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第411回 福を授ける神楽「大黒舞」-大黒天とひょっとこの由来-
”ちょっと怖ろしい神だったのが、日本ではいつのまにか優しい福の神に--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。毎年一番緊張するイベント「小唄 in 神楽坂」の配信も終えて、またもぐったりしている宮澤やすみです。
そんな中、秋は祭りの季節。今年はコロナの制限もなく神社の祭礼で縁日がにぎわいました。
私が住んでいる渋谷でも、ふだんどこにいるんだってくらいたくさんの子供たちが夜な夜な神社境内に集まってたのしそうにしています。
神楽殿では地元の方が音楽演奏(私も出たい。誰か呼んでください)。
そのあとは、大黒舞があるというので見てきました。
渋谷の鎮守・金王八幡宮にて。外国人も多くにぎわう境内
この連載を読んでいる方はご存知のとおり、大黒さま=大黒天はもともとインド由来の仏教の神でありながら、神社によく祀られる、神仏習合の代表みたいなお方です。
おめでたい伝統の大黒舞に、都会の子供達も熱狂
そんなわけで、ここ渋谷の金王八幡宮でも、大黒様が登場してくださいました。
相方には「ひょっとこ」も登場。笛と鳴物(太鼓)の神楽囃子にのせて、コミカルな舞で場をもりあげます。そのあとは大黒様が打ち出の小槌を構え、扇をくるくるまわしながら福を振りまきます。
動画があるのでごらんください。
【動画 約3分】コミカルな ひょっとこ舞の後、大黒様が福を振りまく
子供たちは、舞の最後に行われるお菓子のふるまいが目当て。
たくさんの駄菓子が詰められたダンボール箱を神職が運んできて、そこに手をいれるや舞台に集まった子供たちにぶん投げます。
うわーっと歓声とともにみんなが手をあげてお菓子をゲット。
大黒様の福が込められた特別なお菓子ですからね。大人も子供もいっしょになって必死に受け取ります。
ぼくは後ろのほうで見ていましたが、ちゃんとそっちまで投げてくれるんですよね。見事にお菓子をもらうことができました。
受け取った戦利品? 我が家も福のおすそわけ
さて、唄われた言葉をよく聴いてみると、米俵に乗って、打ち出の小槌をもつ、福の神としての大黒さまの姿を歌っていました。
この連載でも以前書きましたが、もともとはインドの創造と破壊の神・マハーカーラが原型とされる大黒天。
ちょっと怖ろしい神だったのが、日本ではいつのまにか優しい福の神になりました。
それは、出雲大社の大国主神と習合したことが主な要因のようで、どちらも「だいこくさま」と呼ばれます。
このアレンジ力、よそから来た文物をなんでも日本風にアレンジしてしまう国民性を感じます。
大黒舞については、調べてみると
ーー室町時代から江戸時代にかけて行われた門付け芸の一。正月に大黒天の面をつけて赤い頭巾ずきんをかぶり、打ち出の小槌(こづち)を持って門口に立ち、新作した祝いの詞ことばを歌いながら舞う。民俗芸能として、山形県・鳥取県などに残存。《季 新年》ーー(デジタル大辞泉)
とのこと。
このお祝い芸にはえびす神やおかめ&ひょっとこが加わるのが恒例のようで、獅子舞と並んでおめでたい芸能とされます。
それぞれ出自がちがうものの、どれも由来を調べるとおもしろいですよ。
今回登場したひょっとこについては、古くから舞楽の道化役として登場します。
その由来は、竈(かまど)で火を吹く働きものの男性「火男」からきたという説が一般的。庶民の正月芸能でかまどの神「荒神さま」を祭るのは正月の庶民芸能での定番ですから、それと関連があるのかもしれません。
コミカルなひょっとこの舞で、子供達が大はしゃぎ
岩手の言い伝えではおじいさんが山へ芝刈りに行ったところ異世界で歓待され、そこから連れ帰った子が福をもたらした、その子がひょっとこの由来という話もあります(それを欲深い婆さんが殺してしまうのですが)。
大黒さまとひょっとこは、民俗学的にとても興味深い存在ですね。
それでは聴いてください。
LOVEBITES で「Dancing With The Devil」。
■あわせて読む(関連記事)
大黒天供養の秘法「浴餅」とは?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200225-2/
大黒天の背後にいるもの
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20161126-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ一門「小唄 in 神楽坂」
初めての人向けにわかりやすく、元芸者の舞踊も華やかに。
くつろぎ和のライブ。ネット配信でご覧いただけます。
https://www.sfm-shinjuku.jp/kouta2024/
