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第402回 山の女神と大日如来。消えた富士山の仏教世界-北口本宮浅間神社の神と仏 その2
”神仏分離でそれら富士山頂のお堂はすべて廃絶。仏像も流出しますが--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。海外からのレコーディング案件で、歌の録音をしている宮澤やすみです。日本人さんも気軽に録音依頼していいんですよ。
そんな中、山梨県富士吉田市の神仏訪問記のつづきです。
富士というとこの連載で何度も紹介していますが、縄文の昔から信仰の対象であり、各時代の遺物が残っています。
富士吉田にある「ふじさんミュージアム」にはそうした歴史が学べるので行ってきました。
で、ここの読者としてはやっぱり仏教とのかかわりが気になるところですよね。
北口本宮浅間神社の大鳥居。明治2年まで、撮影地点より手前の参道入口付近に仁王門があったという
富士浅間神社の祭神は、木花開耶姫命(このはなさくやひめ のみこと)という女神です。
さらに、その夫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と、父の大山祇神(おおやまつみのかみ)も合祀されて、あわせて三柱の神が主祭神となり、前回書いたお神輿にも乗ります。
前回記事より、富士山の三柱の神と諏訪の神も乗る明神神輿
とはいえ一番の主役はやっぱりコノハナサクヤヒメ。神仏習合の時代独特の尊像が、ふじさんミュージアムに展示してありました。
時は平安時代。日本に仏教が広まって数百年後のころから、神の本体がホトケであるという考え方(本地垂迹説)が広まり、江戸時代まで続きました。展示室ではそれにもとづいた仏像がありました。
《浅間大菩薩像 元文5年(1740)》祭神・木花開耶姫が前面に坐し上部に本地仏・大日如来が坐す珍しい像。吉田口登山道二合目御室浅間神社にあったもの
そんな神仏習合の時代では、古くから神体山として拝まれた富士に仏教の修行僧が登拝するようになり、地域一帯は修験道の霊場になっていったそう。
修験道は、日本古来の山岳信仰に仏教的要素が混じったものですからね。
展示パネルより。登山道に祀られた仏像・神像。くわしくはミュージアムの展示をご覧あれ
そういえば、北口本宮浅間神社にお参りした時、拝殿に巨大な天狗の面がありました。
天狗こそ修験道のシンボルキャラクター。その性格が現代も社殿に残っているのでした。
それで、富士山頂が密教の胎蔵曼荼羅に描かれる「八葉蓮華」に見立てられて、さまざまな仏像が安置されたのは、以前も紹介しました。
展示パネルより。山頂の仏教世界。いくつかの仏像は下ろされて保管されている
明治の神仏分離でそれら富士山頂のお堂はすべて解体。仏像も流出しますがかろうじて守られた仏像もいくつかあり、「富士下山仏」として各所で保管されています(下記記事参照)。
《大日如来坐像(複製品)》吉田口登山道一合目鈴原大日堂(現・鈴原社)にあったもの
ちなみに、富士吉田の御師は新政府軍の皇族護衛に付いたそうで、それもあってか神仏分離の実行はすんなりといったようです。これ以降、御師の家は神職となり、北口本宮浅間神社内にあった仏像は撤去されました。
明治新政府は廃仏までは指示してなかったのですが、各地でそれぞれの熱量で廃仏の機運が上がります。
ここ富士吉田ではわりと穏便だったようですが、浅間神社鳥居前の仁王門は破壊されたそうです。
《不動明王御正体》吉田口登山道八合目付近にあったもの。こうした御正体が八枚奉納されたらしい
ぼくは日ごろ神仏習合と分離のいきさつや、神社にあった仏像略して「神社の仏像」に興味があるのですが、そうした話に富士山は欠かせないですね。世界遺産登録もこうした信仰史の深みのおかげで「文化遺産」となったのでした。
この話、またおいおい、報告したいと思います。
それでは聴いてください。
スタイル・カウンシルで『シャウト・トゥ・ザ・トップ(Shout To The Top)』。
■あわせて読む
富士山”下山仏”に会いにいく旅 その1
(静岡県側の取材シリーズ)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220517-2/
火祭りの真っ赤な神輿は”荒ぶる神”-北口本宮浅間神社の神と仏 その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240910-2/
ふじさんミュージアム(富士吉田市)
https://www.fy-museum.jp/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ ソロライブ「チルやすみ in 松濤」
渋谷の大人エリア・松濤のバーでちいさなライブ。
初めての人向けにわかりやすく、楽しく。誰でも遠慮なく。
https://yasumimiyazawa.com/live.html#chillyasumi
