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- 第413回 二十三夜の月待講 その1 -江戸の名刹・妙法寺と月天-
第413回 二十三夜の月待講 その1 -江戸の名刹・妙法寺と月天-
”この妙法寺こそ浅草寺と並んで江戸の人気参詣スポットだったんですよね--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。音楽仲間のひとみさんがやってる「二十三夜銀座」というバンドのワンマンライブに行ってきました宮澤やすみです。
昭和歌謡とジャズとパンクロックが入り混じったような、令和型キャバレーバンド。女の生き様を歌うひとみさんがカッコよいのです。
この連載の読者だと「二十三夜」というワードにピンとくるかもしれませんね。これは月待信仰のひとつです。仏教的には菩薩や天部も関連しています(この記事後半で)。
バンド「二十三夜銀座」のライブ。歌っている蒼兎一美(あおとひとみ)さんが私の仲間で、私のバンドにも参加してくれています
昔の人は月を信仰の対象としてみていたもので、よく知られるのが庚申待ち(旧暦で庚申:こうしん の日の夜の月を拝む)行事。
それと似たものが「二十三夜待ち」で、月の満ち欠けでちょうど半円形になる二十三夜の晩に月の出を待つ行事です。
その日は二十三夜講というグループで集まって飲食を共にしたそう。神職や僧侶の儀式というより、庶民による町の寄合のような感じかと思います。
二十三夜の月の出は最も遅く、夜中の零時くらいなのだそう。だから仲間内でゆっくり夜を過ごせるわけです。
地域によっては、女性だけで集まったり、男性だけで集まったりして、夫や妻に言えないストレスを発散していたともいわれます。
平安時代に貴族の間で流行してから、江戸時代には庶民の行事として浸透しました。
東京・杉並区の妙法寺境内(写真提供:蒼兎一美)
先ほどのバンド「二十三夜銀座」のリーダー・蒼兎一美さんは、過去に二十三夜尊のお札で救われた体験があるそうで、そのご縁をもとに、バンド名に付けました。
よく通っているのが、東京・高円寺にある妙法寺境内の二十三夜堂とのこと。
妙法寺の二十三夜堂(写真提供:蒼兎一美)
妙法寺は東京・杉並区堀ノ内にある日蓮宗の寺院で、江戸時代のころから参詣人が絶えなかった名刹。
この地域は今でこそ、JR中央線が一直線に走ってその沿線が都市化していて、妙法寺はそこから南に離れています。
しかし、もともとはこの妙法寺こそ浅草寺と並んで江戸の人気参詣スポットだったんですよね。
妙法寺へ向かう参詣道が新宿ー中野坂上を経由して伸びていて料亭や茶屋で賑わっていたとのこと。
さらに妙法寺から南西の善福寺川沿いには大宮八幡宮や古墳時代の松ノ木遺跡があって、古代から中世の歴史が詰まっている重要なエリアなのです。
話が逸れましたが、なにしろ妙法寺に行きますと境内奥にあるのが二十三夜堂。
祀られている本尊は、二十三夜尊大月天王 という尊名で、密教十二天のうちの月天(がってん)にあたります。まさしく月の神ですね。
妙法寺の二十三夜尊大月天王の絵馬(写真提供:蒼兎一美)
十二天は、仏教(なかでも密教)の世界では仏法の守り神とされる方々のことで、そのメンバー構成は帝釈天、毘沙門天、閻魔などよく知られた方々もいます。そのなかに火天、水天、風天といった自然を司る神、さらに地天、日天、月天が加わって、自然を神格化した神々が列席しています。
二十三夜講では、なにしろ月が主役なのですが、その信仰の本尊とされるのはさまざまです。
神道的には月読命(ツクヨミ:月夜見命とも)、密教的には先ほどの月天。どちらも月つながりで分かりやすいですね。
国宝《月天像》平安時代後期 京都国立博物館蔵
ところが、江戸時代の二十三夜塔という石造物では、勢至菩薩がよく彫刻されているんですよね。
私も散歩の途中に寄った公園で、「廿三夜待」と彫られた石像を見かけました。その本尊は勢至菩薩でした。
そんな勢至菩薩については、スミマセン長くなったので次回!またお付き合い願います!
それでは聴いてください。
二十三夜銀座で「パブリックイメージ」。
(参考)
妙法寺 http://www.yakuyoke.or.jp/
二十三夜銀座 https://23yaginza.wixsite.com/music
■あわせて読む(関連記事)
庚申信仰は江戸のハロウィン?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170311-2/
下北沢で見つけた”地蔵のような”ナゾの庚申塔
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230912-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ 冬講座(全3回)
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて2025年2月から
【神と仏 1300年の愛憎関係】
-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63518/
2.