リンクから「録画配信視聴」を開いてください
そのほか今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。毎年一番緊張するイベント「小唄 in 神楽坂」の配信も終えて、またもぐったりしている宮澤やすみです。
そんな中、秋は祭りの季節。今年はコロナの制限もなく神社の祭礼で縁日がにぎわいました。
私が住んでいる渋谷でも、ふだんどこにいるんだってくらいたくさんの子供たちが夜な夜な神社境内に集まってたのしそうにしています。
神楽殿では地元の方が音楽演奏(私も出たい。誰か呼んでください)。
そのあとは、大黒舞があるというので見てきました。
渋谷の鎮守・金王八幡宮にて。外国人も多くにぎわう境内
この連載を読んでいる方はご存知のとおり、大黒さま=大黒天はもともとインド由来の仏教の神でありながら、神社によく祀られる、神仏習合の代表みたいなお方です。
おめでたい伝統の大黒舞に、都会の子供達も熱狂
そんなわけで、ここ渋谷の金王八幡宮でも、大黒様が登場してくださいました。
相方には「ひょっとこ」も登場。笛と鳴物(太鼓)の神楽囃子にのせて、コミカルな舞で場をもりあげます。そのあとは大黒様が打ち出の小槌を構え、扇をくるくるまわしながら福を振りまきます。
動画があるのでごらんください。
【動画 約3分】コミカルな ひょっとこ舞の後、大黒様が福を振りまく
子供たちは、舞の最後に行われるお菓子のふるまいが目当て。
たくさんの駄菓子が詰められたダンボール箱を神職が運んできて、そこに手をいれるや舞台に集まった子供たちにぶん投げます。
うわーっと歓声とともにみんなが手をあげてお菓子をゲット。
大黒様の福が込められた特別なお菓子ですからね。大人も子供もいっしょになって必死に受け取ります。
ぼくは後ろのほうで見ていましたが、ちゃんとそっちまで投げてくれるんですよね。見事にお菓子をもらうことができました。
受け取った戦利品? 我が家も福のおすそわけ
さて、唄われた言葉をよく聴いてみると、米俵に乗って、打ち出の小槌をもつ、福の神としての大黒さまの姿を歌っていました。
この連載でも以前書きましたが、もともとはインドの創造と破壊の神・マハーカーラが原型とされる大黒天。
ちょっと怖ろしい神だったのが、日本ではいつのまにか優しい福の神になりました。
それは、出雲大社の大国主神と習合したことが主な要因のようで、どちらも「だいこくさま」と呼ばれます。
このアレンジ力、よそから来た文物をなんでも日本風にアレンジしてしまう国民性を感じます。
大黒舞については、調べてみると
ーー室町時代から江戸時代にかけて行われた門付け芸の一。正月に大黒天の面をつけて赤い頭巾ずきんをかぶり、打ち出の小槌(こづち)を持って門口に立ち、新作した祝いの詞ことばを歌いながら舞う。民俗芸能として、山形県・鳥取県などに残存。《季 新年》ーー(デジタル大辞泉)
とのこと。
このお祝い芸にはえびす神やおかめ&ひょっとこが加わるのが恒例のようで、獅子舞と並んでおめでたい芸能とされます。
それぞれ出自がちがうものの、どれも由来を調べるとおもしろいですよ。
今回登場したひょっとこについては、古くから舞楽の道化役として登場します。
その由来は、竈(かまど)で火を吹く働きものの男性「火男」からきたという説が一般的。庶民の正月芸能でかまどの神「荒神さま」を祭るのは正月の庶民芸能での定番ですから、それと関連があるのかもしれません。
コミカルなひょっとこの舞で、子供達が大はしゃぎ
岩手の言い伝えではおじいさんが山へ芝刈りに行ったところ異世界で歓待され、そこから連れ帰った子が福をもたらした、その子がひょっとこの由来という話もあります(それを欲深い婆さんが殺してしまうのですが)。
大黒さまとひょっとこは、民俗学的にとても興味深い存在ですね。
それでは聴いてください。
LOVEBITES で「Dancing With The Devil」。
■あわせて読む(関連記事)
大黒天供養の秘法「浴餅」とは?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200225-2/
大黒天の背後にいるもの
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20161126-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ一門「小唄 in 神楽坂」
初めての人向けにわかりやすく、元芸者の舞踊も華やかに。
くつろぎ和のライブ。ネット配信でご覧いただけます。
https://www.sfm-shinjuku.jp/kouta2024/
リンクから「録画配信視聴」を開いてください
そのほか今後の出演情報まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m