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第422回 謎の神・両面宿儺 荒々しさの中に見える精緻の造形「円空展」
”樹木を削る行為自体が祈りの作業であったようで--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。吉原遊郭をイメージした小唄のアルバム、タイトルが「廓の夜」に決まった宮澤やすみです。問題なければ2025年2月22日に配信リリースされます。
そんな中、先日開幕した、
特別展「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」
を取材しに三井記念美術館へ行ってきました。
江戸時代の山林修行僧・円空は生涯で12万体の神仏像を彫ったといわれ、現存するものでも約5000体ほどといいます。
その作風は、鉈で木材を割り、粗く大胆な彫りでしかも破綻なく神仏の造形を造り上げます。

岐阜の神像仏像が日本橋に集結
なかでも、アニメ「呪術廻戦」に登場するキャラクターのモデルとなった《両面宿儺坐像》が注目されています。
『日本書紀』には鬼と書かれ、地元・飛騨地方では英雄とされる謎の神が、円空によって力強い姿で現代人も魅了します。

展示風景より。憤怒と慈悲の両面が見える《両面宿儺坐像》千光寺
今回の展示で僕が注目したのは、神像が多く展示されていたこと。
円空は山岳修行僧だったので、仏も神も、さきほどの両面宿儺といった土着神も分け隔てなく、像を刻みました。
これは自分の個人的な信仰というよりも、土地の人の求めに応じて、土地の信仰に応じた像を造ったんじゃないでしょうか。

展示風景より。《白山妙理大権現坐像》小川神明神社

展示風景より。動物の顔で表した神像も。これはキツネ顔の稲荷神《稲荷三神坐像(獣頭形)》錦山神社
また円空は、材となる木そのものに霊性を見出し、--「樹神」の姿を求めて彫刻しました--(三井記念美術館HPより)。
よく仏師の方がおっしゃるように、「木の中に神仏があって、それを彫り出していく作業」といったところなんでしょうか。
円空にとっては、樹木を削る行為自体が祈りの作業であったようで、削り跡をそのまま残すのもこうした意識があるからだそうです。

展示風景より。極端に大きい頭上の龍がみどころ《千手観音菩薩立像および龍頭観音菩薩立像》清峯寺
それを知って、全国の神社でみかける「削掛(けずりかけ)」という護符を思い出しました。木の棒を削ってフサフサの状態にして、神前に掛けたりします。あれも似たような考えで、樹木を削ったものに霊力が宿るという信仰によるものだそうです。
天満宮で見られる木彫りの「鷽(うそ)」なんかも削掛の一種ですね(参考 鷽かえ神事)。

展示風景より。同材で造られたといわれる二組の立像《護法神立像》千光寺、飯山寺
円空というと、鉈彫りの荒々しさがクローズアップされがちですが、よく見ていくと、荒々しい彫りなのに表情はとてもやさしく微笑んでいるのに驚きます。
ほかにも、思ったより精緻な彫り具合が随所に見られ、繊細な一面が見られる展示かと思います。

展示風景より。和歌の神の、リラックスした姿勢と柔和な表情が見事《柿本人麻呂坐像》東山神明神社
それでは聴いてください。
ローリング・ストーンズで「Sympathy For The Devil(1969ライブ)」。
特別展
「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」
2025/2/1(土)〜2025/3/30(日)
三井記念美術館
詳細:https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
■あわせて読む(関連記事)
円空仏か神像か?-ルートヴィヒ美術館展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220705-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
東京長浜観音堂フィナーレイベント
「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000015119.html
2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。吉原遊郭をイメージした小唄のアルバム、タイトルが「廓の夜」に決まった宮澤やすみです。問題なければ2025年2月22日に配信リリースされます。
そんな中、先日開幕した、
特別展「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」
を取材しに三井記念美術館へ行ってきました。
江戸時代の山林修行僧・円空は生涯で12万体の神仏像を彫ったといわれ、現存するものでも約5000体ほどといいます。
その作風は、鉈で木材を割り、粗く大胆な彫りでしかも破綻なく神仏の造形を造り上げます。

岐阜の神像仏像が日本橋に集結
なかでも、アニメ「呪術廻戦」に登場するキャラクターのモデルとなった《両面宿儺坐像》が注目されています。
『日本書紀』には鬼と書かれ、地元・飛騨地方では英雄とされる謎の神が、円空によって力強い姿で現代人も魅了します。

展示風景より。憤怒と慈悲の両面が見える《両面宿儺坐像》千光寺
今回の展示で僕が注目したのは、神像が多く展示されていたこと。
円空は山岳修行僧だったので、仏も神も、さきほどの両面宿儺といった土着神も分け隔てなく、像を刻みました。
これは自分の個人的な信仰というよりも、土地の人の求めに応じて、土地の信仰に応じた像を造ったんじゃないでしょうか。

展示風景より。《白山妙理大権現坐像》小川神明神社

展示風景より。動物の顔で表した神像も。これはキツネ顔の稲荷神《稲荷三神坐像(獣頭形)》錦山神社
また円空は、材となる木そのものに霊性を見出し、--「樹神」の姿を求めて彫刻しました--(三井記念美術館HPより)。
よく仏師の方がおっしゃるように、「木の中に神仏があって、それを彫り出していく作業」といったところなんでしょうか。
円空にとっては、樹木を削る行為自体が祈りの作業であったようで、削り跡をそのまま残すのもこうした意識があるからだそうです。

展示風景より。極端に大きい頭上の龍がみどころ《千手観音菩薩立像および龍頭観音菩薩立像》清峯寺
それを知って、全国の神社でみかける「削掛(けずりかけ)」という護符を思い出しました。木の棒を削ってフサフサの状態にして、神前に掛けたりします。あれも似たような考えで、樹木を削ったものに霊力が宿るという信仰によるものだそうです。
天満宮で見られる木彫りの「鷽(うそ)」なんかも削掛の一種ですね(参考 鷽かえ神事)。

展示風景より。同材で造られたといわれる二組の立像《護法神立像》千光寺、飯山寺
円空というと、鉈彫りの荒々しさがクローズアップされがちですが、よく見ていくと、荒々しい彫りなのに表情はとてもやさしく微笑んでいるのに驚きます。
ほかにも、思ったより精緻な彫り具合が随所に見られ、繊細な一面が見られる展示かと思います。

展示風景より。和歌の神の、リラックスした姿勢と柔和な表情が見事《柿本人麻呂坐像》東山神明神社
それでは聴いてください。
ローリング・ストーンズで「Sympathy For The Devil(1969ライブ)」。
特別展
「魂を込めた 円空仏 —飛騨・千光寺を中心にして—」
2025/2/1(土)〜2025/3/30(日)
三井記念美術館
詳細:https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
■あわせて読む(関連記事)
円空仏か神像か?-ルートヴィヒ美術館展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220705-2/
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本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
東京長浜観音堂フィナーレイベント
「びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~」
令和7年2月22日(土)13時00分~16時00分(開場12時30分)
東京国立博物館 平成館大講堂(東京都台東区上野公園13-9)
前半は山本勉先生の講演、後半は宮澤やすみ含む仏像仲間で座談会
入場無料、事前申込制
詳細、申込は↓
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000015119.html
2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com