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第388回 溝口神社にあった仏像たち-大山道 寺社さんぽ-
”斜面を登るごとに神仏習合の3ステップとでもいいますか--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。6月のソロライブ、おかげさまで席が埋まってきています。でももし気になる方はあきらめずご連絡ください。小唄のほかアラブやヨーロッパの曲も演奏準備中です(詳細記事末ご参照)。
そんな中、東京は主要五街道だけでなくさまざまな道の起点になってきましたが、赤坂から箱根へ向かって伸びる古道「矢倉沢往還(やぐらさわおうかん)」もそのひとつ。
神奈川県の大山への参詣道としても重要な道だったそうで、通称「大山道(おおやまみち)」とも言います。
奈良時代にはすでに街道が設けられていた。川崎市大山街道ふるさと館にて
じつは私もこの「大山道」沿いに住んでいるのですが、信仰の道だけあって、今でも大山道沿いに大きな神社やお寺があってミニ歴史散歩を楽しんでいます。
今回は、大山道のうち東京から多摩川を渡ったところにある溝の口を歩きました。
そこにある鎮守社が溝口神社です。
現在の溝口神社は天照大神と日本武尊を祀る
現在は天照大神を主祭神としたお伊勢さん系神社ですが、いろいろ調べると、やっぱり…
仏教色の強い、神仏習合的な神社だったそうです。
すっかり神仏習合、分離のナゾに魅了されている私としては格好の場所であります。
溝口神社の名称は、明治の神仏分離で改称されたもので、それ以前は「赤城社」「赤城明神」と呼ばれていました。
大正末期の溝の口(旧高津村)地図。玉川から南へ街道があり、商家が並ぶ。川崎市大山街道ふるさと館にて
そして溝口赤城社の由来によると、ご神体として弁財天と毘沙門天が安置されたそうです。
興味深いですね。神社に仏像が祀られていたと。
いちおう神社なので、「本尊」と呼ばず「神体」と呼ぶのです。
ちなみに隣村・旧久地(くじ)村の鎮守である久地神社も、溝口神社と同様に弁財天と毘沙門天が安置されていたそうです。
久地神社社殿
多摩川沿いの斜面に久地神社、その真裏には今も久地弁財天、さらにその奥に久地不動尊があり、斜面を登るごとに神仏習合の3ステップとでもいいますか、神社からお寺へとお参りできるのでした。
久地神社の真裏にある久地弁財天。私有地になっているようで一般の人は近寄れないが遠巻きに拝する
さらにその奥にある久地不動尊 守護尊寺。大正期に浅草・吉原から移転したお寺で久地神社の歴史とは関連がみられないが、境内の石仏がみごたえある
さて、赤城神社というのは、現在の群馬県、上州の赤城山を神体とする山岳信仰の神社です。
伝説によると、日光二荒山の神と戦ったとかなんとか。
こうした山岳信仰は、山そのものがご神体であるのが、中世になると仏教と混淆し、山の神に対する本地仏が設定されるというのがよくあるパターンです。
赤城山の場合、火口湖のふたつの沼、大沼、小沼も神格化され、大沼の本地仏が千手観音、小沼が虚空蔵菩薩、地蔵岳は地蔵菩薩と、三つの仏があてがわれて赤城神社に仏像が祀られました。
溝の口赤城社では弁財天と毘沙門天ということで、赤城の本地仏とは異なるのですが、どうしてなんでしょうね。
溝口神社社殿
ここからは想像ですが、観音の脇侍として弁財天や毘沙門天を置くことはあるので、本社と末社の関係で脇侍仏を神体としたのでしょうか。
ここ溝の口の赤城社が、明治の神仏分離で仏教色を廃して溝口神社になるとき、弁財天と毘沙門天は宗隆寺に移設されたとのこと。現在はどうなっているのかわかりませんが、また新しいことがわかったらここでご紹介したいと思います。
そんな神仏習合・分離のいきさつを語る、早稲田大学オープンカレッジの講座が、7月から始まります。
一般受付も始まっているので、よかったらご参加ください。
【神と仏 1300年の愛憎関係】
-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/61917/
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「川のほとりで」
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
渋谷の大人エリア・松濤で再始動
【チルやすみ in SHOTO】
宮澤やすみの三味線ソロライブ。
ちいさなバーで、夕暮れ時にまったりと
疲れを癒す、心地よい三味線の音と歌。
三味線好きな方は至近距離で生音をお聴き
いただけるこの機会お見逃しなく。
会場はシックなバー。お茶やお酒とともに
