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第408回 ハニワから見える古代王権の軍事―特別展「はにわ」

”ハニワへの軽い恐怖がわいてきた展示(辛酸なめ子)--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。日光江戸村で小唄を歌ってきた宮澤やすみです。楽しいお仕事でした。

そんな中、東京国立博物館で開幕している特別展「はにわ」取材のつづきです。
写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影したものですが、一般撮影もOKのところが多いです。


展示風景

展示の目玉としては国宝《挂甲の武人》と、それにそっくりで「兄弟」といわれる埴輪が5体集結した展示。学芸員さんによると「この5体が揃うのは我々が生きている間に二度と見られないだろう」とのこと。


《国宝 埴輪 挂甲の武人》群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館蔵

顔つきはやっぱりかわいくて、ぬいぐるみになったり、NHK「おーい!はに丸」のモデルにもなっているキャラクターだから、すごく親しみを感じます。
しかし、この荘厳な展示で、《挂甲の武人》の本来の意味と力強さも感じるのでした。


背中には靫(矢を入れる道具)を背負う。《国宝 埴輪 挂甲の武人》群馬県太田市飯塚町出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館蔵

会場では、コラムニスト・漫画家の辛酸なめ子さんとご一緒したのですが、
なめ子さん、挂甲の武人どうでしたか?

--ハニワは、その脱力系の顔立ちから、勝手にゆるキャラに近い存在だと思っていました。
でも、今回の展示で桂甲の武人などをじっくり拝見して、ハニワたちが武装していて戦闘能力がかなり高いことに気付きました。
日本を武力で制圧していった勢力だということを改めて実感しました
ハニワへの軽い恐怖がわいてきた展示でした--(辛酸なめ子)


辛酸なめ子さん、挂甲の武人に戦慄?

そうですね。ただカワイイだけでなく、この時代の軍事や政治も見えてくる、そんな展示解説もありました。

古墳は、今から1800年くらい前の紀元3世紀から6世紀くらい(場合によっては7世紀)の間、古墳が作られた時代のもの。
この時代がどんな様子だったのかは、古墳の埋納品をみて推測します。


中国で2世紀に造られた太刀に日本で青銅の冠頭が付けられたもの。奈良のヤマト王権の権威を示すか。《金象嵌銘太刀》奈良県天理市 東大寺山古墳出土 古墳時代・4世紀(刀身:中国 後漢時代2世紀) 鉄製 青銅製 金製 東京国立博物館蔵

古墳時代の初期には宗教的な意味合いの埋納物がよく見られたのが、時代が進むと、武具や馬具といった、軍事に直接かかわる物品が古墳から出土しています。


実際の武装を見ると少し怖い想いも《国宝 衝角付冑、頸甲、横矧板鋲留短甲》熊本県和水町 江田船山古墳出土 古墳時代・5~6世紀 鉄製 東京国立博物館蔵

これは、土地の王が宗教的なリーダーであったのが、次第に軍隊のリーダーに変わっていたことを示しているのでしょうか。


これが本物の挂甲。《挂甲》岡山県倉敷市天狗山古墳出土 古墳時代・5~6世紀 鉄製 東京国立博物館蔵


馬は権威と軍事力の象徴でもある。《馬形埴輪》三重県鈴鹿市 石薬師東古墳群63号墳出土 古墳時代・5世紀 三重県蔵(三重県埋蔵文化財センター保管)

かわいいハニワの裏には、日本国内の勢力争いと、その勝者であるヤマト王権の力の誇示が見られるのでした。


ヤマト朝廷と覇権を争ったか。九州の石製埴輪《武装石人》と岩戸山古墳の写真。画面手前の石人は鶴見山古墳出土

そんなヤマト王権は奈良を中心とした勢力で、これが次の時代・飛鳥時代につづいていきます。
飛鳥時代は、仏教が入って来て蘇我氏と物部氏ですったもんだあって、聖徳太子ががんばって、という時代。
その頃だって、前方後円墳ではないにしても古墳を作ってましたもんね。

文化の面で、古墳文化と飛鳥時代はシームレスにつながっていて、たとえば飛鳥の石舞台古墳は、仏教を推進した蘇我馬子の墓(方形墳)と言われます。
当時最新の文化(仏教)と旧来の慣習(古墳)が並行していた時代、面白いですね。


家形埴輪で見られる建築は、神社建築に受け継がれている。《家形埴輪》 大阪府高槻市 今城塚古墳出土 古墳時代・6世紀 大阪・高槻市立今城塚古代歴史館蔵

古墳は、その後の大化2年(646)年に出された「薄葬令〈はくそうれい〉」によって次第に規模が小さくなり、次第に仏教的な墓制に変わります。

巷のニュースでよくみる高松塚古墳やキトラ古墳はさらにその後、7世紀後半から8世紀にかけてのものだから、古墳からするとかなり新しいです。
そのころは中国の陰陽五行思想によって、星図とか四神なんかがあしらわれて、だいぶ中国の影響が見られます。その思想が都造りにも表れて平城京、平安京へと移るというわけで、これで古墳時代からざっと歴史がつながりましたね。


それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「馬子と石舞台」。



挂甲の武人と向き合う辛酸なめ子さん

挂甲の武人 国宝指定50周年記念
特別展「はにわ」
(東京会場)
2024年10月16日(水)〜12月8日(日)
東京国立博物館 平成館
(福岡会場)
2025年1月21日(火)〜5月11日(日)
九州国立博物館 特別展示室
詳細:https://haniwa820.exhibit.jp/


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生き生きと古墳の時代が見えてくる―特別展「はにわ」
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201117-2/




--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみ一門「小唄 in 神楽坂」
初めての人向けにわかりやすく、元芸者の舞踊も華やかに。
くつろぎ和のライブです。
https://www.sfm-shinjuku.jp/kouta2024/


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 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m