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第424回 長浜ならではの”観音文化”を残すために「長浜 東京長浜観音堂フィナーレイベント」
”奈良京都とくらべて、どのへんが「長浜ワンアンドオンリー」なのか--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。吉原遊郭をイメージした小唄アルバム『廓の夜』。配信リリース後にガイドブックを出す予定です。音楽自体は誰でも聴けますんでね。
そんな中、先日は東京国立博物館の大講堂で、
「長浜 東京長浜観音堂フィナーレイベント」に出演参加させていただきました。
いつも取材する側としてこの大講堂で話を聞いていたのが、自分が登壇することになるとは。世の中わからないものです。

仏像ファンで満席の会場。宮澤の紹介もしていただきました
まず今回のコーディネーター役、長浜市の秀平文忠さんによる、長浜独自の「観音文化」の解説と地元の状況。
つぎに仏像界の御大・山本勉先生の講演会。仏像と50年向き合ってきたご自身の半生を振り返り、古い仏像の次世代への継承例を紹介、仏像ファンや研究者に向けて指針を示してくださいました。
そして最後の座談会にわたくしが参加。共演はいつもの仏像仲間たち。敬称略で、
田中ひろみ(イラストレーター)、みほとけ(芸人)、久保沙里菜(フリーアナウンサー)
いつも顔を合わせている仏友4人で登壇。じつにリラックスして話ができました。
久保沙里菜さんはこの連載にも何度も登場していますね。

仏友4人でざっくばらんに、かつ真摯に今後の長浜についてトーク
滋賀県の東北に位置する長浜市はいわゆる「湖北」地域を含んでおり、奈良、平安時代の貴重な仏像群が今に残る地域。
しかも、お寺は焼討されたのに仏像は村人の努力で守られてきたのです。
そこには、地域独特の自治独立の気風が影響しているようです。
中世から長浜の村は「惣村」と呼ばれる自治体制を敷いていました。
とくに琵琶湖畔の菅浦地域は自治の許可を取り付ける「菅浦文書」が残っていて、2018年に国宝に指定されました。
また、現在も集落ごとの祭礼儀式「オコナイ」が行われて、住人の絆を固くしています。今年になって女人禁制が解かれ、酒の提供をやめるなど時代に合わせて変化しているとのことです。

菅浦の境界に残る四足門。村の出入りを管理したという
こうして、民俗学的にも非常に興味深いものが残る長浜だからこそ、貴重な観音(国宝もある)が遺されてきたのかもしれません。
これを、世代を超えて後世に伝えるためにどうすればよいかを話し合うのが、今回のイベントの趣旨でした。
今でも地元に暮らす一般の方が「世話方」としてお堂の管理をなさっていますが、その後継者不足が課題だそうです。
日本国中、後継者問題は大きなものですが、長浜の場合はどうたらいいでしょう。
我々は外から応援するとして、地元でも若い世代(といっても40-50代)では観音文化に対する温度差があるかと思います。
そうした温度差をちぢめて、ホットなものにしてもらうためにも、我々外部の人間が、長浜の魅力や価値をアピールしていかなければなりません。
そのためには、ただ仏像きれいだねで終わらせず、奈良京都とくらべてどのへんが「長浜ワンアンドオンリー」なのか、仏像ファンのみなさんもちょっと注目してもらえるとうれしいです。

写真右の大木は、村の境界を護るとされる「野神さま」として崇敬される。仏像以外にも長浜独自の習俗や文化に注目してほしい
たとえば、国宝の十一面観音菩薩がある高月の向源寺は、境内に渡岸寺観音堂を建てて観音を安置しています。
ところが、向源寺は浄土真宗なので、本来なら阿弥陀如来以外の仏像を置くことはありえないんですよね。
本山の特別な許可を得て、特例として境内に天台密教のにおいがプンプンする(つまり他宗派の)観音を安置することができたそうです。

国宝・十一面観音菩薩を安置する向源寺。門前の大木が残っていたころ、2014の撮影
それは、歴史的にみて観音像のほうが平安時代前期、向源寺は室町時代元亀元年(1570年)の創建ということもありますが、
戦乱で天台密教の寺院が壊滅しても、そこにあった仏像だけは守られて、家は浄土真宗でも「ウチの観音さん」として家族のように扱う、その気風が醸成されたことが興味深いと思います。

惜しまれつつ閉館した東京長浜観音堂。月替わりで長浜の観音が公開されていた。2021年撮影
登壇中、みほとけさんが「世話方さんのキャラクター紹介」をしたらいいと言ってましたが、ほんとそうですね。観音はもちろんですが、その地域の人たちが愛おしいというところが、ほかでもない長浜らしさかと思います。

