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- 第396回 物語はここから始まる -「神護寺展」五大虚空蔵菩薩-◆読者プレゼントあり◆
第396回 物語はここから始まる -「神護寺展」五大虚空蔵菩薩-◆読者プレゼントあり◆
”国内初の密教尊像で、その後の仏像造りのお手本に--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。栃木で小唄の出演をしてきた宮澤やすみです。出演後は栃木のまつわる興味深い寺社ネタも仕入れたので、こんどご紹介します。
そんな中、前回に続いて、東京国立博物館で開幕した特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」の話です。
写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。
特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」チラシ画像
前回は本尊・薬師如来を紹介(妄想もまじえて)しました。
もうひとつ注目の仏像が五大虚空蔵菩薩です。
神護寺でもっとも古い作例とされる《五大虚空蔵菩薩坐像》(平安時代、9世紀)
もともと仏塔の中に収められていたそうで、それを模してなのか五体の菩薩坐像がぐるりと配置。
そんな展示なので、ぐるぐる廻りながら鑑賞して目を回さないようにしてください。
ただ、五菩薩の目はどうもうつろで、視点が定まらない感じがします。
この平面的な顔はなぜだろう、と前から思っていたのですが、その謎を解明するのが別の展示室にある《高雄曼荼羅》をはじめとする密教の図像なのでした。
《高雄曼荼羅》は、
「空海在世中に造られた、現存最古の両界曼荼羅」
と図録に解説されているように、非常に貴重な国宝です。それ以外にも、神護寺展では密教隆盛の発端となる曼荼羅や図像集がいくつも展示されています。
展示風景より、国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)胎蔵界 平安時代・9 世紀 京都・神護寺蔵【胎蔵界展示期間】7/17~8/13
こうして絵に描かれた尊像は、もちろん平面的でありますが、姿勢、持ち物、アクセサリーなど詳細に厳密に描かれています。
「白描図」と呼ばれるこれらの尊像の図絵が、仏像が造るときの仕様書みたいなものになるでした。
そこから作られた造形が、この五大虚空蔵菩薩。
絵で見るよりインパクトは計り知れず、密教の深遠な世界を感じ取ることができる(気がします)。
なにより、弘法大師・空海自身が、密教は言葉だけでは伝わりきらないから絵や造形で見せないと、と言っているので密教の世界は絢爛豪華で複雑な仏像世界が繰り広げられるのでした。
展示室内風景 第5章 神護寺の彫刻
神護寺の像は、虚空蔵菩薩としては日本で最古の作例とされる、貴重な密教尊像。
初期密教の仏像造りをひもとく貴重な例といえるそうです。
同じ時代の密教像では、大阪・観心寺の秘仏・如意輪観音坐像や、京都・東寺講堂の密教仏像群があげられるそうで、
仏像ファンなら見たことある人が多いのではないでしょうか。超メジャー級仏像だから検索して画像を見てください。
たしかに、観心寺の像の目つきは今回の虚空蔵さんと似ているように思います。さらにどの仏像もふくよかな肌と精緻な衣服表現がリアル。
これは、この頃流行した木彫(一木造)と、この前の奈良時代に流行した乾漆での精緻な彫刻とが合わさった、いいとこどりの仏像造りから生まれた造形なんですよね。
そしてどれも、国内初の密教尊像という位置づけで、その後の仏像造りのお手本になっていきます。
ガンダムで言うと、ファースト・ガンダム RX-78と同じ位置づけですね。物語はここから始まる。
…急に話が飛びましたが、空海がもたらした密教がすごい勢いで都に広まったわけです。さらに、これだけ質の高い造像は、貴族や朝廷からの援助が集まったからともいえますね。空海すごいですね。
時は9世紀。当時できたてピカピカの都・平安京で「時代の最先端」ともてはやされ、たくさんの予算がつぎ込まれた密教寺院と仏像群。
その、イケイケ具合が想像できるんじゃないでしょうか。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ(THE BUTTZ)で『Fantastic Dystopia』。
創建1200 年記念
特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」
2024 年7 月17 日(水)~ 9 月8 日(日)
東京国立博物館 平成館
公式サイト
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/jingoji/
◆読者プレゼント◆
本展覧会の招待券を合計6枚プレゼント。
応募方法:
X(旧ツイッター)に、ハッシュタグ #宮澤やすみ を付けてこの記事をシェアしてください。
宮澤やすみ広報部からご連絡し、郵送します。
