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第398回 富士山一望! 葉山・鐙摺の供養塔ー旗立山で今ふたたびの「鎌倉殿」

”まさにこの地で首を刎ねられたんだそうです--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。世間はお盆で帰省された方、通常通りお仕事の方、いろいろかと思います。
いずれにしても、酷暑でぐったりしていると思うので、なるべく負担の少ない話を。僕もぐったりしています。

私の出身は神奈川の逗子でして、その南の葉山にも足を延ばして散歩することがあります。
世間一般ではリゾート地として知られる葉山ですが、人知れず歴史を語るスポットが点在しています。

ここは葉山の「鐙摺(あぶずり)」。海側には葉山マリーナ、山側には老舗料亭の日影茶屋があるところです。


創業300年の老舗 日本料理・日影茶屋

その日影茶屋の駐車場から海側にそびえる小さな丘が「旗立山」もしくは「鐙摺山」といって、平安末期~鎌倉時代の歴史スポットです。
平たくいうと、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ゆかりの地でもある。

そもそも鐙摺という地名がめずらしいですよね。
僕も小学生の時遠足で先生がこの地名を言っててピンとこなかった覚えがあります。
由来は源頼朝がこの急な坂道で馬の鐙をこすったことから来ているとか。

それだけ急峻な地形だったという意味が地名に込められているのでしょう。しかし、この小さな山は高さ25m程度。現在は階段と短い山道があって簡単に登れます。


旗立山に設置されている階段

「旗立山」の由来はこの地を治めていた三浦氏に由来します。「鎌倉殿」でいうと佐藤B作さんです。
時は治承4年(1180)源頼朝が平家打倒のために挙兵した初戦で大負けします(石橋山の合戦)。
「鎌倉殿の13人」でもやってましたよね。


日影茶屋の西洋料理部門「ラ・マーレ」のすぐ横にそびえる崖が旗立山(写ってなくてすみません)

このとき三浦軍は頼朝側に加勢できず引き返したんですけど、その途中で地元のライバル畠山氏と合戦になったそうで(小坪合戦)、その時に三浦氏の総帥・三浦義澄(佐藤B作)がここに旗を立てて支援したのが由来とのこと。このくだり大河ドラマではナレーションで済ませられました。


旗立山に上るとこんな感じ。旗を立てる佐藤B作さんの顔が浮かんでくる

ちなみに「小坪」は逗子市の地名でして、この地域は鎌倉、逗子、葉山、横須賀が隣り合っています。
鎌倉幕府が興る直前のこの地域は、おおざっぱにいうと三浦(葉山、横須賀)、畠山(逗子)、和田(鎌倉)の勢力がいたと考えればよいでしょうか。
(以前この連載では鎌倉の和田塚を紹介しました)

いまこの旗立山に上ると、公園のように整備されていて、むこうに江ノ島と富士山が重なって見えてとても良い風景。


旗立山からの眺め。江ノ島と富士山

その一角には、頼朝と八重(新垣結衣さん)の間にできた千鶴丸を殺し、頼朝と対立して処刑された伊東祐親の慰霊碑もあります。大河ドラマだと浅野和之さんが演じて、和解しようとするところで殺されるんですよね。
しかし、現地の案内板によるとまさにこの鐙摺の地で首を刎ねられたんだそうです。


伊藤祐親 供養塔

デートスポットとして人気が出そうな絶景スポットなのにひっそりとしているのは、そういうところだからですかね。

子供の頃は自転車やバスで友達の家に行くだけの通り道だったのが、「鎌倉殿の13人」でこの地域のドラマを見たことで、坂東武者の奮闘と血みどろの戦いがありありとイメージされるようになりました。
と同時に、頼朝役だった大泉洋の顔が浮かんでちょっと笑ってしまうんですけどね。


山を下りて鐙摺港付近にある六地蔵と庚申塔

今さら鎌倉殿の話題になってしまい、こういうのはドラマ放送中に書かないといけませんね。
まあ、お盆にかけて伊東さんの慰霊と、地元への帰省ネタということでした。


それでは聴いてください。
ラウドネスで『Shadows Of War』。



[あわせて読む]
「和田塚」運慶仏の発願者・和田義盛
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230502-2/


--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m