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第415回 高幡不動尊に伝わる 勝五郎&藤蔵生まれ変わり譚

”山での埋葬では穴に桶ごと落として--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。教会主催のコンサートに行ってみた宮澤やすみです。ちびっ子たちがクリスマスソングを一生懸命歌う場面で思わず涙が出ちゃうくらいには年を取りました。

そんな中、先日は東京・日野市の名刹、高幡不動尊に行ってきました。以前はテレビ番組のロケやトークイベント、さらに仏像バスツアーのガイドで何度となくお邪魔したお寺。10年前は忙しかった笑。なつかしく思い出しました。
そんな高幡不動尊の豪快不動三尊像の写真は記事末で。


高幡不動尊の仁王門と五重塔。慈覚大師・円仁創建という関東屈指の古刹

それだけ回数訪れたお寺なのに、知らなかったスポットがありました。
それがこの六地蔵…の隣にある「藤蔵・勝五郎生まれ変わりゆかりの地記念碑」というもの。境内奥の墓地入り口付近にあります。イベントでは墓地までお邪魔しませんからね。


境内奥にある六地蔵と勝五郎記念碑

「生まれ変わり」の不思議なお話は、どなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
とくに、小さな子供が、自分の前世は誰々で、非常に細かい記憶まで鮮明に語る話をよく聞きます。

こうした話題の発端といえるのが、この勝五郎のエピソードなのだそうです。

時は文政5年(1822)。この高幡不動尊に近い村(多摩郡中野村)に住む勝五郎少年(当時8歳)が、自分の前世を知っていると語り出しました。
その前世は、同じくこの地域の隣村(程久保村)にいた藤蔵(とうぞう)という男の子。藤蔵は疱瘡にかかり6歳で亡くなりました。
勝五郎は、藤蔵の生まれ変わりとしてこの世に生まれたというのです。


勝五郎や藤蔵が暮らした地域に流れる「程久保川」

勝五郎は、藤蔵としての記憶を詳細に語ります。
「我(前世の藤蔵)は六歳になりける時に死にたるが、後にこの家(勝五郎生家)の母の腹に入りて生まれたり」(平田篤胤『勝五郎再生記聞』岩波文庫より)

近隣の大人たちは最初は取り合わなかったものの、藤蔵の父である久兵衛に会いたいなど泣くので詳細を語らせます。その話をもとに隣村で藤蔵を亡くした久兵衛という人を訪ねてみたら本当にいて、両家の交流が実現しました。


境内墓地には藤蔵の墓があるが現在修復作業中(2024年現在)

この話を聞きつけたのが、国学者で神道家の平田篤胤。この勝五郎の話を詳細に記録し、「勝五郎再生記聞」という書物にまとめました。

それによると、勝五郎は藤蔵の生前のことだけでなく、死後の葬祭の様子や勝五郎として生まれる胎児の記憶まで語っていたのが驚きます。

「息の絶ゆる時は何の苦しみも無かりしが、其の後しばしが ほど苦しかりき」

このほか、葬儀では桶から身体がはみ出して、山での埋葬では穴に桶ごと落として「其の音のひびきたること、心にこたへて今もよく覚えたり」と語っています。

また、勝五郎として生まれる胎児の記憶も語り、
「(母の)腹内にて母の苦しからむと思ふ事のある時は、側(わき)のかたへよりて居たる事のありしは覚えたり」
つまり、母が調子悪い時は、ちょっとわきへ寄っていたということだそうです。

こうしたことが書かれた『勝五郎再生記聞』は、平田篤胤によって当時の天皇に奏上され、都でも話題になったそうです。
勝五郎自身は、この縁で平田篤胤の弟子として勉強した後、地元で静かに暮らし明治2年(1869)に亡くなりました。


墓参に訪れた人を導く六地蔵。2024年は12月でも紅葉が見られた

そして、その後明治30年、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンによってアメリカとイギリスに紹介されて、世界の「生まれ変わりストーリー」が研究される発端になったといわれます。

私が子供の頃なんかは、アメリカのリンカーン大統領とケネディ大統領の人生がシンクロしているとか、学研の本でふしぎばなしを読んで興奮したものですけどね。そういった発想につながっているんでしょうか。

まさしく「信じるか信じないかはあなた次第」ですけど、「世にも奇妙な物語」というのは、心惹かれるものがありますね。


高幡不動尊といえば、この巨大不動三尊像(重要文化財 平安時代)がすばらしい。※許可を得て撮影

ところで、この高幡不動尊はあちこちで紹介していたのですが、ここ「仏像ブツブツ」連載では触れていなかったようですね。
年明け以降こんどあらためて紹介したいと思います。


それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかえにきたよ」。



(参考)
勝五郎生まれ変わり物語│日野市郷土資料館
https://umarekawari.org/story/
高幡不動尊金剛寺
https://www.takahatafudoson.or.jp/



--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html

宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com