くつろいでお過ごしください。
詳細、ご予約は
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。6月のソロライブ、おかげさまで席が埋まってきています。でももし気になる方はあきらめずご連絡ください。小唄のほかアラブやヨーロッパの曲も演奏準備中です(詳細記事末ご参照)。
そんな中、東京は主要五街道だけでなくさまざまな道の起点になってきましたが、赤坂から箱根へ向かって伸びる古道「矢倉沢往還(やぐらさわおうかん)」もそのひとつ。
神奈川県の大山への参詣道としても重要な道だったそうで、通称「大山道(おおやまみち)」とも言います。
奈良時代にはすでに街道が設けられていた。川崎市大山街道ふるさと館にて
じつは私もこの「大山道」沿いに住んでいるのですが、信仰の道だけあって、今でも大山道沿いに大きな神社やお寺があってミニ歴史散歩を楽しんでいます。
今回は、大山道のうち東京から多摩川を渡ったところにある溝の口を歩きました。
そこにある鎮守社が溝口神社です。
現在の溝口神社は天照大神と日本武尊を祀る
現在は天照大神を主祭神としたお伊勢さん系神社ですが、いろいろ調べると、やっぱり…
仏教色の強い、神仏習合的な神社だったそうです。
すっかり神仏習合、分離のナゾに魅了されている私としては格好の場所であります。
溝口神社の名称は、明治の神仏分離で改称されたもので、それ以前は「赤城社」「赤城明神」と呼ばれていました。
大正末期の溝の口(旧高津村)地図。玉川から南へ街道があり、商家が並ぶ。川崎市大山街道ふるさと館にて
そして溝口赤城社の由来によると、ご神体として弁財天と毘沙門天が安置されたそうです。
興味深いですね。神社に仏像が祀られていたと。
いちおう神社なので、「本尊」と呼ばず「神体」と呼ぶのです。
ちなみに隣村・旧久地(くじ)村の鎮守である久地神社も、溝口神社と同様に弁財天と毘沙門天が安置されていたそうです。
久地神社社殿
多摩川沿いの斜面に久地神社、その真裏には今も久地弁財天、さらにその奥に久地不動尊があり、斜面を登るごとに神仏習合の3ステップとでもいいますか、神社からお寺へとお参りできるのでした。
久地神社の真裏にある久地弁財天。私有地になっているようで一般の人は近寄れないが遠巻きに拝する
さらにその奥にある久地不動尊 守護尊寺。大正期に浅草・吉原から移転したお寺で久地神社の歴史とは関連がみられないが、境内の石仏がみごたえある
さて、赤城神社というのは、現在の群馬県、上州の赤城山を神体とする山岳信仰の神社です。
伝説によると、日光二荒山の神と戦ったとかなんとか。
こうした山岳信仰は、山そのものがご神体であるのが、中世になると仏教と混淆し、山の神に対する本地仏が設定されるというのがよくあるパターンです。
赤城山の場合、火口湖のふたつの沼、大沼、小沼も神格化され、大沼の本地仏が千手観音、小沼が虚空蔵菩薩、地蔵岳は地蔵菩薩と、三つの仏があてがわれて赤城神社に仏像が祀られました。
溝の口赤城社では弁財天と毘沙門天ということで、赤城の本地仏とは異なるのですが、どうしてなんでしょうね。
溝口神社社殿
ここからは想像ですが、観音の脇侍として弁財天や毘沙門天を置くことはあるので、本社と末社の関係で脇侍仏を神体としたのでしょうか。
ここ溝の口の赤城社が、明治の神仏分離で仏教色を廃して溝口神社になるとき、弁財天と毘沙門天は宗隆寺に移設されたとのこと。現在はどうなっているのかわかりませんが、また新しいことがわかったらここでご紹介したいと思います。
そんな神仏習合・分離のいきさつを語る、早稲田大学オープンカレッジの講座が、7月から始まります。
一般受付も始まっているので、よかったらご参加ください。
【神と仏 1300年の愛憎関係】
-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/61917/
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「川のほとりで」
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
渋谷の大人エリア・松濤で再始動
【チルやすみ in SHOTO】
宮澤やすみの三味線ソロライブ。
ちいさなバーで、夕暮れ時にまったりと
疲れを癒す、心地よい三味線の音と歌。
三味線好きな方は至近距離で生音をお聴き
いただけるこの機会お見逃しなく。
会場はシックなバー。お茶やお酒とともに
くつろいでお過ごしください。
詳細、ご予約は
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m