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第420回 仏像、刀剣、狩野派絵画、日本の美が集まる「大覚寺展」
”興味深いのは、展示の最初にいきなり仏像がくること--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ソロアルバムのリリース申請を終えた宮澤やすみです。うまくいけば2月22日公開になります。
そんな中、先日は東京国立博物館へ「大覚寺展」の取材をしてきました。

展示室での記者説明会に報道陣が集まる
仏像ファン目線で興味深いのは、展示の最初にいきなり仏像がくること。
大覚寺の歴史をひもとくと、平安時代初期、嵯峨天皇の離宮に、空海の勧めにより五大明王が安置されたのが始まり。のちの貞観18年(876)に正式に寺として開創されます。
唐から持ち帰った密教の秘伝と、それまで見たこともなかったおどろおどろしい姿の明王。都の貴族はこぞってこの新しい呪術世界に心酔していきます。当時都で一番のプロデューサーであった空海が、ここでもその才覚を発揮したんですね。

五大明王のリーダー・不動明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち不動明王 12世紀 明円作
当初の五大明王像は現存せず、現状で最古のものは平安末期、明円という仏師によるものです。その年代は安元2年(1176)~3年(1177)というから、まさしく運慶が奈良・円成寺で「運慶デビュー作」と言われる大日如来を完成させた頃と重なります。

手足に蛇が巻き付く軍荼利明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち軍荼利明王 安元3年(1177) 明円作
当時の都は、院派や円派の仏師が皇族関連の造像に重用されていて、学芸員さんの話だと後白河法皇の御所に仏所を構えていたとか。その後すぐ運慶をはじめとする慶派もここで仕事をするようになり、六波羅蜜寺の像などを手掛けるというのが今有力な説です。
展示では、これとは別に、巨大な五大明王がいきなり登場して来場者の度肝を抜きます。こちらは室町期の作で、2体は江戸時代の作。

像高2mを超える五大明王がずらり。重要文化財《五大明王像》院信作 室町時代 文亀元年(1501)、江戸時代 17-18世紀
やはり大きな仏像に目を見張るという体験は、いいものですね。取材は朝でしたが寝ぼけまなこがスカッと晴れました。

大きな大威徳明王の胎内にあった像内納入品。天照大神の垂迹とされる雨宝童子の図像も。重要文化財《一夢信孝関係資料》室町時代15-16世紀
そして展示は、刀剣マニアにはたまらない太刀、きらびやかな屏風絵と続き、最終章には皇族の居場所であった宸殿(しんでん)の壮大な襖絵が登場。

歴代門跡の御座所「御冠の間」を原寸再現。畳の香りがあたりに広がり、静謐で神聖な空間に少し緊張する
桃山期から江戸初期に活躍した狩野派の狩野山楽による《紅白梅図》は、梅の大木が大胆に枝を伸ばし、端々に鳥たちが遊びます。近くで見ると鳥たちの生き生きとした姿が楽しいし、離れて全体を眺めると、長大な襖に大胆に配されたレイアウトによって、リズミカルな展開を楽しめます。
師である狩野永徳の表現を引き継ぎつつ、より洗練された狩野山楽の最高傑作のひとつとされるそうです。

展示風景より 重要文化財《紅白梅図》狩野山楽作 江戸時代 17世紀
墨だけで描かれた《松鷹図》、かわいいウサギが飛び出してきそうな《野兎図》など、当時の皇族を楽しませた最高の絵を、われわれ庶民も楽しむことができて、ちょっとセレブな気持ちにもなれるんじゃないでしょうか。

最終展示室のメインは、華やかな《牡丹図》大覚寺伽藍の中心をなす宸殿でもっとも重要な間を飾る
そのスケールの大きさは仏像の迫力に引けを取らず、仏像ファン彫刻ファンも引き込まれると思います。
それでは聴いてください。
Underworldで「King Of Snake」。
開創1150年記念
特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」
2025年1月21日(火)~3月16日(日)
東京国立博物館 平成館
詳細:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/daikakuji2025/
■あわせて読む(関連記事)
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ 冬講座(全3回)
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて2025年2月から
【神と仏 1300年の愛憎関係】
-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63518/
2.
東京長浜観音堂フィナーレイベント
「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000015119.html
Facebook:
https://www.facebook.com/photo/?fbid=1017417643754835&set=a.477011294462142
X(旧Twitter):
https://x.com/nagahama_kannon/status/1870662612054417508
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ソロアルバムのリリース申請を終えた宮澤やすみです。うまくいけば2月22日公開になります。
そんな中、先日は東京国立博物館へ「大覚寺展」の取材をしてきました。

