- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 第421回 「大覚寺展」で五大明王をおさらい
第421回 「大覚寺展」で五大明王をおさらい
”強烈な見た目の五人衆、ひとりひとりのキャラクターは意外と知られていないようで--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。早稲田大学オープンカレッジでの講座、今期の1回目を終えた宮澤やすみです。90分しゃべり倒す仕事もかれこれ10年目に突入しました。
そんな中、先週につづき東京国立博物館「大覚寺展」の話題です。

像高2mを超える五大明王がずらり。重要文化財《五大明王像》院信作 室町時代 文亀元年(1501)、江戸時代 17-18世紀
先週のこの連載で五大明王の展示を紹介しました。
密教独自の尊像で、強烈な見た目の五人衆なのですが、ひとりひとりのキャラクターは意外と知られていないようで。
一度整理しておきましょう。
1.不動明王
五大明王のリーダーである不動明王。右手に剣、左手に羂索(投げ縄のようなロープ)を持ちます。煩悩を斬ったり、縄で衆生を救い上げるといいます。
髪型は短髪巻髪で左側にお下げを垂らす。そしてどっかりと坐してリーダーらしい威厳を発します。
各地に●●不動尊はよくあるので、一般庶民にもなじみ深い存在ですね。
ちなみに、他の寺では立った姿も見られますがこれは後の時代に山岳信仰の影響で動的なスタイルで表現されるようになったものです。

展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち不動明王 室町時代 元亀元年(1501) 院信作
2.降三世明王
ナンバーツー(なのかどうか知らないけど)、的な明王。足下に大自在天(シヴァ神)とその妃・烏摩を踏み付けます。ヒンドゥー教の最高神を降伏(ごうぶく)してしまうという密教の優位性を表現しているとか。
胸元に組んだ「降三世印」という印相(テーのポーズ)がかっこいいので、バンドでよくマネしたものでした。両手の小指をからめて結びます。

シヴァ神夫妻の踏まれっぷりが劇的な像。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち降三世明王 江戸時代 17-18世紀
3.軍荼利明王
怖ろしい姿ですが、ご利益としては病気平癒がいわれていて、後の時代には軍荼利明王単体でも拝まれたりするそう。
シンボルは蛇。よく見ると足首や手首に蛇が巻き付いています。蛇の力をもって身体を元気に、という意味合いがあるらしい。
胸元には手をクロスした印相を結びます。

手足に蛇が巻き付く軍荼利明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち軍荼利明王 安元3年(1177) 明円作
4.大威徳明王
水牛にまたがる姿で、いちばん見分けがつきやすい像ですね。
手は六本、足も六本あり、別名「六足尊」ともいわれます。顔も6あるんですよね。
戦勝の神として拝まれました。水牛の突進力と破壊力。ガンダム世代にはガンタンクのように思えます。
ちなみに、怨霊となった菅原道真は、この大威徳明王の化身(垂迹)とされて北野天満宮に祀られました。

水牛がリアル。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち大威徳明王 平安時代 12世紀 明円作
5.金剛夜叉明王
目が五つ(左右に二つずつ、額に一つ)あるので見分けがつきやすいのですが、今回の像のうち大きいほう(江戸時代作)は二つ目で、そのかわり手に金剛杵や金剛鈴を持つという点でわかると思います。
もともと人を食う夜叉であったのが、大日如来の力で改心して、悪者だけを食うようになったとか。結局食います。
大威徳明王と同じく、戦勝の神としても拝まれました。

展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち金剛夜叉明王 安元2年(1176) 明円作
もっと知りたい人は、拙著『仏像の光と闇』(水王舎)など、読んでみてくださいね。
それでは聴いてください。
オジー・オズボーンで「Bark at the Moon」。
開創1150年記念
特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」
2025年1月21日(火)~3月16日(日)
東京国立博物館 平成館
詳細:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/daikakuji2025/
■あわせて読む(関連記事)
仏像、刀剣、狩野派絵画、日本の美が集まる「大覚寺展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250128-2/
根津美術館で愛染明王のヒミツが分かった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20190827-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
東京長浜観音堂フィナーレイベント
「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000015119.html
2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。早稲田大学オープンカレッジでの講座、今期の1回目を終えた宮澤やすみです。90分しゃべり倒す仕事もかれこれ10年目に突入しました。
そんな中、先週につづき東京国立博物館「大覚寺展」の話題です。