くつろげるバーでのライブ。終演後はゆっくりお話しましょう
そのほか今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。海外からのレコーディング案件で、歌の録音をしている宮澤やすみです。日本人さんも気軽に録音依頼していいんですよ。
そんな中、山梨県富士吉田市の神仏訪問記のつづきです。
富士というとこの連載で何度も紹介していますが、縄文の昔から信仰の対象であり、各時代の遺物が残っています。
富士吉田にある「ふじさんミュージアム」にはそうした歴史が学べるので行ってきました。
で、ここの読者としてはやっぱり仏教とのかかわりが気になるところですよね。
北口本宮浅間神社の大鳥居。明治2年まで、撮影地点より手前の参道入口付近に仁王門があったという
富士浅間神社の祭神は、木花開耶姫命(このはなさくやひめ のみこと)という女神です。
さらに、その夫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と、父の大山祇神(おおやまつみのかみ)も合祀されて、あわせて三柱の神が主祭神となり、前回書いたお神輿にも乗ります。
前回記事より、富士山の三柱の神と諏訪の神も乗る明神神輿
とはいえ一番の主役はやっぱりコノハナサクヤヒメ。神仏習合の時代独特の尊像が、ふじさんミュージアムに展示してありました。
時は平安時代。日本に仏教が広まって数百年後のころから、神の本体がホトケであるという考え方(本地垂迹説)が広まり、江戸時代まで続きました。展示室ではそれにもとづいた仏像がありました。
《浅間大菩薩像 元文5年(1740)》祭神・木花開耶姫が前面に坐し上部に本地仏・大日如来が坐す珍しい像。吉田口登山道二合目御室浅間神社にあったもの
そんな神仏習合の時代では、古くから神体山として拝まれた富士に仏教の修行僧が登拝するようになり、地域一帯は修験道の霊場になっていったそう。
修験道は、日本古来の山岳信仰に仏教的要素が混じったものですからね。
展示パネルより。登山道に祀られた仏像・神像。くわしくはミュージアムの展示をご覧あれ
そういえば、北口本宮浅間神社にお参りした時、拝殿に巨大な天狗の面がありました。
天狗こそ修験道のシンボルキャラクター。その性格が現代も社殿に残っているのでした。
それで、富士山頂が密教の胎蔵曼荼羅に描かれる「八葉蓮華」に見立てられて、さまざまな仏像が安置されたのは、以前も紹介しました。
展示パネルより。山頂の仏教世界。いくつかの仏像は下ろされて保管されている
明治の神仏分離でそれら富士山頂のお堂はすべて解体。仏像も流出しますがかろうじて守られた仏像もいくつかあり、「富士下山仏」として各所で保管されています(下記記事参照)。
《大日如来坐像(複製品)》吉田口登山道一合目鈴原大日堂(現・鈴原社)にあったもの
ちなみに、富士吉田の御師は新政府軍の皇族護衛に付いたそうで、それもあってか神仏分離の実行はすんなりといったようです。これ以降、御師の家は神職となり、北口本宮浅間神社内にあった仏像は撤去されました。
明治新政府は廃仏までは指示してなかったのですが、各地でそれぞれの熱量で廃仏の機運が上がります。
ここ富士吉田ではわりと穏便だったようですが、浅間神社鳥居前の仁王門は破壊されたそうです。
《不動明王御正体》吉田口登山道八合目付近にあったもの。こうした御正体が八枚奉納されたらしい
ぼくは日ごろ神仏習合と分離のいきさつや、神社にあった仏像略して「神社の仏像」に興味があるのですが、そうした話に富士山は欠かせないですね。世界遺産登録もこうした信仰史の深みのおかげで「文化遺産」となったのでした。
この話、またおいおい、報告したいと思います。
それでは聴いてください。
スタイル・カウンシルで『シャウト・トゥ・ザ・トップ(Shout To The Top)』。
■あわせて読む
富士山”下山仏”に会いにいく旅 その1
(静岡県側の取材シリーズ)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220517-2/
火祭りの真っ赤な神輿は”荒ぶる神”-北口本宮浅間神社の神と仏 その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240910-2/
ふじさんミュージアム(富士吉田市)
https://www.fy-museum.jp/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ ソロライブ「チルやすみ in 松濤」
渋谷の大人エリア・松濤のバーでちいさなライブ。
初めての人向けにわかりやすく、楽しく。誰でも遠慮なく。
https://yasumimiyazawa.com/live.html#chillyasumi
くつろげるバーでのライブ。終演後はゆっくりお話しましょう
そのほか今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m