無くなり次第終了します。
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ 今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。栃木で小唄の出演をしてきた宮澤やすみです。出演後は栃木のまつわる興味深い寺社ネタも仕入れたので、こんどご紹介します。
そんな中、前回に続いて、東京国立博物館で開幕した特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」の話です。
写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。
特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」チラシ画像
前回は本尊・薬師如来を紹介(妄想もまじえて)しました。
もうひとつ注目の仏像が五大虚空蔵菩薩です。
神護寺でもっとも古い作例とされる《五大虚空蔵菩薩坐像》(平安時代、9世紀)
もともと仏塔の中に収められていたそうで、それを模してなのか五体の菩薩坐像がぐるりと配置。
そんな展示なので、ぐるぐる廻りながら鑑賞して目を回さないようにしてください。
ただ、五菩薩の目はどうもうつろで、視点が定まらない感じがします。
この平面的な顔はなぜだろう、と前から思っていたのですが、その謎を解明するのが別の展示室にある《高雄曼荼羅》をはじめとする密教の図像なのでした。
《高雄曼荼羅》は、
「空海在世中に造られた、現存最古の両界曼荼羅」
と図録に解説されているように、非常に貴重な国宝です。それ以外にも、神護寺展では密教隆盛の発端となる曼荼羅や図像集がいくつも展示されています。
展示風景より、国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)胎蔵界 平安時代・9 世紀 京都・神護寺蔵【胎蔵界展示期間】7/17~8/13
こうして絵に描かれた尊像は、もちろん平面的でありますが、姿勢、持ち物、アクセサリーなど詳細に厳密に描かれています。
「白描図」と呼ばれるこれらの尊像の図絵が、仏像が造るときの仕様書みたいなものになるでした。
そこから作られた造形が、この五大虚空蔵菩薩。
絵で見るよりインパクトは計り知れず、密教の深遠な世界を感じ取ることができる(気がします)。
なにより、弘法大師・空海自身が、密教は言葉だけでは伝わりきらないから絵や造形で見せないと、と言っているので密教の世界は絢爛豪華で複雑な仏像世界が繰り広げられるのでした。
展示室内風景 第5章 神護寺の彫刻
神護寺の像は、虚空蔵菩薩としては日本で最古の作例とされる、貴重な密教尊像。
初期密教の仏像造りをひもとく貴重な例といえるそうです。
同じ時代の密教像では、大阪・観心寺の秘仏・如意輪観音坐像や、京都・東寺講堂の密教仏像群があげられるそうで、
仏像ファンなら見たことある人が多いのではないでしょうか。超メジャー級仏像だから検索して画像を見てください。
たしかに、観心寺の像の目つきは今回の虚空蔵さんと似ているように思います。さらにどの仏像もふくよかな肌と精緻な衣服表現がリアル。
これは、この頃流行した木彫(一木造)と、この前の奈良時代に流行した乾漆での精緻な彫刻とが合わさった、いいとこどりの仏像造りから生まれた造形なんですよね。
そしてどれも、国内初の密教尊像という位置づけで、その後の仏像造りのお手本になっていきます。
ガンダムで言うと、ファースト・ガンダム RX-78と同じ位置づけですね。物語はここから始まる。
…急に話が飛びましたが、空海がもたらした密教がすごい勢いで都に広まったわけです。さらに、これだけ質の高い造像は、貴族や朝廷からの援助が集まったからともいえますね。空海すごいですね。
時は9世紀。当時できたてピカピカの都・平安京で「時代の最先端」ともてはやされ、たくさんの予算がつぎ込まれた密教寺院と仏像群。
その、イケイケ具合が想像できるんじゃないでしょうか。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ(THE BUTTZ)で『Fantastic Dystopia』。
創建1200 年記念
特別展「神護寺ー空海と真言密教のはじまり」
2024 年7 月17 日(水)~ 9 月8 日(日)
東京国立博物館 平成館
公式サイト
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/jingoji/
◆読者プレゼント◆
本展覧会の招待券を合計6枚プレゼント。
応募方法:
X(旧ツイッター)に、ハッシュタグ #宮澤やすみ を付けてこの記事をシェアしてください。
宮澤やすみ広報部からご連絡し、郵送します。
無くなり次第終了します。
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ 今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m