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第429回 「使い込まれた仏像」円空の観音像と長浜の観音像
”鑑賞のための美術品とはちがい、それなりの「用途」があったわけで、そこが仏像の－－”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。4月の単独ライブが早くも満席になっている宮澤やすみです。会場となる古民家カフェの方が追加席を検討くださっています。
そんな中、東京・三井記念美術館で開催された「円空仏」展終了しました。
「円空展」チラシ。今回は仏像初心者の方に感想を聞きました
そんなに仏像にくわしくない、知り合いの言葉を聞いてみると、
顔がどれも似ているので「同じやつさっきも見なかった？」ということもあったとか（笑）
円空の彫る顔はだいたいパターンが決まっているから、”円空あるある”かと思います。
ただし、全体のフォルムはどれも個性的。とくに大きな四体の護法神像には見入ってしまったとか。
展示風景より。同材で造られたといわれる二組の立像《護法神立像》千光寺、飯山寺
あの像のインパクトは初心者も一発で引き込む魅力があるようです。それは、大きさだけでなく、荒々しい彫り具合による異形の姿に、
木から得体の知れない何かが現れ出るような様相（霊木化現、霊木顕現という）を感じたんじゃないでしょうか。
ほかの人にも聞いてみると、ずらりと並んだ観音三十三身がおもしろかったとのこと。
「三十三体観音を家に持って帰るというエピソードがいい」
近隣住人が病気になると、家に持って帰って平癒を祈ったそう。つまり、触れてはいけない御神体とちがって、庶民のくらしに密着していたのです。
展示風景より。31体が残る《三十三観音立像》岐阜県高山市 千光寺
「2体だけ戻ってないというところがストーリーを想像させる。そのまま亡くなったのか、忘れて引っ越してしまったのか」
仏像は本来、鑑賞のための美術品とはちがい、それなりの「用途」があったわけで、そこが仏像のおもしろさでもありますね。
この感想を聞いて、私は滋賀・長浜の観音像を思い出しました。
あの地域の観音像も、集落持ち回りで家で預かり、病気になった家に持って行って平癒を祈ったということです。
通称「いも観音」と呼ばれる仏像。滋賀県長浜市 安念寺
長浜の安念寺には「いも観音」と称されるボロボロになった仏像がいくつも安置されていますが、これこそ「使い込まれた」仏像。
これがまた、現代の私たちがみるとすごく美しさを感じてしまいます。
茶道具のような制作最初から「わびさび」を演出して造ったものとはちがい、長い年月に住人のくらしに実際に活用された（時には子供が乱暴に扱ったりもした）その結果の、気持ちのこもった朽ちた美を感じます。
今では、仏像は「触っちゃいけないもの」であるのが常識ですが、仏像の在り方を考えるよい機会になりました。
それでは聴いてください。
M.C. ハマーで「U Can't Touch This」。
■あわせて読む（関連記事）
謎の神・両面宿儺 荒々しさの中に見える精緻の造形「円空展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250212-2/
長浜ならではの”観音文化”を残すために
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250225-2/
「観音の里」長浜・湖北の魅力とは
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201013-2/
桜と観音。映像で旅する湖北「長浜春秋」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200407-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
【古民家カフェで、飲食付き三味線ライブ】
吉原遊郭を歌う、大河ドラマ「べらぼう」の世界
粋な江戸三味線「小唄」をゆるりと楽しんで
2025年4月12日（土）そよや江戸端 にて
詳細は↓
https://yasumimiyazawa.com/live.html
２．
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集リリース
『廓の夜』 宮澤やすみ（唄、三味線）
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyoru.html
※Youtube、Spotifyなどで誰でも聴けます
３．
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細：（映画ナタリー）
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報（これからとこれまで）まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト：https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。4月の単独ライブが早くも満席になっている宮澤やすみです。会場となる古民家カフェの方が追加席を検討くださっています。
そんな中、東京・三井記念美術館で開催された「円空仏」展終了しました。
「円空展」チラシ。今回は仏像初心者の方に感想を聞きました
そんなに仏像にくわしくない、知り合いの言葉を聞いてみると、
顔がどれも似ているので「同じやつさっきも見なかった？」ということもあったとか（笑）
円空の彫る顔はだいたいパターンが決まっているから、”円空あるある”かと思います。
ただし、全体のフォルムはどれも個性的。とくに大きな四体の護法神像には見入ってしまったとか。
展示風景より。同材で造られたといわれる二組の立像《護法神立像》千光寺、飯山寺
あの像のインパクトは初心者も一発で引き込む魅力があるようです。それは、大きさだけでなく、荒々しい彫り具合による異形の姿に、
木から得体の知れない何かが現れ出るような様相（霊木化現、霊木顕現という）を感じたんじゃないでしょうか。
ほかの人にも聞いてみると、ずらりと並んだ観音三十三身がおもしろかったとのこと。
「三十三体観音を家に持って帰るというエピソードがいい」
近隣住人が病気になると、家に持って帰って平癒を祈ったそう。つまり、触れてはいけない御神体とちがって、庶民のくらしに密着していたのです。
展示風景より。31体が残る《三十三観音立像》岐阜県高山市 千光寺
「2体だけ戻ってないというところがストーリーを想像させる。そのまま亡くなったのか、忘れて引っ越してしまったのか」
仏像は本来、鑑賞のための美術品とはちがい、それなりの「用途」があったわけで、そこが仏像のおもしろさでもありますね。
この感想を聞いて、私は滋賀・長浜の観音像を思い出しました。
あの地域の観音像も、集落持ち回りで家で預かり、病気になった家に持って行って平癒を祈ったということです。
通称「いも観音」と呼ばれる仏像。滋賀県長浜市 安念寺
長浜の安念寺には「いも観音」と称されるボロボロになった仏像がいくつも安置されていますが、これこそ「使い込まれた」仏像。
これがまた、現代の私たちがみるとすごく美しさを感じてしまいます。
茶道具のような制作最初から「わびさび」を演出して造ったものとはちがい、長い年月に住人のくらしに実際に活用された（時には子供が乱暴に扱ったりもした）その結果の、気持ちのこもった朽ちた美を感じます。
今では、仏像は「触っちゃいけないもの」であるのが常識ですが、仏像の在り方を考えるよい機会になりました。
それでは聴いてください。
M.C. ハマーで「U Can't Touch This」。
■あわせて読む（関連記事）
謎の神・両面宿儺 荒々しさの中に見える精緻の造形「円空展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250212-2/
長浜ならではの”観音文化”を残すために
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250225-2/
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201013-2/
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--おしらせ---
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１．
【古民家カフェで、飲食付き三味線ライブ】
吉原遊郭を歌う、大河ドラマ「べらぼう」の世界
粋な江戸三味線「小唄」をゆるりと楽しんで
2025年4月12日（土）そよや江戸端 にて
詳細は↓
https://yasumimiyazawa.com/live.html
２．
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集リリース
『廓の夜』 宮澤やすみ（唄、三味線）
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyoru.html
※Youtube、Spotifyなどで誰でも聴けます
３．
無声映画鑑賞会800回記念特別公演
「百花繚乱 大活動写真大会」
宮澤やすみは三味線演奏で出演。
詳細：（映画ナタリー）
https://natalie.mu/eiga/news/608183
宮澤やすみ出演情報（これからとこれまで）まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト：https://yasumimiyazawa.com
