ブッダ(=仏、如来)だけでなく、菩薩の姿も造られた(そのへんの詳細は検索してね)。菩薩の姿は在世中の釈迦の姿をモデルに造られたのでした。
王族の一員であった釈迦の姿で表現されたのが「菩薩」。だから冠(またはターバン)が頭にあります。つまり世俗の姿です。
そして、王子の身分を捨て修行中の釈迦の姿で表現されたのが「弥勒」だそうです。つまり宗教者の姿。
冠はなく、長い髪の毛をまとめています(ギリシャの若者の髪型だそう)。
王族の姿=菩薩(左)、宗教者の姿=弥勒(右) ガンダーラ、クシャン朝 2-3世紀
どれも2~3世紀クシャン朝時代の貴重な仏像で、ざっくり「菩薩」という表記しかありませんが、その中で「弥勒」は特別だったのですね。
ちなみに観音も早い時期に成立していたらしいですが、蓮華を持つのが特徴だそうです。
館の公式サイトに2-3世紀ガンダーラの《観音菩薩半跏思惟像》もありますが、日本の仏像だけ見てきた人は”半跏思惟で観音?弥勒じゃないの?”と思ってしまいますね。これも蓮華を持つことが見分けるポイントだそうです。
こうした姿や持物のルールも時代や地域で変わっていったのでしょうか。
取材時の館内には、宝珠を持つ菩薩像があり、観音のシンボルか?と思ったらこれも”菩薩”表記でした。
ただし、その宝珠をもつ両手のポーズは、奈良・法隆寺の救世観音そっくりだと思いました。
右手をひねって宝珠をもつのが救世観音に似ている? 足を交差して座る《菩薩交脚坐像》ガンダーラ、クシャン朝 2-3世紀
菩薩は、他者を救うためにがんばるというのが特徴です。
弥勒も菩薩カテゴリに入る尊格ではありますが、古代インドではマイトレーヤといって、次の仏になることが決まっている特別なお方です。だから、ふつうの菩薩より一歩先をいって出家した修行者の姿で表現されたんでしょうかね。
中国から朝鮮半島を経て、日本に弥勒菩薩が伝わるころは、なぜか半跏思惟の仏像が「弥勒」とされます。宝冠までかぶっているし。これはどうやら朝鮮半島でこの形の弥勒像が人気だったかららしいです。
ガンダーラから日本に至るまで約500年経ってますから、いろいろあったんでしょうね。
開館20周年かつ地元の山梨放送開局70周年記念した
「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」展
が開催中。平山氏のシルクロードにかける情熱が伝わる展示です。
その関連の話は次週ご紹介しましょう。
館のすぐそばにあるローカル線甲斐小泉駅はかわいらしい無人駅。小淵沢からも近い
南アルプスの山々に囲まれ、近くに星野リゾートもあったりする絶好のロケーション。
こんど来るときは夜の星空を見てみたいものです。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「欣喜雀躍」
平山郁夫シルクロード美術館
https://www.silkroad-museum.jp/
「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」展は2024年3月23日(土)~9月9日(月)
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
渋谷の大人エリア・松濤で再始動
【チルやすみ in SHOTO】
宮澤やすみの三味線ソロライブ。
ちいさなバーで、夕暮れ時にまったりと
疲れを癒す、心地よい三味線の音と歌。
三味線好きな方は至近距離で生音をお聴き
いただけるこの機会お見逃しなく。
会場はシックなバー。お茶やお酒とともに
くつろいでお過ごしください。
詳細、ご予約は
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。6月のソロライブ、少しずつご予約が入っています。初めての人もこの機会にぜひご検討ください(詳細記事末ご参照)。
そんな中、先日は、山梨県北杜市まで、平山郁夫シルクロード美術館の取材に赴きました。
写真は内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。
仏像の原点・ガンダーラ仏が並ぶ
平山郁夫の作品と、平山氏が集めたシルクロードの美術品が展示されています。
なかでも、ガンダーラやアフガニスタンの仏像などがとても見ごたえありました
こちらの仏像、左が”菩薩像”、右が”弥勒菩薩像”だそうです。
これ、いったいどこに違いがあるのでしょうか?
菩薩像と弥勒菩薩のちがいは?