蒼兎一美(Ba,Vo)も参加!
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。音楽仲間のひとみさんがやってる「二十三夜銀座」というバンドのワンマンライブに行ってきました宮澤やすみです。
昭和歌謡とジャズとパンクロックが入り混じったような、令和型キャバレーバンド。女の生き様を歌うひとみさんがカッコよいのです。
この連載の読者だと「二十三夜」というワードにピンとくるかもしれませんね。これは月待信仰のひとつです。仏教的には菩薩や天部も関連しています(この記事後半で)。
バンド「二十三夜銀座」のライブ。歌っている蒼兎一美(あおとひとみ)さんが私の仲間で、私のバンドにも参加してくれています
昔の人は月を信仰の対象としてみていたもので、よく知られるのが庚申待ち(旧暦で庚申:こうしん の日の夜の月を拝む)行事。
それと似たものが「二十三夜待ち」で、月の満ち欠けでちょうど半円形になる二十三夜の晩に月の出を待つ行事です。
その日は二十三夜講というグループで集まって飲食を共にしたそう。神職や僧侶の儀式というより、庶民による町の寄合のような感じかと思います。
二十三夜の月の出は最も遅く、夜中の零時くらいなのだそう。だから仲間内でゆっくり夜を過ごせるわけです。
地域によっては、女性だけで集まったり、男性だけで集まったりして、夫や妻に言えないストレスを発散していたともいわれます。
平安時代に貴族の間で流行してから、江戸時代には庶民の行事として浸透しました。
東京・杉並区の妙法寺境内(写真提供:蒼兎一美)
先ほどのバンド「二十三夜銀座」のリーダー・蒼兎一美さんは、過去に二十三夜尊のお札で救われた体験があるそうで、そのご縁をもとに、バンド名に付けました。
よく通っているのが、東京・高円寺にある妙法寺境内の二十三夜堂とのこと。
妙法寺の二十三夜堂(写真提供:蒼兎一美)
妙法寺は東京・杉並区堀ノ内にある日蓮宗の寺院で、江戸時代のころから参詣人が絶えなかった名刹。
この地域は今でこそ、JR中央線が一直線に走ってその沿線が都市化していて、妙法寺はそこから南に離れています。
しかし、もともとはこの妙法寺こそ浅草寺と並んで江戸の人気参詣スポットだったんですよね。
妙法寺へ向かう参詣道が新宿ー中野坂上を経由して伸びていて料亭や茶屋で賑わっていたとのこと。
さらに妙法寺から南西の善福寺川沿いには大宮八幡宮や古墳時代の松ノ木遺跡があって、古代から中世の歴史が詰まっている重要なエリアなのです。
話が逸れましたが、なにしろ妙法寺に行きますと境内奥にあるのが二十三夜堂。
祀られている本尊は、二十三夜尊大月天王 という尊名で、密教十二天のうちの月天(がってん)にあたります。まさしく月の神ですね。
妙法寺の二十三夜尊大月天王の絵馬(写真提供:蒼兎一美)
十二天は、仏教(なかでも密教)の世界では仏法の守り神とされる方々のことで、そのメンバー構成は帝釈天、毘沙門天、閻魔などよく知られた方々もいます。そのなかに火天、水天、風天といった自然を司る神、さらに地天、日天、月天が加わって、自然を神格化した神々が列席しています。
二十三夜講では、なにしろ月が主役なのですが、その信仰の本尊とされるのはさまざまです。
神道的には月読命(ツクヨミ:月夜見命とも)、密教的には先ほどの月天。どちらも月つながりで分かりやすいですね。
国宝《月天像》平安時代後期 京都国立博物館蔵
ところが、江戸時代の二十三夜塔という石造物では、勢至菩薩がよく彫刻されているんですよね。
私も散歩の途中に寄った公園で、「廿三夜待」と彫られた石像を見かけました。その本尊は勢至菩薩でした。
そんな勢至菩薩については、スミマセン長くなったので次回!またお付き合い願います!
それでは聴いてください。
二十三夜銀座で「パブリックイメージ」。
(参考)
妙法寺 http://www.yakuyoke.or.jp/
二十三夜銀座 https://23yaginza.wixsite.com/music
■あわせて読む(関連記事)
庚申信仰は江戸のハロウィン?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170311-2/
下北沢で見つけた”地蔵のような”ナゾの庚申塔
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230912-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ 冬講座(全3回)
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて2025年2月から
【神と仏 1300年の愛憎関係】
-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63518/
2.
蒼兎一美(Ba,Vo)も参加!
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com