像高2mを超える五大明王がずらり。重要文化財《五大明王像》院信作 室町時代 文亀元年(1501)、江戸時代 17-18世紀
先週のこの連載で五大明王の展示を紹介しました。
密教独自の尊像で、強烈な見た目の五人衆なのですが、ひとりひとりのキャラクターは意外と知られていないようで。
一度整理しておきましょう。
1.不動明王
五大明王のリーダーである不動明王。右手に剣、左手に羂索(投げ縄のようなロープ)を持ちます。煩悩を斬ったり、縄で衆生を救い上げるといいます。
髪型は短髪巻髪で左側にお下げを垂らす。そしてどっかりと坐してリーダーらしい威厳を発します。
各地に●●不動尊はよくあるので、一般庶民にもなじみ深い存在ですね。
ちなみに、他の寺では立った姿も見られますがこれは後の時代に山岳信仰の影響で動的なスタイルで表現されるようになったものです。

展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち不動明王 室町時代 元亀元年(1501) 院信作
2.降三世明王
ナンバーツー(なのかどうか知らないけど)、的な明王。足下に大自在天(シヴァ神)とその妃・烏摩を踏み付けます。ヒンドゥー教の最高神を降伏(ごうぶく)してしまうという密教の優位性を表現しているとか。
胸元に組んだ「降三世印」という印相(テーのポーズ)がかっこいいので、バンドでよくマネしたものでした。両手の小指をからめて結びます。

シヴァ神夫妻の踏まれっぷりが劇的な像。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち降三世明王 江戸時代 17-18世紀
3.軍荼利明王
怖ろしい姿ですが、ご利益としては病気平癒がいわれていて、後の時代には軍荼利明王単体でも拝まれたりするそう。
シンボルは蛇。よく見ると足首や手首に蛇が巻き付いています。蛇の力をもって身体を元気に、という意味合いがあるらしい。
胸元には手をクロスした印相を結びます。

手足に蛇が巻き付く軍荼利明王。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち軍荼利明王 安元3年(1177) 明円作
4.大威徳明王
水牛にまたがる姿で、いちばん見分けがつきやすい像ですね。
手は六本、足も六本あり、別名「六足尊」ともいわれます。顔も6あるんですよね。
戦勝の神として拝まれました。水牛の突進力と破壊力。ガンダム世代にはガンタンクのように思えます。
ちなみに、怨霊となった菅原道真は、この大威徳明王の化身(垂迹)とされて北野天満宮に祀られました。

水牛がリアル。展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち大威徳明王 平安時代 12世紀 明円作
5.金剛夜叉明王
目が五つ(左右に二つずつ、額に一つ)あるので見分けがつきやすいのですが、今回の像のうち大きいほう(江戸時代作)は二つ目で、そのかわり手に金剛杵や金剛鈴を持つという点でわかると思います。
もともと人を食う夜叉であったのが、大日如来の力で改心して、悪者だけを食うようになったとか。結局食います。
大威徳明王と同じく、戦勝の神としても拝まれました。

展示風景より 重要文化財《五大明王像》のうち金剛夜叉明王 安元2年(1176) 明円作
もっと知りたい人は、拙著『仏像の光と闇』(水王舎)など、読んでみてくださいね。
それでは聴いてください。
オジー・オズボーンで「Bark at the Moon」。
開創1150年記念
特別展「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」
2025年1月21日(火)~3月16日(日)
東京国立博物館 平成館
詳細:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/daikakuji2025/
■あわせて読む(関連記事)
仏像、刀剣、狩野派絵画、日本の美が集まる「大覚寺展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250128-2/
根津美術館で愛染明王のヒミツが分かった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20190827-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
東京長浜観音堂フィナーレイベント
「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000015119.html
2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com