内覧会でもよく顔を合わせる仲間たちでお送りしました。左からみほとけ、久保沙里菜、田中ひろみ、宮澤やすみ
それでは聴いてください。
田中ひろみ、みほとけ、久保沙里菜も歌で参加している一曲、
ザ・ブッツで「いけるとこまで As You Can」。
■あわせて読む(関連記事)
「観音の里」長浜・湖北の魅力とは
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201013-2/
都心で湖北の観音に逢う「東京長浜観音堂」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20210713-2/
さようなら「観音ハウス」。”観音の里”の今後は
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201020-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
大河ドラマ「べらぼう」の世界
吉原遊郭の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集リリース
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyoru.html
※Youtube、Spotifyなどで誰でも聴けます
2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。吉原遊郭をイメージした小唄アルバム『廓の夜』。配信リリース後にガイドブックを出す予定です。音楽自体は誰でも聴けますんでね。
そんな中、先日は東京国立博物館の大講堂で、
「長浜 東京長浜観音堂フィナーレイベント」に出演参加させていただきました。
いつも取材する側としてこの大講堂で話を聞いていたのが、自分が登壇することになるとは。世の中わからないものです。

仏像ファンで満席の会場。宮澤の紹介もしていただきました
まず今回のコーディネーター役、長浜市の秀平文忠さんによる、長浜独自の「観音文化」の解説と地元の状況。
つぎに仏像界の御大・山本勉先生の講演会。仏像と50年向き合ってきたご自身の半生を振り返り、古い仏像の次世代への継承例を紹介、仏像ファンや研究者に向けて指針を示してくださいました。
そして最後の座談会にわたくしが参加。共演はいつもの仏像仲間たち。敬称略で、
田中ひろみ(イラストレーター)、みほとけ(芸人)、久保沙里菜(フリーアナウンサー)
いつも顔を合わせている仏友4人で登壇。じつにリラックスして話ができました。
久保沙里菜さんはこの連載にも何度も登場していますね。

仏友4人でざっくばらんに、かつ真摯に今後の長浜についてトーク
滋賀県の東北に位置する長浜市はいわゆる「湖北」地域を含んでおり、奈良、平安時代の貴重な仏像群が今に残る地域。
しかも、お寺は焼討されたのに仏像は村人の努力で守られてきたのです。
そこには、地域独特の自治独立の気風が影響しているようです。
中世から長浜の村は「惣村」と呼ばれる自治体制を敷いていました。
とくに琵琶湖畔の菅浦地域は自治の許可を取り付ける「菅浦文書」が残っていて、2018年に国宝に指定されました。
また、現在も集落ごとの祭礼儀式「オコナイ」が行われて、住人の絆を固くしています。今年になって女人禁制が解かれ、酒の提供をやめるなど時代に合わせて変化しているとのことです。

菅浦の境界に残る四足門。村の出入りを管理したという
こうして、民俗学的にも非常に興味深いものが残る長浜だからこそ、貴重な観音(国宝もある)が遺されてきたのかもしれません。
これを、世代を超えて後世に伝えるためにどうすればよいかを話し合うのが、今回のイベントの趣旨でした。
今でも地元に暮らす一般の方が「世話方」としてお堂の管理をなさっていますが、その後継者不足が課題だそうです。
日本国中、後継者問題は大きなものですが、長浜の場合はどうたらいいでしょう。
我々は外から応援するとして、地元でも若い世代(といっても40-50代)では観音文化に対する温度差があるかと思います。
そうした温度差をちぢめて、ホットなものにしてもらうためにも、我々外部の人間が、長浜の魅力や価値をアピールしていかなければなりません。
そのためには、ただ仏像きれいだねで終わらせず、奈良京都とくらべてどのへんが「長浜ワンアンドオンリー」なのか、仏像ファンのみなさんもちょっと注目してもらえるとうれしいです。

写真右の大木は、村の境界を護るとされる「野神さま」として崇敬される。仏像以外にも長浜独自の習俗や文化に注目してほしい
たとえば、国宝の十一面観音菩薩がある高月の向源寺は、境内に渡岸寺観音堂を建てて観音を安置しています。
ところが、向源寺は浄土真宗なので、本来なら阿弥陀如来以外の仏像を置くことはありえないんですよね。
本山の特別な許可を得て、特例として境内に天台密教のにおいがプンプンする(つまり他宗派の)観音を安置することができたそうです。

国宝・十一面観音菩薩を安置する向源寺。門前の大木が残っていたころ、2014の撮影
それは、歴史的にみて観音像のほうが平安時代前期、向源寺は室町時代元亀元年(1570年)の創建ということもありますが、
戦乱で天台密教の寺院が壊滅しても、そこにあった仏像だけは守られて、家は浄土真宗でも「ウチの観音さん」として家族のように扱う、その気風が醸成されたことが興味深いと思います。

惜しまれつつ閉館した東京長浜観音堂。月替わりで長浜の観音が公開されていた。2021年撮影
登壇中、みほとけさんが「世話方さんのキャラクター紹介」をしたらいいと言ってましたが、ほんとそうですね。観音はもちろんですが、その地域の人たちが愛おしいというところが、ほかでもない長浜らしさかと思います。

内覧会でもよく顔を合わせる仲間たちでお送りしました。左からみほとけ、久保沙里菜、田中ひろみ、宮澤やすみ
それでは聴いてください。
田中ひろみ、みほとけ、久保沙里菜も歌で参加している一曲、
ザ・ブッツで「いけるとこまで As You Can」。
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「観音の里」長浜・湖北の魅力とは
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201013-2/
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20210713-2/
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201020-2/
--おしらせ---
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1.
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吉原遊郭の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集リリース
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyoru.html
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2.
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「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com