学芸室長の大塚裕一さんに聞いてみると、しっかりと見分け方のルールがあることがわかりました。
その特徴は、頭部にあります。
冠(またはターバン)があるのが「菩薩」、長髪をまとめているのが「弥勒」だそうです。あと弥勒は水瓶をもつ例もあるそう。
小さいけど手に水瓶をぶらさげているので弥勒。《弥勒菩薩坐像》ガンダーラ、クシャン朝 2-4世紀
もう少し話を掘り下げてみましょう。
仏教発祥からインドでは長い間偶像崇拝が許されなかったのですが、パゴダ(仏塔)への信仰が高まるとパゴダの周囲に彫刻を施します。そこに刻まれたのがブッダの姿で、これが仏像造りのはじまりだそうです。
さらに、大乗仏教の考え方が高まると、ブッダ(=仏、如来)だけでなく、菩薩の姿も造られた(そのへんの詳細は検索してね)。菩薩の姿は在世中の釈迦の姿をモデルに造られたのでした。
王族の一員であった釈迦の姿で表現されたのが「菩薩」。だから冠(またはターバン)が頭にあります。つまり世俗の姿です。
そして、王子の身分を捨て修行中の釈迦の姿で表現されたのが「弥勒」だそうです。つまり宗教者の姿。
冠はなく、長い髪の毛をまとめています(ギリシャの若者の髪型だそう)。
王族の姿=菩薩(左)、宗教者の姿=弥勒(右) ガンダーラ、クシャン朝 2-3世紀
どれも2~3世紀クシャン朝時代の貴重な仏像で、ざっくり「菩薩」という表記しかありませんが、その中で「弥勒」は特別だったのですね。
ちなみに観音も早い時期に成立していたらしいですが、蓮華を持つのが特徴だそうです。
館の公式サイトに2-3世紀ガンダーラの《観音菩薩半跏思惟像》もありますが、日本の仏像だけ見てきた人は”半跏思惟で観音?弥勒じゃないの?”と思ってしまいますね。これも蓮華を持つことが見分けるポイントだそうです。
こうした姿や持物のルールも時代や地域で変わっていったのでしょうか。
取材時の館内には、宝珠を持つ菩薩像があり、観音のシンボルか?と思ったらこれも”菩薩”表記でした。
ただし、その宝珠をもつ両手のポーズは、奈良・法隆寺の救世観音そっくりだと思いました。
右手をひねって宝珠をもつのが救世観音に似ている? 足を交差して座る《菩薩交脚坐像》ガンダーラ、クシャン朝 2-3世紀
菩薩は、他者を救うためにがんばるというのが特徴です。
弥勒も菩薩カテゴリに入る尊格ではありますが、古代インドではマイトレーヤといって、次の仏になることが決まっている特別なお方です。だから、ふつうの菩薩より一歩先をいって出家した修行者の姿で表現されたんでしょうかね。
中国から朝鮮半島を経て、日本に弥勒菩薩が伝わるころは、なぜか半跏思惟の仏像が「弥勒」とされます。宝冠までかぶっているし。これはどうやら朝鮮半島でこの形の弥勒像が人気だったかららしいです。
ガンダーラから日本に至るまで約500年経ってますから、いろいろあったんでしょうね。
開館20周年かつ地元の山梨放送開局70周年記念した
「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」展
が開催中。平山氏のシルクロードにかける情熱が伝わる展示です。
その関連の話は次週ご紹介しましょう。
館のすぐそばにあるローカル線甲斐小泉駅はかわいらしい無人駅。小淵沢からも近い
南アルプスの山々に囲まれ、近くに星野リゾートもあったりする絶好のロケーション。
こんど来るときは夜の星空を見てみたいものです。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「欣喜雀躍」
平山郁夫シルクロード美術館
https://www.silkroad-museum.jp/
「平山郁夫 ―仏教伝来と旅の軌跡」展は2024年3月23日(土)~9月9日(月)
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
渋谷の大人エリア・松濤で再始動
【チルやすみ in SHOTO】
宮澤やすみの三味線ソロライブ。
ちいさなバーで、夕暮れ時にまったりと
疲れを癒す、心地よい三味線の音と歌。
三味線好きな方は至近距離で生音をお聴き
いただけるこの機会お見逃しなく。
会場はシックなバー。お茶やお酒とともに
くつろいでお過ごしください。
詳細、ご予約は
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m