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第425回 時代に寄り添い追究した”音楽的絵画”「ミロ展」

”作品一点だけではわからなかったミロの世界観が、展示を進むたびに見えて--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。吉原遊郭をイメージした小唄アルバム『廓の夜』。収録曲の解説を執筆している宮澤やすみです。そろそろ入稿にこぎつけたいと思います。

そんな中、東京都美術館で開幕した「ミロ展」のプレス内覧会に行ってきました。
写真は特別に許可を得て撮影したものです。

ジュアン・ミロは、スペインのカタルーニャで画家を志し、1920年代のパリでシュル・レアリスムの一派として名を馳せます。
その後も自身の絵の進化を止めず、時代をとらえた作品を書き続けた巨匠です。

その大規模回顧展は、作品を通してミロの人生をたどりながら、パリの熱狂、スペイン内戦、さらには日本文化の影響などを感じさせるものでした。


展示風景より。《オランダの室内 I》(ニューヨーク近代美術館)を始めとする、シュル・レアリスム時代の作品

ミロの作品と言うと、あの独特の記号と色彩の配置が、よくわからなくも美しく、デザインだか絵画だかわからない、そんなよくわからない(わからないが多すぎ)作品を想起しますが、こうして時代ごとに並べてみると、ミロの心情が伝わるようです。

1920年代は、当時最先端のシュル・レアリスムに感服し、そして自分の中に貪欲に取り込んでいく。
その後、内戦下のスペインに隠棲すると、暗いタッチから次第に画家の視線は自然や星空のピュアなものに移行。
戦後は、もうなんでもやっちゃう破天荒な巨匠らしさを発揮。


展示風景より。《女と鳥》(写真右)ほかカラフルなブロンズ彫刻作品

仏像ファン目線としては、ミロの彫刻作品も面白いと思います。
そのへんの廃材のフォルムを忠実に鋳造して、組み合わせてできる不思議なオブジェ。ちょっと岡本太郎と通じるような、いたずらっぽい作品が楽しいです。


展示風景より。《女の胴体》(写真右)ほか。これもブロンズ製

さらに、ミロは「反絵画」をテーマとしていたそうで、キャンバスと油彩という従来の素材を無視して、建材の板や紙に描いたり、別の素材を貼り付けるなど自由な制作をします。


展示風景より。アルミ箔に描いて紙を貼り付けたりした「反絵画」の例《無題(夜の恋人たち)》国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード

ミロのこうした制作は、具象的な絵画を超越して、音楽的な表現を試みたのだそうです。
公式サイトにある一連の「星座」シリーズや《白地の歌》(写真うまく撮れませんでした)などは、とくにその例にあたるでしょうか。


星座シリーズのうち《明けの明星》はクリアファイルになっている

抽象的なモチーフのリズミカルな配置と色彩のハーモニー、それは確かに抽象的な音楽のよう。そこに詩も書かれることがあり、こうなるとミロはもはやシンガーソングライターの仲間入りをしてもいいかもしれません(言い過ぎか)。

あの記号や色彩の配置は、いわゆる「音楽的な絵画」の一種。
自分のことでおこがましいのですが、私もかつて書を音楽表現の一環として、色彩を織り交ぜて作品制作をしていた時期がありまして、非常に共感するところがありました。


恐縮ながらこの場をお借りして、私の過去作品「St. Coltrane "Sheets of Sound"」ジャズ奏者ジョン・コルトレーンの音楽をイメージしたもの

音楽は、その場でライブ演奏して何も残しません。ミロもその感覚を実践したかったんでしょうか。描いた絵画をその場で燃やしてしまいました。
ところが、その残った燃えかすが新しい作品としていい具合に感覚を刺激したのか。これも大事な作品として今回も展示されています。


展示風景より。描いた後キャンバスにガソリンを掛けて燃やした作品《焼かれたカンバス 2》(ジュアン・ミロ財団)。穴が開いて立体作品と化した

作品一点だけではわからなかったミロの世界観が、展示を進むたびに見えてくる。ミロの生涯を通した画業をみる最大規模の回顧展です。

それでは聴いてください。
メタリカで「Fight Fire With Fire(LIVE)」。



ミロ展 Joan Miró
2025年3月1日(土)〜7月6日(日)
東京都美術館 企画展示室
詳細 https://miro2025.exhibit.jp/

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書を聴く、歌を観る「石川九楊大全 状況編」
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※いずれもアートと音楽の関連について


--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
大河ドラマ「べらぼう」の世界
吉原遊郭の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集リリース
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyoru.html
※Youtube、Spotifyなどで誰でも聴けます


2.
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細:(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608183


宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html

宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com