展示室での記者説明会に報道陣が集まる
仏像ファン目線で興味深いのは、展示の最初にいきなり仏像がくること。
大覚寺の歴史をひもとくと、平安時代初期、嵯峨天皇の離宮に、空海の勧めにより五大明王が安置されたのが始まり。のちの貞観18年(876)に正式に寺として開創されます。
唐から持ち帰った密教の秘伝と、それまで見たこともなかったおどろおどろしい姿の明王。都の貴族はこぞってこの新しい呪術世界に心酔していきます。当時都で一番のプロデューサーであった空海が、ここでもその才覚を発揮したんですね。

五大明王のリーダー・不動明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち不動明王 12世紀 明円作
当初の五大明王像は現存せず、現状で最古のものは平安末期、明円という仏師によるものです。その年代は安元2年(1176)~3年(1177)というから、まさしく運慶が奈良・円成寺で「運慶デビュー作」と言われる大日如来を完成させた頃と重なります。

手足に蛇が巻き付く軍荼利明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち軍荼利明王 安元3年(1177) 明円作
当時の都は、院派や円派の仏師が皇族関連の造像に重用されていて、学芸員さんの話だと後白河法皇の御所に仏所を構えていたとか。その後すぐ運慶をはじめとする慶派もここで仕事をするようになり、六波羅蜜寺の像などを手掛けるというのが今有力な説です。
展示では、これとは別に、巨大な五大明王がいきなり登場して来場者の度肝を抜きます。こちらは室町期の作で、2体は江戸時代の作。

像高2mを超える五大明王がずらり。重要文化財《五大明王像》院信作 室町時代 文亀元年(1501)、江戸時代 17-18世紀
やはり大きな仏像に目を見張るという体験は、いいものですね。取材は朝でしたが寝ぼけまなこがスカッと晴れました。

大きな大威徳明王の胎内にあった像内納入品。天照大神の垂迹とされる雨宝童子の図像も。重要文化財《一夢信孝関係資料》室町時代15-16世紀
そして展示は、刀剣マニアにはたまらない太刀、きらびやかな屏風絵と続き、最終章には皇族の居場所であった宸殿(しんでん)の壮大な襖絵が登場。

歴代門跡の御座所「御冠の間」を原寸再現。畳の香りがあたりに広がり、静謐で神聖な空間に少し緊張する
桃山期から江戸初期に活躍した狩野派の狩野山楽による《紅白梅図》は、梅の大木が大胆に枝を伸ばし、端々に鳥たちが遊びます。近くで見ると鳥たちの生き生きとした姿が楽しいし、離れて全体を眺めると、長大な襖に大胆に配されたレイアウトによって、リズミカルな展開を楽しめます。
師である狩野永徳の表現を引き継ぎつつ、より洗練された狩野山楽の最高傑作のひとつとされるそうです。

展示風景より 重要文化財《紅白梅図》狩野山楽作 江戸時代 17世紀
墨だけで描かれた《松鷹図》、かわいいウサギが飛び出してきそうな《野兎図》など、当時の皇族を楽しませた最高の絵を、われわれ庶民も楽しむことができて、ちょっとセレブな気持ちにもなれるんじゃないでしょうか。

最終展示室のメインは、華やかな《牡丹図》大覚寺伽藍の中心をなす宸殿でもっとも重要な間を飾る
そのスケールの大きさは仏像の迫力に引けを取らず、仏像ファン彫刻ファンも引き込まれると思います。
それでは聴いてください。
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開創1150年記念
特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」
2025年1月21日(火)~3月16日(日)
東京国立博物館 平成館
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早稲田大学エクステンションセンター中野校にて2025年2月から
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-神仏習合から廃仏へ-
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63518/
2.
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「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
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