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第401回 火祭りの真っ赤な神輿は”荒ぶる神”-北口本宮浅間神社の神と仏 その1

”真っ赤な神輿は、街の若衆によって荒々しく渡御され--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。小唄のレコーディングを進めている宮澤やすみです。近いうちにリリースをめざして制作中です。

そんな中、連載401回を迎え新たなスタートでございます。

先日は山梨県富士吉田市に行ってきました。
訪れた日は、勇壮な炎の祭りである「吉田の火祭り」二日目。
初日には大松明(たいまつ)の大きな炎で市街は圧巻の様子なのですが(検索するといろいろ出る)、この日はもろもろ終わって静かなもの。変わったお神輿については後ほど。


町のあちこちに火祭りのポスターがある


北口本宮浅間神社の鳥居前にある大松明(画面左)

ここは富士登山の北口の拠点で、富士山信仰の歴史を色濃く残す街。
ここから向かうのは、北口本宮浅間神社です。


富士急・富士山駅にもなぜか鳥居がある

富士山に向かってまっすぐ伸びる坂道は、神社への参道で、その両側に富士への登拝を案内するする御師(おし)の館がいくつも残っています。


御師・大黒屋の館

山を「征服」するレジャー登山は西洋の風習が入ってからのこと。それ以前は、修行のために聖なる山を「登拝」するために山に入りました。そのため御師は山岳ガイドでもあり宗教的な先導者でもありました。
富士山が修験道の聖地として発展すると、富士山信仰のグループ「富士講」が各地に出来て、御師の先導で富士登拝をしました。


富士講の登拝記念碑がたくさん。多くが”三十三度大願成就”などとあり、信仰の篤さが伝わる

さて参道を上がり切り、鬱蒼とした杉並木が広がるとここが北口本宮浅間神社です。


大きな御神木”太郎杉”の奥が豪華な社殿

豪華な拝殿は江戸時代、元文4年(1739)の建築。
奥の東宮はもっと古く、貞応2年(1233)北条義時の造営のち武田信玄が永禄4年(1561)再建というものです。
ここに、三柱のご祭神が祀られます(神名とか細かいことは次回また)。
巨大な鳥居に、巨大なイチョウの御神木。
なんでもかんでもパワーとか言うのは嫌ですが、でも元気が出そうな感じはします。


”太郎杉”の巨大な根元の広がり方に注目。この地のすみずみまで根が届いていそう

お祭りの日だからなのか、お神酒も無料で自由にがぶがぶ飲めちゃいました。それで元気が出たのかもしれませんがね。


大盤振る舞いのお神酒。大祭の日だからと思われます

拝殿にはこれまた巨大な天狗の面が奉納されています。天狗は山岳信仰のシンボル的キャラクター。神道と仏教が入り混じった修験道のキャラクターです。やはり神仏習合のニオイがしますね。
裏側にまわると恵比寿、大黒が祀られています。


この祖霊社の奥から登拝が始まる

そして奥にあるのが村上講(富士講の団体)の祖霊社。ここの鳥居の扁額は「富士山」と書いてあって、ここがまさしく富士山登山道吉田口のはじまりとなります。


鳥居の扁額が「富士山」と書かれている

訪れた日の「吉田の火祭り」ですが、興味深いのは神輿が二種類あることです。
北口本宮浅間神社のホームページによると、よく見る明神型のお神輿には「お浅間様3柱とお諏訪様2柱がお遷しされ」「年配の勢子によって大切に」扱われるそうです。

いっぽう、真っ赤な富士山の形をした神輿は”御影(みかげ)”とか”お山さん”というそうで、「浅間大神の荒霊(あらみたま)が乗る」とのこと。噴火を表す荒ぶる神を載せた真っ赤な神輿は、街の若衆によって荒々しく渡御されるそう。


諏訪の神も乗る明神神輿


荒ぶる浅間神が乗る”お山さん”。重さ約1トン

落ち着いたのと、荒々しいのと、両方あるのはいいですね。
この吉田の地は、浅間社以前から諏訪神社が土地の神として祀られたので、諏訪の神も丁寧に扱われるのです。
「火祭り」の由来も、伝承では国譲りの争いで敗走した諏訪の神を松明でお迎えしたのがはじまり、というお話があるそうです。
富士浅間信仰と、諏訪信仰の両方がある地だとは、これはまたおもしろくなってきました。

諏訪と言えば、この連載でしつこく書いてきた、信州の諏訪大社。ここ吉田は諏訪と地勢的にも近いですし、どちらも甲斐武田氏の勢力範囲であるし、つながっているようですね。

今回”その1”はプロローグで終わっちゃいましたが、”その2”ではブツが、「神社の仏像」が登場します!

それでは聴いてください。
電気グルーヴで「富士山 (LIVE version)」。



■あわせて読む
富士山”下山仏”に会いにいく旅 その1
(静岡県側の取材シリーズ)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220517-2/


北口本宮浅間神社
(火祭りの解説も)
https://www.sengenjinja.jp/index.html


--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみ ソロライブ「チルやすみ in 松濤」
渋谷の大人エリア・松濤のバーでちいさなライブ。
初めての人向けにわかりやすく、楽しく。誰でも遠慮なく。
https://yasumimiyazawa.com/live.html#chillyasumi


くつろげるバーでのライブ。終演後はゆっくりお話しましょう

そのほか今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html

2.
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 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m